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人が来る。
そう聞いて私は慌ててカーテンの裏へ。
『魔法で王女様の気配を消しますぅ。でも動いたり声を出したりすると、効果が切れてしまいますから、気を付けてくださいですぅ』
私は声を出さないよう、頷いて応える。
カルネさんの魔法が完成し、私の体を一瞬だけ青白い膜のようなものが包んだ。
ほぼそれと同時に部屋の扉が開く。
カーテンの裏なので誰が入って来たのかわかりませんが、足音が二種類。二人、でしょうか?
どうか、早く出て行ってくれますように。
それと、ペンダントはそのままでお願いします。
そう祈りながらカーテン裏で息を飲む。
「アリアン王女の件は失敗だった。まさか通りすがりの冒険者に救出されるとはな」
私の件?
え、どういうことですの?
「護衛に着けた暗殺者《アサッシン》どもも情けない。たった三人にやられるとはな」
「そのように愚痴られて大丈夫ですか? あの者たちを寄こしたのは、ヴァン様ですよ?」
「ふん。そうだったな。これは失言。報告するなよ?」
「ふふ、わかっていますとも」
まさ……か。そんな……。
今彼らが話しているのは、私が誘拐された件のお話。
では、彼らが私を誘拐した犯人ということに?
ここはニライナからの使者にあてがわれた部屋ですわ。
それにこの声は、先ほど謁見の間でも聞きました。キャスバルのペンダントを持って怒鳴り込んできた方の声。
確かニライナの外交官だったはずですわ。
もうひとりのこの声……まさか。
「で、王女のほうはどうするのだ?」
「えぇ、今夜のうちにでも。最後に恋人同士、ご対面させて差し上げようと思いましてね。その後で遺体をそれぞれ捨てる手はずです」
い、遺体!?
キャスバルの遺体を捨てるというの!?
『王女様、じっとしててくださいですぅ』
っく。
今すぐ出て行って、犯人が誰なのか知りたい。
そして犯人を私がこの手で――。
「誰だ!?」
はっ。見つかった!?
「誰かそこに隠れているのか」
こ、こっちへ来る!?
隣では静かにというように、幽霊さんのひとりが口に手を当てて私を見ているし。
こ、このままじっとしていればよいのですか?
足音が一歩近づくたびに、心臓が飛び出しそうになる。
そしてついにカーテンが開けられ――。
「ん? 誰もいない、か……いや、猫か?」
え?
ね、こ?
見ると私の目の前にはしっかりとカーテンが。
もしや、隣のカーテン?
「猫ちゃん、可愛いにゃんね~」
え……猫、ちゃん?
『フニャー』
「ふふ。デレストマ様、相変わらず猫がお好きですね」
「はっ。だ、誰にも言うなよ」
「えぇ、言いませんとも。猫がお好きで、しかし猫からは嫌われている、などとはね」
「っく。えぇい、さっさと王女を連れていけっ」
「はいはい。それではアリアン姫をキャスバル王子に会わせて差し上げますかね」
「私も謁見の間へと戻ろう。明け方にはまず、王子のご遺体をお濠に投げ込むぞ」
「えぇ。その後で姫も……」
二人が部屋から出ていくまでの、そんの数十秒間。
私は両手で口を押え、嗚咽が漏れるのを堪えた。
まさか……まさか……。
私を誘拐し、キャスバル王子を亡き者にした悪党一味に……まさかジャスランがいたなんて。
私のことを「姫」と呼ぶのは彼ひとり。
聞き間違うはずがない。
私の傍にいて、いつでも私を守っていた彼の声を。
いいえ。
私が誘拐されたあの時、ジャスランはいなかった。
ドレスティンへと到着早々、彼は西北の国境に安全を確認すると言って数名の部下とともに出て行ったもの。
私が救出され、ドレスティンへと向かう時も、ドレスティンから王都に向けて出発した時も、随分とゆっくりとした移動だったのも、すべてジャスランの指示でしたわ。
私たちが王都へ到着するのを、わざと遅らせるために?
『アリアン王女、奴らが出て行ったわ』
「彼らが――」
全ての犯人――そう言葉にするよりも前に、幽霊の方は頷く。
あぁ、やはりジャスランが。
許せません。
私を裏切るなんて。
いえ、もしかすると彼はもともと間者であったのかも?
ニライナの?
