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「んー、これで空間内三割ってところか」
神父の『帰還』魔法で教会に戻ってくると、奴が手あたり次第巾着の中にいろいろと詰めていった。
調理器具、テーブル、椅子八脚、神父のベッド。
するとぺったんこだった巾着に少しだけふくらみが出た。
「こいつはな、無限に物を入れられる訳じゃねえ。袋ごとに中身の容量はまちまちなんだ。意外と少ないが、それでもこの部屋いっぱいに詰め込めるぐらいの容量があるな」
「すげぇな」
「しゅごごごごご」
「金貨五十ってところか」
……は?
「え、それ一個でここから冒険者登録までやってもお釣り出るじゃないか」
「そうだな。だが売るなよ。これがどれだけレアアイテムだと思ってんだ。俺すら持ってねーんだぞ!」
「そういやこれ、神父が倒した恐竜から出たんだっけ」
「きょーりゅー? 勝手に命名するんじゃねえよ。あれはティアンティーレクスってモンスターだ。まぁそれはおいといて、これはお前が持っとけ。冒険者辞めた俺様が持ってたって仕方ねえだよ。それにな、これがあることで格段に効率は上がるんだよ」
でも金貨五十枚……
地上の居住権の半分の金額だ。
これ一個で半分貯まることになる。
「いいかよく聞けリヴァ。お前の背負い袋に、こいつは入るか?」
神父が巾着からドロップアイテムの毛皮を取り出した。
二メートルぐらいの毛皮だ。
「入る訳ねえだよ」
「だよねぇー。十二かいはな、ドロップ率は低いものの、こいつが出るんだ。これ一枚で銀貨二枚だぞ」
「すげーじゃん! 六日分の稼ぎになるのか」
「でも背負い袋にゃ入らないんだろ? どうやって持って帰る」
そりゃあ丸めて紐で括って背負うしかないだろ。
ってところで、そんな格好した自分を想像してみた。
とてもじゃないが、まともに戦える気がしない。
「運よく二枚目でましたー」
むりぽ過ぎる……。
「ドロップアイテムの中には、結構デカくて重いものだってある。こいつを持ってみろ。俺のベッドが入ってんだぜ、それ」
「……軽い」
「小さいから懐に入れて持ち歩けるし、盗難防止にもなるだろう」
ぐ……。確かに今まで、背負い袋いっぱいにアイテム詰めて地下街に上がって来ると、嫌な視線を向けられていたもんだ。
盗まれないようにって、警戒しながらここまで来てたもんな。
「他にも利点があるぞ。この袋の中に食料を入れても、腐らねえ。中の時間は止まっているからな」
「え? 止まってる?」
「あ、先に言っておくとだな、生き物は入れられない。まぁ入れられるようなら、こうして俺が手を突っ込んでる時点で、中に吸い込まれてるっちゅーねん」
人もモンスターも動物も、とにかく生きているものは入らない。
死んでいれば入るらしい。
「地上なら倒した獲物を袋に入れて、解体業者に持って行く奴もいるぐらいだ。とにかくな、これは自分で使うためにとっておけ」
「うぅーん……」
「デカいもんが出て、そのたびにここに戻ってきてたら、時間の無駄だろ。これがあれば何日もダンジョンに潜れる。転送装置代の節約だって出来るんだ」
「リヴァ、私も、そえ、あったほうがいい、思う」
「セシリアがそう言うなら……」
あの場に彼女がいなければ、たぶん今頃俺は死んでいた。
あの場のドロップは全部、神父が俺たちにくれるという。二人で分け合わないとな。
「分かった。これは俺たちが使うってことで」
「リヴァくぅーん。今『俺たち』って言ったよねぇ。このお嬢ちゃんとずーっと一緒ってことかぁ。ねぇ、紹介してよぉ」
「……くっ。殺すぞエロ生臭変態坊主」
「きゃーっ。リヴァくん怖いわぁー」
可愛くもない声を上げて、神父がセシリアの背中に隠れる。
そんな神父を見て、セシリアはにこにこと笑っていた。
はぁ……疲れる大人だな。
神父の『帰還』魔法で教会に戻ってくると、奴が手あたり次第巾着の中にいろいろと詰めていった。
調理器具、テーブル、椅子八脚、神父のベッド。
するとぺったんこだった巾着に少しだけふくらみが出た。
「こいつはな、無限に物を入れられる訳じゃねえ。袋ごとに中身の容量はまちまちなんだ。意外と少ないが、それでもこの部屋いっぱいに詰め込めるぐらいの容量があるな」
「すげぇな」
「しゅごごごごご」
「金貨五十ってところか」
……は?
