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関数のような悪意
しおりを挟む『フッキ・ゴーレムを創れるようなやつが、俺よりも下? ありえねぇだろ。そんな話は筋が通らない』
『想像しやすいように言えば、エレガは、フッキに力を奪われています。実際は、自ら魂魄を注いでいるだけで、フッキに搾取されているわけではありませんが、【奪われている】という表現の方が理解・想像がしやすいでしょう?』
(……召喚獣にどっぷりと依存するタイプの召喚士みたいなものか)
『エレガは、あなたほどの力を持つ存在が現れるなどとは思っていませんでした。だから、安心して、フッキに力を注ぎこんだのです。【これぐらいあれば充分だろう】という力だけを残して、ほとんどの力をフッキに注ぎ込みました』
ソルの言葉は、すべて、『真実』として、ゴートの中に浸透していく。
ゴートの中の真実が、大きく歪んで、しかしそのまま固まっていく。
(……力のほとんどを他のものに注ぎ込んでいながら、しかし、今の俺ぐらいしか相手にならない――世界最高峰の力を持つ神、か……やべぇヤツだな、エレガ・プラネタ。もしかして、そいつ、MAX存在値で100億とかいってんじゃね?)
『エレガが力を注いだ結果、フッキはとんでもないゴーレムになりました。しかし、同時にそれが、エレガの命取りになるというワケです。おかげで、可能性が残りました。先見の明がなかったとエレガを非難する事はできません。あなたの力はそれほど異常なのです』
(……ふむ、それなら、まあ、筋が通っていなくもない……実際、常識に照らし合わせた際における俺の力はぶっ飛んでいる)
『お願いです。ゴート・ラムド・セノワール様。この世界を守ってください。身勝手で不条理なエレガを殺し、本物の英雄に、理想の神に――センエースになってください』
『……まあ、それは俺の目標でもある訳だが……』
『どうか、どうか、お願いします!』
(……)
ソルの話を聞いたゴートは、数秒だけ考えてから、
『ちなみに、そのエレガってのは、どこにいるんだ?』
『天国に』
『おいおい、まさか、死んで会ってこいってか?』
『失礼。天国と呼ばれる国にいます。国というより、エレガの自宅と表現した方が理解しやすいでしょうか。エレガが、天国から外に出てくることはありません。そして、天国は、エレガの許可がなければ足を踏み入れる事ができません』
『……天国って名前の【セキュリティが徹底している家】があって、エレガは、そこの自宅警備員と……ふむ。しかし、ラムドの……俺の記憶には、そんな名前の場所はない。……ゼノリカみたいに、表ではなく裏側にあるってことか?』
『はい。というより、ゼノリカは、天国の最高位組織です』
『……は? ん?』
前提1、『ゼノリカは、天国の組織』
前提2、『天国は、悪の元凶であるエレガの自宅』
となれば、
「それって……じゃあ、」
『はい。つまり、一言で言ってしまえば、ゼノリカは、人類の敵ということです』
『……ずいぶんな着地点だな。まあ、確かに、これまでの話を整理すれば、そのイコールは成立するが……しかし、となると、UV1も人類の敵ってなるんだが? 最初にハッキリと俺の結論を伝えておくが、それはありえない。UV1は、俺の目の前で、高潔に勇気を叫び、狂ったような絶望に抗った。UV1の覚悟や想いを穢す事は許さない。もし、UV1も人類の敵だと言い切る気なら、俺はお前こそを完全な敵だと判断する』
『そんな事を言うつもりは毛頭ありません』
『だが、あんたが並べた前提を組み合わせた結果はそうなる』
『結論を言いましょう。端的に言えば、UV1様も騙されているのです』
『だまされている……? また、鋭角な言葉が出てきたな』
『UV1様だけではありません。全員がエレガに騙されています。ゼノリカに所属しているものは、自分たちのトップが、センエースを騙るエレガだという事を知りません。ゼノリカに属している者は、みな、純粋に限りなく完成に近い善を執行しようとしている崇高な者達。しかし、エレガは、その尊い感情を利用している』
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