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狂気のエレガ・プラネタ
しおりを挟む(……エレガ・プラネタ……天帝……)
ゴートは黙ってソルの話に耳を傾ける。
どんどん情報が増えていくので、処理するので精いっぱいになっている。
『エレガによって創られたフッキ・ゴーレムの役目は地上の浄化です。エレガの望まぬ進化を遂げた生命をリセットする装置。これまでに、フッキはエレガの命で、77回、地上の命をゼロに還しました』
ソルの言葉に、ゴートは絶句した。
(……アレは、すでに、地上で暴れた過去があったってのか……それも1回や2回じゃなく、77回も……)
クラっとした。
理解が追いつかない。
(いや……いや、77回て……そりゃ、あれだけの力あれば、世界くらい、いくらでも壊せるだろう、けど……とはいえ、なんだ、そのふざけた数字……ナメてんのか……)
あまりにも現実味がない話。
だが、しかし、『嘘だ』とは思わなかった。
嘘くさ過ぎて逆に――というワケでもなく、ただ純粋に、論理性はまったく無いのだけれど、感覚的に『ホントなんだろう』と思ってしまった。
『そして、今、世界は、エレガの望まぬ進化の道を進んでいます。【何がどう】という理屈云々ではなく、【ただなんとなく気に入らない】と、エレガは、ファッション感覚で、この世界に不満を感じています。このままでは、78回目の浄化が起きてしまいます』
『……ぃや、ちょ、ちょっと待て……流石に話の進むテンポがはやすぎて、理解がおいつかない……少しだけ整理させてくれ』
そこで、ゴートは、与えられた情報を先から並べていき、
『えっと……簡潔に言えば、ようするに、この世界は、過去に何度も、クソな神様のワガママのせいで終わっていて……で、まさに今も、現在進行形で、性格の悪い神様のワガママで終わりかけているってこと……でいいのか?』
まるで、スマホゲーでリセマラでもするように、
『あたしがほしいのはコレじゃなーい』と、
しごく簡単に世界を終わらせる神『エレガ・プラネタ』。
そのリセットボタンが、フッキ・ゴーレム。
現在のリセマラ回数は77回。
そして、78回目のリセットは目前。
――ソルの話をまとめればこうなる。
ゴートが理解したのを確認してから、ソルは続ける。
『そのとおりです。エレガ・プラネタは、命に対する責任など一切感じていない手前勝手なサイコパス。気に入らないものは、サクっと焼却して、新しいおもちゃを用意するだけの性根が腐ったワガママお嬢様』
『……最悪極まる……』
『ゴート様。どうか、エレガを……フッキ・ゴーレムを止めてください。それが出来るのは、この世であなたしかいない』
『……この世で俺しかいない、とは、随分と大胆な事を言い切るじゃねぇか。その期待・信頼は嬉しい限りだが、俺には…………いや、その前に一つ聞きたい。なんで、俺だ? そもそも、どうして、そんな話を俺に持ちかける?』
『その理由は、ご自身が一番理解できているはずです』
(……)
『あなたの力は、ケタが違う。あなたは、この世で最も強大な力を持った最後の砦』
『……まあ、流石に、今の自分の事を弱いとは思っちゃいない。俺は強いさ。なんせ平均レベルが10とか20の世界で、レベル【5290000】を誇っているんだから。ああ、強い。間違いなく強い。色々と図に乗ってしまった事を、今では深く反省はしているが、しかし、だからって事実が消えるわけじゃない。今の俺なら、フ○ーザ様だってワンパンだろうぜ』
一瞬だけ、その事(自分のレベル等)をソルに隠しておくべきかとも思ったが、
ソルに対して色々と配慮するのは『無意味なんじゃないか』と思いだし、
結果、なんだかバカらしくなって、
だから、素直に、あけっぴろげになって、
『だが、この世で最も巨大な力を持っているって訳じゃない。事実、俺は、あのフッキ・ゴーレムにデコピンでやられている。フリーザ様には勝ててもビ○スには勝てない。その程度。俺は本物の英雄じゃない。ただのハンパなエラーでしかない』
聞いてくれる相手がいるせいか、非生産的な愚痴がこぼれる。
固めたはずの決意が揺らいで、足下がおぼつかなくなる。
だから、結果、ゴートは、愚かにも、
顔すら知らない相手に、己の弱さをぶちまける。
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