40 / 110
20-2
しおりを挟む
「じゃあ岩塩と胡椒とか、とにかく料理に使える調味料系とか頼むよ。人間の町に行かなくていいからな。安全に手に入る、物々交換でいいから」
「はい」
「魔石以外に何があるといい?」
「んー、こえとか、こえ」
空間収納袋をセシリアに持たせ、地上で食料を仕入れて来て貰うことにした。
何日もダンジョンに引き籠るためには、食料が必要だ。
地下街で買う物より、セシリアが持って来る地上の食べ物のほうが断然美味いので、どうせならそっちの方がいい。
「ハ、ハムがあったら……嬉しいんだけどな」
「うん、はいっ。さん、にち、ぐあい」
「三日ぐらいか?」
「はいっ」
地下街に来るときは夜にしろと念を押して彼女を見送った。
寝床には戻らず、教会へと向かう。
今回の件でギルドから事情聴取があるだろうって、神父が言うので、教会で待ってなきゃいけないからだ。
「お、セシリアちゃんは帰ったのか」
「あ、あぁ。帰ったよ」
神父にはセシリアが有翼人だってのは話してない。
ダンジョンで知り合った──としか言ってなかった。
「外は暗いけど、大丈夫なのか?」
「いつも夜だったし、大丈夫だ──うぇ!?」
外はって……セシリアが外に出たの、知ってるのか!?
「はっはぁーん。あのなぁリヴァ、俺様は超絶イケメン最強神父だぜえぇ。知ってたに決まってんだろ」
「し、知ってって……どこまで知ってんだよっ」
「んふぅー。お前がー、あの子にー、惚の字だってグハァ。急に殴るとか酷いリヴァくぅん」
「次はこっちで殴るぞ」
神父に貰ったハンマーをチラつかせた。
「それさすがに死ぬから止めて。ったく、わーったよ。アレだ。お前ぇが随分前に聞いてきただよ。エルフやドワーフ以外の亜人について」
「あ、あぁ」
セシリアが上から落ちてきた後の話だな。
「そん時お前、有翼人の話したら表情変わったんだよ」
「ちっ。目ざとい奴だな」
「観察力が鋭いと言って欲しいなぁ。冒険者になるなら大事なことだぞぉ。あと乙女心を知る上でも大事なんだからな。今のままだとモテないぞお前ぇ」
ほんっとこいつは的を得たことを不真面目に言いやがる。
「まぁあとな。俺はここで身寄りのない子供を拾っては面倒みてんだ。親のいるガキだって、だいたい顔は覚えてんだよ。そもそもあんな綺麗な子がいたら、俺が忘れる訳ねえだろ」
「ロリコンめ」
「いやぁー、リヴァくんったらぁ。でもほらぁ、ロリコンなんていくらでもいるだろう。それでなくたってこの町じゃ、ちょっと見た目が良ければ直ぐに人攫いに連れて行かれるんだ。あの年齢までここにいるような子じゃねえんだよ」
だから外から来た女の子だってのは、見た時から確定していたらしい。
確かにな……この教会で暮らす子供たちの八割は男だ。
そしてこの教会にいたって、教会の外にでてひとりで歩いてりゃ、連れ去られることもある。
実際、俺が幼い頃に女の子が遊びに行ったっきり帰ってこないなんてことが何度かあったし。
そのたびに神父は女の子を探し回り、帰って来た時には泣いて自分を責めていた。俺たち子供には見えない場所で──だが。
「とにかくな。絶対に他の奴らには知られるな」
「や、やっぱマズいのか」
「あぁ。有翼人は今や希少種だ。希少ってことはそれだけで価値が上がる。有翼人は奴隷の中でも最も高値で取引される種族だ」
「それを知ってる奴に見つかれば、狙われるのは必須か……」
「まぁ世の中悪い人間ばかりじゃねえ。絶対にそうなる訳じゃねえが、どこに悪い奴らが潜んでるか分からねえからな。危険を避けるために、隠しておく方がいいだろう」
話さないのが吉。それは変わらないってことだ。
「はい」
「魔石以外に何があるといい?」
「んー、こえとか、こえ」
空間収納袋をセシリアに持たせ、地上で食料を仕入れて来て貰うことにした。
何日もダンジョンに引き籠るためには、食料が必要だ。
地下街で買う物より、セシリアが持って来る地上の食べ物のほうが断然美味いので、どうせならそっちの方がいい。
「ハ、ハムがあったら……嬉しいんだけどな」
「うん、はいっ。さん、にち、ぐあい」
「三日ぐらいか?」
「はいっ」
地下街に来るときは夜にしろと念を押して彼女を見送った。
寝床には戻らず、教会へと向かう。
今回の件でギルドから事情聴取があるだろうって、神父が言うので、教会で待ってなきゃいけないからだ。
「お、セシリアちゃんは帰ったのか」
「あ、あぁ。帰ったよ」
神父にはセシリアが有翼人だってのは話してない。
ダンジョンで知り合った──としか言ってなかった。
「外は暗いけど、大丈夫なのか?」
「いつも夜だったし、大丈夫だ──うぇ!?」
外はって……セシリアが外に出たの、知ってるのか!?
