異世界転生はもう飽きた。100回転生した結果、レベル10兆になった俺が神を殺す話

閃幽零

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理想郷

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『――いやぁ、センくん、ようこそ。まあ、まあ、座って、座って。ほら、鍵。手錠なんか、外して、外して。え? 拘束するように命じたのはお前だろうって? そんな細かいところは気にせずに、まずは飲もう。じゃーん、君と飲もうと思って用意させたシャンパン。グー・ド・ディアモン。御値段、なんと2億5千万円。頭おかしいよね、はは』

『……』

『いやぁ、なんていうか、本当に運命ってヤツの存在をバシバシ感じるよ。中学の時、唯一、俺にさからった君が、今も、こうして、真正面から、この俺に逆らっている。なんだか感慨深いじゃないか。まあ、全部無駄に終わったワケだけれど』

『……』

『でも、まあ、当たり前だよね。俺は不死身で、人の心を操る事ができる。実際、無敵さ』

『……』

『俺は完全なる王になった。ただのヤクザじゃない。有言実行。俺は、ちゃんと宇宙一のヤクザになった。世界の暴君。誰も逆らえない闇の帝王』

『……』

『どんな気分だった、センくん。外堀をどんどん固められて、政府も、企業も、警察も、世論も、みんながどんどん、君の敵になっていく恐怖は』

『……』

『ついには、君が唯一信頼していた俺対策チームまで君を見放した。最も信頼していた連中に売られた今、君は、どんな気分なんだい?』

『……』

『なにかこたえてよ、センくん。つまんないじゃん』

『蝉原』

『ん? なになに?』

『お前は、どんな気分だったんだ?』

『はい?』

『俺にはどうしても理解ができない。どうして、お前は、平然と、あんなマネができた……どうして……』

『あんなマネ? どれのことを言っているのかな? 大統領を操って、ロシアに核を落とさせたことかな? それとも、日本の総理にサミットで自爆テロさせたこと? それとも、世界中から集めたテロリストを紅白にチーム分けして中国とインドに投入して、どっちのチームがより多くの人間を殺せるか競争させたこと? それとも――』

『全部だ』

『なーんだ、ぜんぶかー。あははー』

『……』

『んー、どんな気分かって言われてもなー、ちょっとやってみたって感じでしかないからねぇ。だから、あえていうなら、ユーチューバー気分かな。タイトルをつけるなら、あえて世界を壊してみた(笑)的な。あはは』

『……無駄だと思うが言う。もう、やめろ。その力を世界のために使え。そうすれば、お前は神になれる』

『なりたくないよ、退屈な神様なんて』

『蝉原……っ』

『これからも、俺は、この世界で遊ぶ。俺を選んでくれた【バグ】と共に、俺は、永遠に、この世界を穢けがす狂気の具現であり続ける』

『……』

『たぶん、これは、運命だったんだよ、センくん。俺と君の繋がりも、何もかも、すべて。世界は、俺という混沌のために存在した。だから、俺は、これからもずっと、運命が命じるままに、他の奴には出来ない事を平然とやってのけていく。どうだい。痺れるだろう。憧れるだろう』

『――蝉原。その力があれば、完璧な秩序の統合や人類の倫理的な完成すらも可能だった。お前はバカじゃない。他人の痛みが分かる賢い人間だ。【バグ】の力が使える今のお前なら、誰もが理想とする本当の完全世界だって創れた。完全なる王になれた。誰もが崇め奉る、究極を超えた真の神にだってなれた! なのに! ……どうして……なんで、わざわざ無益な混沌を撒き散らす? その行為に、いったい、なんの意味があるというんだ』

『俺にとっては、現状が完璧な世界さ。この世の誰もが、この蝉原勇吾に恐怖している。蝉原勇吾という無秩序な恐怖に染まったこの世界こそが俺の理想。ヤクザの一等賞で終わるはずだったこの俺が、今や、恐怖の大王そのもの。いやぁ、ノストラさん、すごいよね。俺の登場を予想していたなんて。まあ、時期はちょっとずれているけど』

『……』

『今の俺なら、この世界を滅ぼす事だって容易い。すごくない? すごいよね。最高だ。現状こそが、これ以上ない理想郷だ』



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