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スティアンをぶっ飛ばした後、勢い余ってラインフェルトまで殴ってしまった。
後悔はしていないし、事後だが皇帝も許可をくれたので問題ない。
ラインフェルト派の貴族・騎士たちは全員お縄についた。
かわいそうだとは思わないが、一家全員が路頭に迷うことになるだろう。仲には公開処刑されるやつもいるみたいだ。
それはラインフェルトも同様だ。
「反逆罪首謀者ラインフェルト。貴様は私欲のために兄弟の案策を企て、皇帝である余に剣を向けた。見せしめとして三日ののちに公開処刑とする」
「何故だ! 皇妃の子であるこの私が、何故帝位を告げぬのだっ。身分の低い女から生まれたクリフィトンの方が、優れているというのか!?」
「その通りだ」
皇帝即答。
この後もギャーギャー喚き散らしていたが、あんまりうるさいからさるぐつわをされて連行されていった。
同じようにラインフェルト派の貴族たちも、全員地下牢に投獄だ。
皇妃は離宮に監禁。もう二度とそこからは出て来れないと。
しっかし貴族がこれだけいっぺんにいなくなったら、帝国は大丈夫なのかね。
そう思っていたけど──
「謁見の間にいた貴族たちは、上流貴族の半数ほどだ。各地のラインフェルト派の者は個別尋問して、この先どうするか決めさせる」
「皇帝派に寝返るなら許すってことか?」
「爵位は下げるけれどね。領地も縮小する」
「縮小した土地は誰が治めるんだよ」
「それも心配ない」
下級貴族の爵位を上げ、領地を拡大させる。
んなことされたら、下級貴族たちは大喜びして皇帝、そして第一皇子に感謝するだろう。
そうなると上流貴族は面白くないんじゃないか?
「貴族は世襲制だが、跡を告げるのはひとりだけ。しかし息子はひとりとは限らないだろう?」
「もしかして余ってる領を、上流貴族の次男坊三男坊に?」
「あぁ。すぐにとはいかないだろう。領地経営のノウハウを叩き込んでからになる」
下級貴族も上流貴族も喜ぶって訳か。
これで暫くは皇帝への忠誠も維持できるだろう。ある意味ラインフェルト様さまだな。
「さて、ひとまず片付いたな。では少年少女……名はなんと申す?」
大きすぎるため息を吐き、皇帝が俺を見る。
「リヴァ。こいつはセシリアだ」
セシリアは少し怯えた様子で、だがペコリと頭を下げた。
俺は下げない。
この皇帝は、なかなか話の分かるいいおっさんだが、それだけだ。
俺のような地下育ちの貧乏にんがいるのも、皇帝がそれをよしとしているからだ。
セシリアのように、種族が違うからって追われる生き方をしていたのだって、皇帝は奴隷制度を廃止しなかったからだ。
このおっさんひとりが悪いわけじゃないのは分かっている。
このおっさんが命令してそうしている訳じゃないのも分かっている。
だからって敬う気持ちなんてものは微塵もない。
けどな……
「リヴァ、セシリア。此度の件、アレスタンのことといい余を救ってくれたことといい、礼のしようもない」
「だったらきっちり褒美をくださいよ。あぁ、別に地位とかはいいや」
貰うもんは貰っておかなきゃな。
「はぁぁぁぁ」
「なんだよ生臭坊主。じじくせーため息なんか吐きやがって」
「誰のせいで老け込んだと思ってやがんだ!」
「神父さま、おじーちゃんになっちゃった?」
「セシリアーちゃーん。俺様はまだ若いからぁー」
なにが若いだ。
欲しい褒美ってのは別に特別なものじゃない。
山奥のあのダンジョンだ。
あのダンジョンの所有権を、帝国で認めてもらう。ただそれだけだ。
だがダンジョンの存在自体を知られなければ、所有権云々の問題も起こらない。
まぁ見つかった時の場合の保険だな。
それもあってアレスが気を利かせてくれて、ダンジョンの話は皇帝の自室で行われた。
存在を知るのは俺たちとアレス、第一皇子と皇帝だけだ。
皇帝の蝋印付きの誓約書も貰った。
「これで……あんたが望んだ場所が手に入った訳だ」
そう言って俺は神父を見る。
目をぱちくりして、いまいち理解していない神父にもう一度言う。
「ガキどもを安心して育てられる場所が欲しかったんだろ?」
「……は? いやお前……え? まさかそのダンジョンを……」
「理解したか? 住みやすいように俺はセッティングしたから、感謝しろよ」
ただ問題は家だよなぁ。
