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36:アブソディラスかーっ
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全身が赤いうろこで覆われた恐竜――ではなくドラゴン。
ダンプカーほどのドラゴンが、確かに玉座の前でとぐろを巻くような感じで眠っていた。
アブソディラスを見慣れてしまっているからだろうか。ドラゴンを見たというのに、恐怖もなければ感動もない。
大きさにしたって、初めてアブソディラスを見たときのサイズと比べれば雲泥の差がある。
アブソディラスの本来のサイズなら、アレを乗せて歩けそうだしな。
『注意してくだせえ。奴は炎に強いんで、そっち系の魔法は全く効きやせんぜ』
チャックも未だ倒したことがないという守護者。さすがに緊張しているようだな。
だが――。
『ふん。これまでの俺様とは違うところを、たっぷり見せてやるぜ!』
自らを鼓舞するように吠えたチャックを先頭に、アンデッド軍団が駆け出す。
これまでとは違うって、以前と今と、何か違うのだろうか。
『チャックさん、張り切ってますね。以前は死の覚悟が必要だった守護者との戦いでしたが、今は死を恐れる必要がありませんから』
とタルタスが話す。
そう……だな。最初から死んでるんだもんな。
まぁそれがアンデッドの強みでもある。
スケルトンのカタカタという足音に気付いて、守護者たるレッドドラゴンが目を覚ました。
「水の精霊ウンディーネ。周囲を薄い霧で覆って」
ソディアは精霊を呼んだのか。
途端に白い霧が立ち込め始めるが、視界を奪うほどではない。
「ドラゴンのブレスを、これで少しは緩和させられるわ」
「なるほど。霧で炎の勢いを殺そうっていうのか」
じゃあ俺は――あれ?
俺は何をしよう。
レッドドラゴンは火への耐性が強いという。
俺が使える攻撃魔法は"火球《ファイア》"と"爆炎《フレイム》"。
どちらも火属性だ。
せ、生活魔法の"洗濯《ウォッシャー》"でもする?
今ならウンディーネ先生もいることだし、打ち放題かも?
近づいて行って、アンデッドの間からこっそちと。
「"洗濯《ウォッシャー》"っはい」
してみた。
霧が収束し、一本の水柱となってレッドドラゴンを――洗う。
うん、ダメだ。
『何をやっておるのじゃ、主よ』
「いや、水属性の魔法ならダメージも出るかなぁっと思って」
『生活魔法じゃぞ? 威力なんど期待するだけアホじゃわい』
そんなこと言われても、ほかに出来ることがないんだよ!
そうだ、こんな時こそアブソディラスの魔法講座!
『儂の同族というから期待したんじゃがのぉ』
「お、おいアブソディラス。火以外の魔法を――」
『ありゃあ知能の低い下位種じゃ。あんなのと同種扱いされとうないわぁ』
「いや、いいから魔法を教え――」
「レイジくん、前!」
てくれ――そう言おうとしたが、ソディアの声が遮る。
反射的に視線を前に向けると、そこには真っ赤な鱗が迫って……。
「――ジくん。レイジくん!?」
な、なにが起きた?
確かソディアの声で前を向いたら、レッドドラゴンの尻尾が目前にあって……。
もしかして俺、尾っぽで打たれたのか?
それにしてはどこも痛くない。
化け物じみた再生能力があるとはいえ、痛いものは痛い。
打撲系だと、傷が癒えても数分ほど痛みが残っていたりした。
だけど今はどこに痛くない。
「ねぇ、どうしちゃったのレイジくん?」
『どうしたのか、俺が知りたい。ドラゴンの攻撃で吹き飛ばされたのか、俺?』
どこか痛めているところはないか。そう思って自分の体を見てみる――と、なぜか透き通っている!?
え、俺……まさか僅か一発で死んだのか!?
いや待て。
そうすると、ソディアはいったい誰と話をしているんだ?
ハッとなって彼女を見るが、俺は何故かソディアを見下ろしている。
そして真下を覗くと、俺《・》がいる。
頭でも打っておかしくなったのだろうか。
何故俺は俺《・》を見下ろしているんだ?
ここはアブソディラスの定位置だっただろ?
じゃあ……アブソディラスは?
「かーっかっかっか! 下級種の分際で、この儂に挑もうとは」
「レ、レイジくん!?」
「片腹痛いわっ!」
俺の声で俺じゃない誰かがそう言うと、そのままレッドドラゴンに向かって走り出す、奴の尻尾を――掴む!?