「え、それ一個でここから冒険者登録までやってもお釣り出るじゃないか」
「そうだな。だが売るなよ。これがどれだけレアアイテムだと思ってんだ。俺すら持ってねーんだぞ!」
「そういやこれ、神父が倒した恐竜から出たんだっけ」
「きょーりゅー? 勝手に命名するんじゃねえよ。あれはティアンティーレクスってモンスターだ。まぁそれはおいといて、これはお前が持っとけ。冒険者辞めた俺様が持ってたって仕方ねえだよ。それにな、これがあることで格段に効率は上がるんだよ」
でも金貨五十枚……
地上の居住権の半分の金額だ。
これ一個で半分貯まることになる。
「いいかよく聞けリヴァ。お前の背負い袋に、こいつは入るか?」
神父が巾着からドロップアイテムの毛皮を取り出した。
二メートルぐらいの毛皮だ。
「入る訳ねえだよ」
「だよねぇー。十二かいはな、ドロップ率は低いものの、こいつが出るんだ。これ一枚で銀貨二枚だぞ」
「すげーじゃん! 六日分の稼ぎになるのか」
「でも背負い袋にゃ入らないんだろ? どうやって持って帰る」
そりゃあ丸めて紐で括って背負うしかないだろ。
ってところで、そんな格好した自分を想像してみた。
とてもじゃないが、まともに戦える気がしない。
「運よく二枚目でましたー」
むりぽ過ぎる……。
「ドロップアイテムの中には、結構デカくて重いものだってある。こいつを持ってみろ。俺のベッドが入ってんだぜ、それ」
「……軽い」
「小さいから懐に入れて持ち歩けるし、盗難防止にもなるだろう」
ぐ……。確かに今まで、背負い袋いっぱいにアイテム詰めて地下街に上がって来ると、嫌な視線を向けられていたもんだ。
盗まれないようにって、警戒しながらここまで来てたもんな。
「他にも利点があるぞ。この袋の中に食料を入れても、腐らねえ。中の時間は止まっているからな」
「え? 止まってる?」
「あ、先に言っておくとだな、生き物は入れられない。まぁ入れられるようなら、こうして俺が手を突っ込んでる時点で、中に吸い込まれてるっちゅーねん」
人もモンスターも動物も、とにかく生きているものは入らない。
死んでいれば入るらしい。
「地上なら倒した獲物を袋に入れて、解体業者に持って行く奴もいるぐらいだ。とにかくな、これは自分で使うためにとっておけ」
「うぅーん……」
「デカいもんが出て、そのたびにここに戻ってきてたら、時間の無駄だろ。これがあれば何日もダンジョンに潜れる。転送装置代の節約だって出来るんだ」
「リヴァ、私も、そえ、あったほうがいい、思う」
「セシリアがそう言うなら……」
あの場に彼女がいなければ、たぶん今頃俺は死んでいた。
あの場のドロップは全部、神父が俺たちにくれるという。二人で分け合わないとな。
「分かった。これは俺たちが使うってことで」
「リヴァくぅーん。今『俺たち』って言ったよねぇ。このお嬢ちゃんとずーっと一緒ってことかぁ。ねぇ、紹介してよぉ」
「……くっ。殺すぞエロ生臭変態坊主」
「きゃーっ。リヴァくん怖いわぁー」
可愛くもない声を上げて、神父がセシリアの背中に隠れる。
そんな神父を見て、セシリアはにこにこと笑っていた。
はぁ……疲れる大人だな。
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