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傍若無人。
しおりを挟むラムドは、リーンの目を睨みつけ、
「魔王国の象徴リーン・サクリファイス・ゾーン。お前の仕事はこの後からだ。今は黙って、俺の第一手を見ていろ」
リーンの口を片手でふさいだまま、カースソルジャーに意識を向けて、
「スリーピース・カースソルジャー……この偉大なる狂気のマッド召喚士ラムド・セノワール様をナメたクソバカどもに、『お前たちの力』と『テメェらの立場』ってヤツを教えてやれ」
命令を受けると、カースソルジャーは、いっせいに、各国の冒険者たちに襲いかかった。
「くっ、本気か!」
「迎え撃て! やつは本気だ!」
「ちっ! やはり、邪悪なる波動に目覚めたか!」
ここにいる誰もが冒険者。
その存在値は、最も弱いセアのプッチでも50を余裕で超えている。
フーマーの使徒を除けば、この中で最も強いのはトーン共和国のカバノン。
その存在値は、70を超えている。
サーナも、それに匹敵する強者。
どいつもこいつも、おそろしく強い。
すさまじく強い。
ここにいるのは、この世界においては、圧倒的強者の集まり。
――しかし、10秒ともたなかった。
カースソルジャーは、瞬く間に、国の中枢たる冒険者たちを叩き潰してみせた。
「ぅ……ぁあ……」
「ぐふ……っ」
誰も殺していない。
殺しては利用できない。
両手両足をへし折り、その場に転がす。
ランク5の回復魔法なら楽に治る程度の傷。
ランク5の回復魔法の使い手は凄まじくレアだが、一国に一人くらいはいる。
「さて、そろそろ状況が理解できた頃だろうし、話しあいの続きといこうか」
ラムドは、呪縛の魔法でリーンも動けなくしてから、カバノンのもとまで歩き、
仰向けで無防備なその腹を、
「ぐぅ! ぬぅ! はぁっ!」
何度か踏みつけて、
「話しあいの続きだっつってんだろ。返事しろよ」
「ぐ……うぅ……うへぁっ」
「手足をへし折って動けなくしてやっただけだ。会話は出来るだろ。今のも、ちぃと腹筋を圧迫しただけ、内臓を潰した訳でもねぇ。ただ、次、返事をしないなら、腸を踏みつぶす」
言ってから、もう一度踏みつけると、カバノンは、
「ぐぅう!!」
歯をくいしばり、怒りに濡れた目でラムドを睨みつけ、
「き、貴様……分かっているのか……戦争に……なるぞ……」
カバノンは、瞬間的に大きく息を吸って、
「いまなら、まだ! 許してやる! だが、これ以上――ぐぁああ!!」
ラムドは、そこで、カバノンの肩を左手で抑え、右手で、カバノンの右手首を掴んで、グイっと引き千切った。
ゴキ、ブチブチィイっと骨や肉がひしゃげる音がした。
血が吹き出て、砕けた骨が弾けた。
「うぅうう……いぃいい……がっ、はっ……」
ラムドは、引き千切ったカバノンの腕をムチのようにしならせて、
「がぁあっ!」
カバノンの頬を打つ。
2度、3度。
ラムド的には、いい音がした。
人の視点では地獄の音色。
「バカだバカだとは思っていたが、まさか、ウチのバカ殿と同じレベルだったとは。そんなバカが序列二位の大国トーンの代表とは、まったく、なげかわしい。……『宣戦布告はもう終わっている』と何度言えばわかる? その脳に詰まっているのはカニみそか? それとも耳が死んでんのか? えぇ、おい。わかるか? 最後にもう一度だけ言うぞ。耳をかっぽじれ。……すでに、戦争は、はじまってんだよ」
「本気で……戦争をする気か……」
「はっ。ぶっちゃけ、戦争にはならないけどな。俺がお前らを潰して終わりだよ。つまり、これは、ただの粛清だ。覇権国家の宰相ラムド・セノワールの名のもとに、『てめぇら人類が積み重ねてきた愚かな過ち』を断罪する」
「何が過ちだ……畜生風情が、御大層な言葉を使いやがって……じ、人類をナメるのも大概にしておけ……存在そのものが世界の過ちであるモンスターよ……」
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