いえ、それだとキャスバルを暗殺する意味がありません。
では……。
『王女様、いまのうちにペンダントを』
「そ、そうでしたわね」
ペンダントは机の上に無造作に置かれたまま。
ほっと安堵して急いでそれを手にすると、再びバルコニーへ。
「はっ」
小さく気合を込めた声とともに飛び降り着地すると、三人の幽霊さんの合図を待って駆け出す。
レイジさまたちの待つ部屋へと向かって。
全ては彼から――そしてキャスバルの口から真相を聞くために。
そう聞いて私は慌ててカーテンの裏へ。
『魔法で王女様の気配を消しますぅ。でも動いたり声を出したりすると、効果が切れてしまいますから、気を付けてくださいですぅ』
私は声を出さないよう、頷いて応える。
カルネさんの魔法が完成し、私の体を一瞬だけ青白い膜のようなものが包んだ。
ほぼそれと同時に部屋の扉が開く。
カーテンの裏なので誰が入って来たのかわかりませんが、足音が二種類。二人、でしょうか?
どうか、早く出て行ってくれますように。
それと、ペンダントはそのままでお願いします。
そう祈りながらカーテン裏で息を飲む。
「アリアン王女の件は失敗だった。まさか通りすがりの冒険者に救出されるとはな」
私の件?
え、どういうことですの?
「護衛に着けた暗殺者《アサッシン》どもも情けない。たった三人にやられるとはな」
「そのように愚痴られて大丈夫ですか? あの者たちを寄こしたのは、ヴァン様ですよ?」
「ふん。そうだったな。これは失言。報告するなよ?」
「ふふ、わかっていますとも」
まさ……か。そんな……。
今彼らが話しているのは、私が誘拐された件のお話。
では、彼らが私を誘拐した犯人ということに?
ここはニライナからの使者にあてがわれた部屋ですわ。
それにこの声は、先ほど謁見の間でも聞きました。キャスバルのペンダントを持って怒鳴り込んできた方の声。
確かニライナの外交官だったはずですわ。
もうひとりのこの声……まさか。
「で、王女のほうはどうするのだ?」
「えぇ、今夜のうちにでも。最後に恋人同士、ご対面させて差し上げようと思いましてね。その後で遺体をそれぞれ捨てる手はずです」
い、遺体!?
キャスバルの遺体を捨てるというの!?
『王女様、じっとしててくださいですぅ』
っく。
今すぐ出て行って、犯人が誰なのか知りたい。
そして犯人を私がこの手で――。
「誰だ!?」
はっ。見つかった!?
「誰かそこに隠れているのか」
こ、こっちへ来る!?
隣では静かにというように、幽霊さんのひとりが口に手を当てて私を見ているし。
こ、このままじっとしていればよいのですか?
足音が一歩近づくたびに、心臓が飛び出しそうになる。
そしてついにカーテンが開けられ――。
「ん? 誰もいない、か……いや、猫か?」
え?
ね、こ?
見ると私の目の前にはしっかりとカーテンが。
もしや、隣のカーテン?
「猫ちゃん、可愛いにゃんね~」
え……猫、ちゃん?
『フニャー』
「ふふ。デレストマ様、相変わらず猫がお好きですね」
「はっ。だ、誰にも言うなよ」
「えぇ、言いませんとも。猫がお好きで、しかし猫からは嫌われている、などとはね」
「っく。えぇい、さっさと王女を連れていけっ」
「はいはい。それではアリアン姫をキャスバル王子に会わせて差し上げますかね」
「私も謁見の間へと戻ろう。明け方にはまず、王子のご遺体をお濠に投げ込むぞ」
「えぇ。その後で姫も……」
二人が部屋から出ていくまでの、そんの数十秒間。
私は両手で口を押え、嗚咽が漏れるのを堪えた。
まさか……まさか……。
私を誘拐し、キャスバル王子を亡き者にした悪党一味に……まさかジャスランがいたなんて。
私のことを「姫」と呼ぶのは彼ひとり。
聞き間違うはずがない。
私の傍にいて、いつでも私を守っていた彼の声を。
いいえ。
私が誘拐されたあの時、ジャスランはいなかった。
ドレスティンへと到着早々、彼は西北の国境に安全を確認すると言って数名の部下とともに出て行ったもの。
私が救出され、ドレスティンへと向かう時も、ドレスティンから王都に向けて出発した時も、随分とゆっくりとした移動だったのも、すべてジャスランの指示でしたわ。
私たちが王都へ到着するのを、わざと遅らせるために?
『アリアン王女、奴らが出て行ったわ』
「彼らが――」
全ての犯人――そう言葉にするよりも前に、幽霊の方は頷く。
あぁ、やはりジャスランが。
許せません。
私を裏切るなんて。
いえ、もしかすると彼はもともと間者であったのかも?
ニライナの?
いえ、それだとキャスバルを暗殺する意味がありません。
では……。
『王女様、いまのうちにペンダントを』
「そ、そうでしたわね」
ペンダントは机の上に無造作に置かれたまま。
ほっと安堵して急いでそれを手にすると、再びバルコニーへ。
「はっ」
小さく気合を込めた声とともに飛び降り着地すると、三人の幽霊さんの合図を待って駆け出す。
レイジさまたちの待つ部屋へと向かって。
全ては彼から――そしてキャスバルの口から真相を聞くために。
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