JKが小説に書いた転生者は、売国政府を断罪する怪物で――世界が大発狂

閃幽零

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セン6話 眠る怪物。

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 セン6話 眠る怪物。

 ――深夜の渋谷。

 瓦礫の交差点の中央で、センエースは長羽織のまま仰向けになり、無防備に眠っていた。
 街灯も消えた暗闇の中、煌めくモニターと群衆のスマホライトに照らされ、ただ寝息だけが響く。

「……すぅ……zzz……」

 その姿は、全世界にライブ配信され続けていた。

『やばすぎwww 世界の秩序をひっくり返した怪物が、交差点で熟睡ww』
『寝てる間に暗殺できるんじゃ?』
『お前、やってみれば? ヒーローになれるぜ』

 笑いと恐怖が入り交じるSNSの洪水。
 一方その頃、永田町と霞が関では、眠れぬ夜が続いていた。

 ※ちなみに、この時、渋谷で寝ていたのはセンの分身である。トコのところに向かう前に置いてきた分身が、センの代わりに寝ていたのだ。分身は能力的にはかなり劣るが、見た目はそっくりなので、誰にもバレることはなかった。


 ★


 ――《財務省》

「ドル円は一時一五〇円を突破しました。長期金利も急騰し、国債先物には売り圧力がかかっています」
「外資系ファンドが一斉にショートを積み増しており、国内金融機関の流動性は持たない可能性があります」
「……ただし皮肉なことに、センエースが任命した新経営陣を据えた企業の株価は軒並み上昇。市場は『腐敗排除』を好感しているようです」
「我々に残された選択肢は二つ――為替介入で延命を図るか、あるいは『セン効果』を市場に織り込んだものと割り切るか、です」

 会議室に漂う空気は、焦りと諦観が入り混じっていた。
 財務官僚たちの気苦労がうかがえる。


 ★


 【SNS】

『ちょ、さっきまで135円とか言ってたのに、もう150円突破ってバグだろ!』
『為替ってのは株より早く動くんです。安全資産のドルに資金が逃げ込んでいる。要は日本売りです』
『昨日500円で買えたハンバーガーが、明日には550円になるかもしれない』
『終わった終わった終わったwww』
『いや終わってない! 日銀が介入すれば一時的に円高に戻せる!』
『でも結局、みんなセンエースに張ってんだろ? 中央銀行より寝顔の方が信じられてるって狂気すぎw』
『ちょっと待て、【センエースに張る】って何? 競馬かよ?』
『投資家が、日銀よりセンの一挙手一投足にかけてるってことだよ』

 ★

 ――ニューヨーク・摩天楼・土曜午後(東京は日曜未明)。

 分厚いガラスの向こう、摩天楼が夕陽を受けて青くにじんでいた。
 厚い絨毯と黒塗りのテーブルに、わずか数人の影が腰掛けている。
 世界を裏で握る、富裕層中の富裕層たち。

「シティでは円売りのポジションが膨らんでいる。東京オープンでさらに落ちるだろう」
「落ち着け。日銀が介入すれば、いったんは戻る」

 テーブルには赤ワインと、欧州から届いた最新のブリーフィングが無造作に広がっていた。

「……一応、こちらが先に仕掛けたよ。ロンドンに観測気球を流して、売りをいったん止めた」
「おかげで短期筋が食いついたな。慌てて買い戻してくれた」
「その刹那に先物を叩き落とした。往復で抜いた利益は……まあ、ワイン一本分にはなるだろう」
「ロマネ・コンティよりは流石に上だろう」
「だが勘違いするな。数字が整ったように見えるだけだ。根は腐ったまま、何ひとつ変わっていない」

「――東京では、もう日曜の朝だ。『渋谷サミット』が始まる」
「ワシントンは『臨戦態勢を継続』と伝えてきたぞ」
「無意味だ。センエースを排除できる兵器は存在しない」
「ふっ……なんせ、やつは、核無効化バリアを張れるスーパ○マンだからな」
「なら、我々のカードは?」
「利用するか、沈黙するか。どちらにせよ、『民主主義の看板』はもう通用しない」

 重い間。
 誰もワインに口をつけず、ただ窓の外を見つめていた。

 その時、一人が低くつぶやく。

「……『ロキ』が、センエースに興味を示しているらしい」

 場がわずかに揺れた。

「ロキなら……センエースを殺せるか?」
「奴で無理なら、誰にも無理だろう」
「つまり、どっちだ? やれるのか?」
「知らんよ。それこそ、神のみぞ知る領域だ」

 賛同も否定もしない。
 静かに液面だけが揺れた。

 ★

 夜が白む。
 渋谷スクランブル交差点のモニターには、まだ眠るセンの姿が映っている。
 この頃には、分身と入れ替わって本体が眠っていた。途中の入れ替わりに気づく者はいない。

 そして――モスクワ、ワシントン、北京、ブリュッセル。
 遠く離れた会議室のスクリーンにも、同じ寝顔が並んでいた。

 運命の日がはじまる。
 ――『渋谷サミット』の幕が上がろうとしていた。
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