建築技術なんてないし……。
後悔はしていないし、事後だが皇帝も許可をくれたので問題ない。
ラインフェルト派の貴族・騎士たちは全員お縄についた。
かわいそうだとは思わないが、一家全員が路頭に迷うことになるだろう。仲には公開処刑されるやつもいるみたいだ。
それはラインフェルトも同様だ。
「反逆罪首謀者ラインフェルト。貴様は私欲のために兄弟の案策を企て、皇帝である余に剣を向けた。見せしめとして三日ののちに公開処刑とする」
「何故だ! 皇妃の子であるこの私が、何故帝位を告げぬのだっ。身分の低い女から生まれたクリフィトンの方が、優れているというのか!?」
「その通りだ」
皇帝即答。
この後もギャーギャー喚き散らしていたが、あんまりうるさいからさるぐつわをされて連行されていった。
同じようにラインフェルト派の貴族たちも、全員地下牢に投獄だ。
皇妃は離宮に監禁。もう二度とそこからは出て来れないと。
しっかし貴族がこれだけいっぺんにいなくなったら、帝国は大丈夫なのかね。
そう思っていたけど──
「謁見の間にいた貴族たちは、上流貴族の半数ほどだ。各地のラインフェルト派の者は個別尋問して、この先どうするか決めさせる」
「皇帝派に寝返るなら許すってことか?」
「爵位は下げるけれどね。領地も縮小する」
「縮小した土地は誰が治めるんだよ」
「それも心配ない」
下級貴族の爵位を上げ、領地を拡大させる。
んなことされたら、下級貴族たちは大喜びして皇帝、そして第一皇子に感謝するだろう。
そうなると上流貴族は面白くないんじゃないか?
「貴族は世襲制だが、跡を告げるのはひとりだけ。しかし息子はひとりとは限らないだろう?」
「もしかして余ってる領を、上流貴族の次男坊三男坊に?」
「あぁ。すぐにとはいかないだろう。領地経営のノウハウを叩き込んでからになる」
下級貴族も上流貴族も喜ぶって訳か。
これで暫くは皇帝への忠誠も維持できるだろう。ある意味ラインフェルト様さまだな。
「さて、ひとまず片付いたな。では少年少女……名はなんと申す?」
大きすぎるため息を吐き、皇帝が俺を見る。
「リヴァ。こいつはセシリアだ」
セシリアは少し怯えた様子で、だがペコリと頭を下げた。
俺は下げない。
この皇帝は、なかなか話の分かるいいおっさんだが、それだけだ。
俺のような地下育ちの貧乏にんがいるのも、皇帝がそれをよしとしているからだ。
セシリアのように、種族が違うからって追われる生き方をしていたのだって、皇帝は奴隷制度を廃止しなかったからだ。
このおっさんひとりが悪いわけじゃないのは分かっている。
このおっさんが命令してそうしている訳じゃないのも分かっている。
だからって敬う気持ちなんてものは微塵もない。
けどな……
「リヴァ、セシリア。此度の件、アレスタンのことといい余を救ってくれたことといい、礼のしようもない」
「だったらきっちり褒美をくださいよ。あぁ、別に地位とかはいいや」
貰うもんは貰っておかなきゃな。
「はぁぁぁぁ」
「なんだよ生臭坊主。じじくせーため息なんか吐きやがって」
「誰のせいで老け込んだと思ってやがんだ!」
「神父さま、おじーちゃんになっちゃった?」
「セシリアーちゃーん。俺様はまだ若いからぁー」
なにが若いだ。
欲しい褒美ってのは別に特別なものじゃない。
山奥のあのダンジョンだ。
あのダンジョンの所有権を、帝国で認めてもらう。ただそれだけだ。
だがダンジョンの存在自体を知られなければ、所有権云々の問題も起こらない。
まぁ見つかった時の場合の保険だな。
それもあってアレスが気を利かせてくれて、ダンジョンの話は皇帝の自室で行われた。
存在を知るのは俺たちとアレス、第一皇子と皇帝だけだ。
皇帝の蝋印付きの誓約書も貰った。
「これで……あんたが望んだ場所が手に入った訳だ」
そう言って俺は神父を見る。
目をぱちくりして、いまいち理解していない神父にもう一度言う。
「ガキどもを安心して育てられる場所が欲しかったんだろ?」
「……は? いやお前……え? まさかそのダンジョンを……」
「理解したか? 住みやすいように俺はセッティングしたから、感謝しろよ」
ただ問題は家だよなぁ。
建築技術なんてないし……。
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