異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~

夢・風魔

文字の大きさ
3 / 30

3話

しおりを挟む
「なっ、なんだこれ。奴らの攻撃か!?」

 慌てて避けると、黒い球体はブォンっと鳴って消えた。
 ふ、ふぅ。なんとか躱せたな。
 う、今のでなんか疲れた。ちょっと休憩しよう。

 下を警戒しつつ、朝食の準備をする。
 今日はキャベツも一緒に挟んで焼こう。

「あっ。俺のウィンナー!」

 ぽろっと落ちたウィンナーは、そのまま転がって木の下へ。

『ギュ!』
『ギュギューッ!!』
『ギィーッ、ギギュ』

 え、なにこれ怖い。
 一本のウィンナーを巡って、兎が殴り合いを始めたぞ。
 人参には見向きもしなかったくせに、ウィンナーは好物かよ!
 つまり肉食ってことだよな!

 どうしよう。どうしよう。
 と、とにかく食べよう。
 腹が減ってたらまともに考えることもできやしない。
 落ち着くためにも──

「ふぅ、食った食った。贅沢言えばウィンナー以外の肉もやっぱり欲しかったな」

 腹も満たされたし、片付けも終わったし、次は兎だ。
 あぁ、また増えてるよ。
 なんとかして奴らを追い払いたいけど、武器になりそうなのはパン切包丁と火ぐらいか。

 そのうち諦めてくれないかなと様子を見続けて、更に一日が経過した。
 未だに兎モンスターは木の下にいる。しかも夜の間に数が増えて、倍近くになっていた。
 こうなったら強行突破するしかないか?

「無理……だよなぁ。兎にしては大きいし、狂暴だし。お?」

 兎が一匹、その角を使って巨木に突進してきた。
 さすがに大人数十人が手を繋いでやっと届くぐらいの太い幹だ。ビクともしない。
 けど──

「おいおい、だからって協力して突進してくることはないだろっ」
『ギギギューッ』

 何十匹が一斉に頭突きをすれば、さすがに太いこの木も揺れる。
 
「おい止めろ、止めろって! あぁくそ! こんな所で死んでたまるかっ。
 せっかく異世界に来たなら、冒険ぐらいやらせろよっ。なにがスキルなしだ! ふざけるな!
 なしなら、あっちも無し・・にしろよ!」

 ブォンっと、また電子音のようなものが聞こえ、黒い球体が目の前に浮かぶ。
 兎の攻撃!?

 ──いや、違う?
 ただ浮かんでいるだけだ。

 そういえばさっきも、俺が兎に向かって怒鳴った時に出て来たな。
 てっきり攻撃だと思ったけど、もしかしてこれ……

「俺か?」

 スキルはないんじゃなかったのか。
 けどそうしたらコレはいったい何だ?

 ユニークスキル:無

 無し……ん?
 普通は「なし」なら「無し」って書かないか?
 んー、でも有無の確認なら「無」でもありだよな。

「これが実は『なし』ではなくって、""だとした──ほわっ!?」

 黒い球体がまた出た!
 ぐっ、なんか眩暈がする。さっきもあの球体が出た後、体がだるくなったし……。
 
「こ、これがスキルなら……どんな効果があるのか……確かめ、なきゃ……」

 無で現れるスキル。無属性攻撃とか、そういうスキルだろうか。
 これを奴らにぶつけたり出来れば──消えた!?

『ギギュウーッ』
『ギェッ』

 いや違う。下に向かって飛んで行ったんだ。
 枝から顔を出して下を覗くと、血を流して倒れた兎が二匹いた。
 どっちも体に穴が空いているようで、ピクピクと痙攣しているのが見える。

 無……無うぅぅぅぅぅ!?

「も、もう一発──"無"」

 ブォンっと音を立てて黒い球体が現れる。ピンポン玉サイズのそれを、今度は指先で触れるようにして手を伸ばした。
 すると球体はすぅっと指先に吸い寄せられるようにしてくっつく。
 何も起きない。ただ倦怠感が半端ない。

「は、はは。つまりゲームっぽく考えれば、MPを消費して発動しているからってことだろうな」

 こんなに疲れるものなのか、スキルって。
 とにかく確認だ。これを兎にぶつけて──

「食らえっ」

 指先をくいっとすれば、それに合わせて球体が飛ぶ。
 群がっていた兎どもの一匹にそれが当たる。いや、当たったと言うより、球体が触れた場所がそのまま消滅!?
 
「エ、エグい……それに……もう、ダ、メ……」

 MP量が少ないのか、それとも消費量が多いのか。
 とにかく意識が……





「はぁっ!? 俺寝てたっ、寝て──」

 寝ている間に何かが巨木を登って……痕跡は無し。というか俺無事だし。
 木の下は?

