異世界転生はもう飽きた。100回転生した結果、レベル10兆になった俺が神を殺す話

閃幽零

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神を欺く罪

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(まさか、ラムドに、これほど大きな裁量権が与えられる事になるとは……)

 そこで、UV1は、冷や汗を流しながら、

(この男は……ラムドそのものではないというのに……)

 だが、言う機会を逃してしまった。
 一度、チャンスを失うと、なかなか言い出せないもの。

 それに、何と言えばいいのか分からない。
 そもそも、UV1は、ゴートという存在について、いまいち理解できていない。

 UV1は、召喚に詳しくない。
 だから、何が起きたのか、実際のところ、分かっていないのだ。

 どうやら、ラムドの意思も残ってはいるらしい。
 ただの別人ではない。
 そこが厄介なのだ。

 ゆえに、

「それでは、私は行く」

「あ、あの猊下」

「ん? どうした、UV1」

「あの、実はですね……ラムドの事なのですが、」

「ラムドがどうした?」

「実は、あの者は、ラムドが召喚した者と、ラムドが重なったものでして」

「? ……よくわからないのだが?」

 バロールは、戦士タイプ。
 召喚に関する知識はUV1と変わらない。
 ゆえに、そもそも『自身がイマイチ理解しきれていないUV1の説明』を理解する事など出来るはずがなく――

「その、私もよくは理解していないのですが、実際、やつは、ラムドそのものではないと言いますか」

 そこで、バロールは、ラムドに視線を向けて、

「どういう意味だ?」

 聞かれて、ゴートは、高速で計算した。
 求める、最良の答え。
 完全解には届かずとも、切り抜けるくらいはできる。
 無駄な間は置かず、最速で辿り着いた最良を並べようと、
 冷静に、たんたんと、

「さきほど、少々、召喚に失敗しましてね」

 極限まで嘘を削り取る。
 その上で、どこまで『隠すか』を計算しつつ、

「私の魂魄が半分ほど吹っ飛んでしまいまして」

「……なに?!」

「ご安心を。どうにか、記憶とコアオーラは、こうして現世にとどめました」

 嘘はつかない。
 しかし、不利益を産みうる情報を漏らしはしない。
 ここは重要なポイント。
 しょっぱなは、『ゴート自身が現状の理解を得るため』、UV1に、『つい情報を開示してしまった』。


(今にしてみれば、あれは完全に失態。人格もろもろ含めて、完全なラムドのふりをすべきだった……まあ、今言っても仕方がないが)

 あの時のままならそれほど問題ではなかったが、状況が変化した現在、上に、今のゴートが『ラムドではない』と判断されるのはまずい。

 ゼノリカの権限は、ラムド・セノワールに与えられた。
 ゴート・ラムド・セノワールに与えられた訳ではない。

 これは枷だが、しかし、体ていのいい隠れ蓑にもなりうる。

 別人ではダメ。
 しかし、今更ラムドの演技はできない。
 記憶があるので、ラムドの人格をまねる事はできる。
 しかし、それをすると、UV1が怪しむ。
 権限を与えられた瞬間、ラムドのフリをしだした怪しいヤツになってしまう。

 UV1は、神に最も近い候補者。
 彼女から怪しまれるのは悪手。

 すなわち、現在のゴートは、UV1とバロールの両方に、ちょうどいい言い訳をしなければいけない。

 このミッション。
 ガだったころは不可能。
 だが、今の自分にならできる。
 『ゴート』――『38歳のセンエース』は思う。
 だてに地獄(第一アルファでの社会人としての人生経験)は見てねぇぜ。

「さきほど、UV1様がおっしゃったように、召喚した者の器を利用しましてね。その結果として進化しまして」

「器を利用し、進化……?」

「憑依が、最も理解しやすい概念かもしれませんね。融合と呼べるほどの変化は感じておりません。存在値の減少、肉体の変化……それに伴う精神的な若返り……他にも、いくつか多少の変化は見られますが、全て説明した方がよろしいですか?」

「多少の変化に興味はない」

 バロールは、1~2秒だけ、何かを考えたようだが、

「……よく分からないが、お前はラムドなのだろう?」

 そう言った。
 バロールはバカではないが賢くはない。
 それに、疑ってかかる場面ではないという判断が、頭の回転を鈍らせた。

 バロールからすれば、ラムドなど、所詮は、存在値100以下のゴミでしかない。
 『必要な道具』なので、監督者として、動向に注意を払う必要があるが、存在に対して警戒する必要はない。

「記憶とコアはそのままですので、そうだと言って差し支えはないかと。少々異物も混ざっておりますが、ご覧の通り、能力にさほど変化はございません。多少レベルが下がりましたが、召喚に関する知識に変化はございません」

「もとの記憶があり、コアが同じで、能力もさほど変化なし……肉体と精神年齢が多少変化したぐらいならば、お前は間違いなくラムドだろう」

「私はそう思っておりますが、UV1様は、少し引っかかっておられるようですね。何に引っかかっておられるのか知りませんが」

「……UV1、私は忙しいのだが、まだ何か言いたい事はあるか?」
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