「おおおぉぉぉぉっ!」
レッドドラゴンをぶん投げた俺――ではない誰かは、矢継ぎ早に魔法を唱える。
「"氷結の槍"、"氷結晶《コールドボルト》"。かーかっかっか。まだまだ行くぞいっ。ほれ、"氷結晶嵐《ダイヤモンド・ダスト》"」
氷の槍が奴を床に縫い付け、氷の石礫が奴の鱗を砕き、キラキラと輝く氷の結晶が奴の全身を凍らせる。
そして最後に、雄たけびを上げながら俺――ではない誰かは、凍った奴に拳を突き立て、氷ごとレッドドラゴンを砕いた。
圧倒的すぎる力を見せつけた俺――ではない誰かは、ドヤ顔でふんぞり返る。
「かーっかっかっか。どうじゃ、参ったか!」
あの笑い方。
あの口調。
まさか――。
『アブソディラスかーっ!』
ダンプカーほどのドラゴンが、確かに玉座の前でとぐろを巻くような感じで眠っていた。
アブソディラスを見慣れてしまっているからだろうか。ドラゴンを見たというのに、恐怖もなければ感動もない。
大きさにしたって、初めてアブソディラスを見たときのサイズと比べれば雲泥の差がある。
アブソディラスの本来のサイズなら、アレを乗せて歩けそうだしな。
『注意してくだせえ。奴は炎に強いんで、そっち系の魔法は全く効きやせんぜ』
チャックも未だ倒したことがないという守護者。さすがに緊張しているようだな。
だが――。
『ふん。これまでの俺様とは違うところを、たっぷり見せてやるぜ!』
自らを鼓舞するように吠えたチャックを先頭に、アンデッド軍団が駆け出す。
これまでとは違うって、以前と今と、何か違うのだろうか。
『チャックさん、張り切ってますね。以前は死の覚悟が必要だった守護者との戦いでしたが、今は死を恐れる必要がありませんから』
とタルタスが話す。
そう……だな。最初から死んでるんだもんな。
まぁそれがアンデッドの強みでもある。
スケルトンのカタカタという足音に気付いて、守護者たるレッドドラゴンが目を覚ました。
「水の精霊ウンディーネ。周囲を薄い霧で覆って」
ソディアは精霊を呼んだのか。
途端に白い霧が立ち込め始めるが、視界を奪うほどではない。
「ドラゴンのブレスを、これで少しは緩和させられるわ」
「なるほど。霧で炎の勢いを殺そうっていうのか」
じゃあ俺は――あれ?
俺は何をしよう。
レッドドラゴンは火への耐性が強いという。
俺が使える攻撃魔法は"火球《ファイア》"と"爆炎《フレイム》"。
どちらも火属性だ。
せ、生活魔法の"洗濯《ウォッシャー》"でもする?
今ならウンディーネ先生もいることだし、打ち放題かも?
近づいて行って、アンデッドの間からこっそちと。
「"洗濯《ウォッシャー》"っはい」
してみた。
霧が収束し、一本の水柱となってレッドドラゴンを――洗う。
うん、ダメだ。
『何をやっておるのじゃ、主よ』
「いや、水属性の魔法ならダメージも出るかなぁっと思って」
『生活魔法じゃぞ? 威力なんど期待するだけアホじゃわい』
そんなこと言われても、ほかに出来ることがないんだよ!
そうだ、こんな時こそアブソディラスの魔法講座!
『儂の同族というから期待したんじゃがのぉ』
「お、おいアブソディラス。火以外の魔法を――」
『ありゃあ知能の低い下位種じゃ。あんなのと同種扱いされとうないわぁ』
「いや、いいから魔法を教え――」
「レイジくん、前!」
てくれ――そう言おうとしたが、ソディアの声が遮る。
反射的に視線を前に向けると、そこには真っ赤な鱗が迫って……。
「――ジくん。レイジくん!?」
な、なにが起きた?
確かソディアの声で前を向いたら、レッドドラゴンの尻尾が目前にあって……。
もしかして俺、尾っぽで打たれたのか?
それにしてはどこも痛くない。
化け物じみた再生能力があるとはいえ、痛いものは痛い。
打撲系だと、傷が癒えても数分ほど痛みが残っていたりした。
だけど今はどこに痛くない。
「ねぇ、どうしちゃったのレイジくん?」
『どうしたのか、俺が知りたい。ドラゴンの攻撃で吹き飛ばされたのか、俺?』
どこか痛めているところはないか。そう思って自分の体を見てみる――と、なぜか透き通っている!?
え、俺……まさか僅か一発で死んだのか!?
いや待て。
そうすると、ソディアはいったい誰と話をしているんだ?
ハッとなって彼女を見るが、俺は何故かソディアを見下ろしている。
そして真下を覗くと、俺《・》がいる。
頭でも打っておかしくなったのだろうか。
何故俺は俺《・》を見下ろしているんだ?
ここはアブソディラスの定位置だっただろ?
じゃあ……アブソディラスは?
「かーっかっかっか! 下級種の分際で、この儂に挑もうとは」
「レ、レイジくん!?」
「片腹痛いわっ!」
俺の声で俺じゃない誰かがそう言うと、そのままレッドドラゴンに向かって走り出す、奴の尻尾を――掴む!?
「おおおぉぉぉぉっ!」
レッドドラゴンをぶん投げた俺――ではない誰かは、矢継ぎ早に魔法を唱える。
「"氷結の槍"、"氷結晶《コールドボルト》"。かーかっかっか。まだまだ行くぞいっ。ほれ、"氷結晶嵐《ダイヤモンド・ダスト》"」
氷の槍が奴を床に縫い付け、氷の石礫が奴の鱗を砕き、キラキラと輝く氷の結晶が奴の全身を凍らせる。
そして最後に、雄たけびを上げながら俺――ではない誰かは、凍った奴に拳を突き立て、氷ごとレッドドラゴンを砕いた。
圧倒的すぎる力を見せつけた俺――ではない誰かは、ドヤ顔でふんぞり返る。
「かーっかっかっか。どうじゃ、参ったか!」
あの笑い方。
あの口調。
まさか――。
『アブソディラスかーっ!』
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