「はっはぁーん。あのなぁリヴァ、俺様は超絶イケメン最強神父だぜえぇ。知ってたに決まってんだろ」
「し、知ってって……どこまで知ってんだよっ」
「んふぅー。お前がー、あの子にー、惚の字だってグハァ。急に殴るとか酷いリヴァくぅん」
「次はこっちで殴るぞ」
神父に貰ったハンマーをチラつかせた。
「それさすがに死ぬから止めて。ったく、わーったよ。アレだ。お前ぇが随分前に聞いてきただよ。エルフやドワーフ以外の亜人について」
「あ、あぁ」
セシリアが上から落ちてきた後の話だな。
「そん時お前、有翼人の話したら表情変わったんだよ」
「ちっ。目ざとい奴だな」
「観察力が鋭いと言って欲しいなぁ。冒険者になるなら大事なことだぞぉ。あと乙女心を知る上でも大事なんだからな。今のままだとモテないぞお前ぇ」
ほんっとこいつは的を得たことを不真面目に言いやがる。
「まぁあとな。俺はここで身寄りのない子供を拾っては面倒みてんだ。親のいるガキだって、だいたい顔は覚えてんだよ。そもそもあんな綺麗な子がいたら、俺が忘れる訳ねえだろ」
「ロリコンめ」
「いやぁー、リヴァくんったらぁ。でもほらぁ、ロリコンなんていくらでもいるだろう。それでなくたってこの町じゃ、ちょっと見た目が良ければ直ぐに人攫いに連れて行かれるんだ。あの年齢までここにいるような子じゃねえんだよ」
だから外から来た女の子だってのは、見た時から確定していたらしい。
確かにな……この教会で暮らす子供たちの八割は男だ。
そしてこの教会にいたって、教会の外にでてひとりで歩いてりゃ、連れ去られることもある。
実際、俺が幼い頃に女の子が遊びに行ったっきり帰ってこないなんてことが何度かあったし。
そのたびに神父は女の子を探し回り、帰って来た時には泣いて自分を責めていた。俺たち子供には見えない場所で──だが。
「とにかくな。絶対に他の奴らには知られるな」
「や、やっぱマズいのか」
「あぁ。有翼人は今や希少種だ。希少ってことはそれだけで価値が上がる。有翼人は奴隷の中でも最も高値で取引される種族だ」
「それを知ってる奴に見つかれば、狙われるのは必須か……」
「まぁ世の中悪い人間ばかりじゃねえ。絶対にそうなる訳じゃねえが、どこに悪い奴らが潜んでるか分からねえからな。危険を避けるために、隠しておく方がいいだろう」
話さないのが吉。それは変わらないってことだ。
75
あなたにおすすめの小説
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
インターネットで異世界無双!?
kryuaga
ファンタジー
世界アムパトリに転生した青年、南宮虹夜(ミナミヤコウヤ)は女神様にいくつものチート能力を授かった。
その中で彼の目を一番引いたのは〈電脳網接続〉というギフトだ。これを駆使し彼は、ネット通販で日本の製品を仕入れそれを売って大儲けしたり、日本の企業に建物の設計依頼を出して異世界で技術無双をしたりと、やりたい放題の異世界ライフを送るのだった。
これは剣と魔法の異世界アムパトリが、コウヤがもたらした日本文化によって徐々に浸食を受けていく変革の物語です。
【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活
シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!
【死に役転生】悪役貴族の冤罪処刑エンドは嫌なので、ストーリーが始まる前に鍛えまくったら、やりすぎたようです。
いな@
ファンタジー
【第一章完結】映画の撮影中に死んだのか、開始五分で処刑されるキャラに転生してしまったけど死にたくなんてないし、原作主人公のメインヒロインになる幼馴染みも可愛いから渡したくないと冤罪を着せられる前に死亡フラグをへし折ることにします。
そこで転生特典スキルの『超越者』のお陰で色んなトラブルと悪名の原因となっていた問題を解決していくことになります。
【第二章】
原作の開始である学園への入学式当日、原作主人公との出会いから始まります。
原作とは違う流れに戸惑いながらも、大切な仲間たち(増えます)と共に沢山の困難に立ち向かい、解決していきます。
無尽蔵の魔力で世界を救います~現実世界からやって来た俺は神より魔力が多いらしい~
甲賀流
ファンタジー
なんの特徴もない高校生の高橋 春陽はある時、異世界への繋がるダンジョンに迷い込んだ。なんだ……空気中に星屑みたいなのがキラキラしてるけど?これが全て魔力だって?
そしてダンジョンを突破した先には広大な異世界があり、この世界全ての魔力を行使して神や魔族に挑んでいく。
無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す
紅月シン
ファンタジー
七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。
才能限界0。
それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。
レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。
つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。
だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。
その結果として実家の公爵家を追放されたことも。
同日に前世の記憶を思い出したことも。
一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。
その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。
スキル。
そして、自らのスキルである限界突破。
やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。
※小説家になろう様にも投稿しています
ガチャと異世界転生 システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!
よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。
獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。
俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。
単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。
ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。
大抵ガチャがあるんだよな。
幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。
だが俺は運がなかった。
ゲームの話ではないぞ?
現実で、だ。
疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。
そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。
そのまま帰らぬ人となったようだ。
で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。
どうやら異世界だ。
魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。
しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。
10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。
そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。
5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。
残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。
そんなある日、変化がやってきた。
疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。
その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。
転生特典〈無限スキルポイント〉で無制限にスキルを取得して異世界無双!?
スピカ・メロディアス
ファンタジー
目が覚めたら展開にいた主人公・凸守優斗。
女神様に死後の案内をしてもらえるということで思春期男子高生夢のチートを貰って異世界転生!と思ったものの強すぎるチートはもらえない!?
ならば程々のチートをうまく使って夢にまで見た異世界ライフを楽しもうではないか!
これは、只人の少年が繰り広げる異世界物語である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる