異世界転生はもう飽きた。100回転生した結果、レベル10兆になった俺が神を殺す話

閃幽零

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どっちが悪い?

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「……」

 セファイルの王女サーナの言いがかりに、唖然としているリーン。
 1~2秒ほど、視線をウロウロとさまよわせてから、
 その後、反射的に、すがるような視線をラムドに送った。

 そんなリーンの行動に対し、ラムドは、あくびで応えた。
 ブチっという音とともに、リーンは、ラムドの胸倉をつかみ、周囲には聞こえないよう配慮した小声で、

「ラムド、どういうことだっ……呪いをかけただけではないのか? 勇者が死んだとは、どういうことだ?」

 悲鳴のような詰問を受けて、ラムドは、シレっと、

「まあ、その可能性も、なくはないでしょうなぁ。カースジェイルは、死に直結する呪いではない……ですが、行動を制限する系の呪いだったので、魔王城から逃げ出した直後、『なにかしらの不運が重なって死んでしまった』という可能性もゼロじゃない。もちろん『実際あの後どうなったか』は知りませんが」

 他人事のように話すラムドの態度に心底イラだったリーンが『ラムドに対して何か言う』よりもはやく、
 サーナが続けて、

「我が国にとって、勇者の損失は、とてつもない痛手。魔王国には謝罪と賠償を求めたい」

 そんな発言をかましてきた。

 リーンの神経は迷走する。
 一瞬、何を言われているのか理解できなかった。
 サーナの言い分は狂っている。
 それは分かるのだが、動揺のあまり、頭が動かないので、どこがどう狂っているのか、論理的に反論を構築する事が出来ない。

 だから、結果、ただ茫然と、

「しゃ、謝罪だと? なにを……トチ狂ったことを……仮に勇者が死んでいたとしても、そもそも我々は、勇者から暴行を受けた被害者で――」

 消えそうな声でそうつぶやくことしかできなかった。

 そんなリーンに、サーナは、強気で、

「トチ狂った? おかしな事を言う。そちらの宰相は、我が国の最高戦力を、なんの理由もなく殺したのだぞ。賠償を求めるのは当たり前のこと」

「なんの理由もなく?! はぁああ?! 話を聞いていなかったのか! 我が国は、勇者に侵略されたと――」

「その話を裏付ける証拠は?」

「……は? 証拠ぉ?」

「確かに、勇者は、性格に少々問題がある。それは認めよう。しかし、愚者ではない! それは、フーマー大学校での成績が証明している! 優れた頭脳を持つ勇者が、単騎で一国に攻め入るなどありえるだろうか、いや、断じて否! そもそも、なぜ、一国の王子であり、冒険者の最高栄誉である『勇者』の称号を持つ我が弟が、魔王国に攻め入ったのか、そこのところの理由がわからない!」

「だっ、だから、ワシはその理由を聞かせてもらおうと、ここに――」

 リーンの反射的な反論を封じ込めるように、

「理由がないのは当然! 勇者は魔王国に攻め入ってなどいないからだ! そんな事をする理由がない! ということは、攻め入ってなどいないのだ! 魔王国側の言い分は破綻していると、メチャクチャな言いがかりだと言わざるをえない!」

 自信満々に断言するサーナ。
 曇りのない表情。
 『悪を断罪する正義の使者』にしか見えない、堂々とした態度。

 それを受けて、リーンは、

「……」

 呆れかえるしかなかった。
 『この女とは、まともな会話が出来る気がしない』と、心から思った。
 国際関係ではよくある事象。
 戦争という衝突が起こる理由。

 現状は、既に、リーンにとっては相当な地獄。
 だが、まだまだ、リーンの心をフルボッコにする地獄は終わらない。


 ――セファイルは、散々悩み、考え抜いたすえ、腹をくくってここにきた。
 ――簡単に言えば、セファイルは『被害者に徹しよう』という選択肢を下したのだ。
 ――国際社会において、弱さを見せれば食い物にされてしまう。
 ――喰われてたまるか。
 ――サイは投げられた。


「ここで、一つ、魔王国側の言い逃れを潰す証拠を提示したく思う。我が国には『勇者が、魔王国側から招待された』という記録が残っている」

「……は? 招待?」

 サーナは、アイテムボックスから、『いくらでも捏造できそうな書類』を取り出すと、それを、鬼の首でもとったかのようにふりかざしながら、

「これが示すように! 何をエサとしたかは知らないが、とにかく! 魔王国は、卑劣にも、我が国の勇者を魔王城に誘(おび)き寄せ、全勢力をもって襲いかかり殺害した。そして、あろうことか、その罪を勇者に押しつけ、あたかも被害者かのようにふるまっている! なんという暴挙! その大罪、断じて許されることではない!」

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