「兎……いなくなってら」

 穴が空いた兎もいない。血痕は残っているけど、死体はない。
 なら生きているのかな。

「ん? なんか光ってるな。なんだろう」

 血痕の残った地面に、何か光るものが見えた。
 気になるけど、ここから下りて調べる気にもならない。
 
「そういやどのくらい意識失っていたんだ? スマホ、スマホ。一時半か」

 気を失ったのは陽が昇ってすぐだった。朝食すらまだな時間、確か六時過ぎだったよな。

 バッテリーが少なくなってるし、充電しておこう。
 防災用の懐中電灯と繋いでハンドルをぐるぐる回す。
 そうしているとお腹が空いて来たので、昼食にした。

 倦怠感……無くなってるな。
 休むとMPは回復するのだろうか。

 そういやスキルって、あの水晶玉以外の方法で見れないのかな。
 ステータスは?

 ステータスオープン……でいいのだろうか。
 けどちょっと恥ずかしいぞ、それ。

 などと思っていると、「キャァーッ」という女性の悲鳴が聞こえてきた。
 今のは人の声か?
 意外と近い。どうする?

 立ち上がって辺りを見渡すと、巨木の隙間から人影が二つ見えた。
 
「人だ! おーいっ」

 呼んでみたが、どうやらそれどころじゃないらしい。
 
 ここは異世界だ。
 魔王もいれば兎のモンスターやスライムだっている。

 なら──

 俺の視線の先に、巨大な蜥蜴が姿を現す。

「ドラゴンがいたっておかしくはない……」


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

キャンピングカーで走ってるだけで異世界が平和になるそうです~万物生成系チートスキルを添えて~

サメのおでこ
ファンタジー
手違いだったのだ。もしくは事故。 ヒトと魔族が今日もドンパチやっている世界。行方不明の勇者を捜す使命を帯びて……訂正、押しつけられて召喚された俺は、スキル≪物質変換≫の使い手だ。 木を鉄に、紙を鋼に、雪をオムライスに――あらゆる物質を望むがままに変換してのけるこのスキルは、しかし何故か召喚師から「役立たずのド三流」と罵られる。その挙げ句、人界の果てへと魔法で追放される有り様。 そんな俺は、≪物質変換≫でもって生き延びるための武器を生み出そうとして――キャンピングカーを創ってしまう。 もう一度言う。 手違いだったのだ。もしくは事故。 出来てしまったキャンピングカーで、渋々出発する俺。だが、実はこの平和なクルマには俺自身も知らない途方もない力が隠されていた! そんな俺とキャンピングカーに、ある願いを託す人々が現れて―― ※本作は他サイトでも掲載しています

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します

名無し
ファンタジー
 毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。

【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜

あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」 貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。 しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった! 失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する! 辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。 これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!

アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~

うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」  これしかないと思った!   自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。  奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。  得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。  直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。  このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。  そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。  アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。  助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

俺を凡の生産職だからと追放したS級パーティ、魔王が滅んで需要激減したけど大丈夫そ?〜誰でもダンジョン時代にクラフトスキルがバカ売れしてます~

風見 源一郎
ファンタジー
勇者が魔王を倒したことにより、強力な魔物が消滅。ダンジョン踏破の難易度が下がり、強力な武具さえあれば、誰でも魔石集めをしながら最奥のアイテムを取りに行けるようになった。かつてのS級パーティたちも護衛としての需要はあるもの、単価が高すぎて雇ってもらえず、値下げ合戦をせざるを得ない。そんな中、特殊能力や強い魔力を帯びた武具を作り出せる主人公のクラフトスキルは、誰からも求められるようになった。その後勇者がどうなったのかって? さぁ…

無能な勇者はいらないと辺境へ追放されたのでチートアイテム【ミストルティン】を使って辺境をゆるりと開拓しようと思います

長尾 隆生
ファンタジー
仕事帰りに怪しげな占い師に『この先不幸に見舞われるが、これを持っていれば幸せになれる』と、小枝を500円で押し売りされた直後、異世界へ召喚されてしまうリュウジ。 しかし勇者として召喚されたのに、彼にはチート能力も何もないことが鑑定によって判明する。 途端に手のひらを返され『無能勇者』というレッテルを貼られずさんな扱いを受けた上に、一方的にリュウジは凶悪な魔物が住む地へ追放されてしまう。 しかしリュウジは知る。あの胡散臭い占い師に押し売りされた小枝が【ミストルティン】という様々なアイテムを吸収し、その力を自由自在に振るうことが可能で、更に経験を積めばレベルアップしてさらなる強力な能力を手に入れることが出来るチートアイテムだったことに。 「ミストルティン。アブソープション!」 『了解しましたマスター。レベルアップして新しいスキルを覚えました』 「やった! これでまた便利になるな」   これはワンコインで押し売りされた小枝を手に異世界へ突然召喚され無能とレッテルを貼られた男が幸せを掴む物語。 ~ワンコインで買った万能アイテムで幸せな人生を目指します~

処理中です...