異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~

夢・風魔

文字の大きさ
9 / 30

9話

しおりを挟む
「これが……ツリーハウス・・・・・・

 朝食後に見せて貰った巨木の
 空洞があって、そこにはテーブルや椅子もあれば、階段まであった。
 くり抜いて作られたんじゃない。壁を見ればすぐに分かる。

「なんで、どうなっているんだ? 何十本もの木は、密着して生えてるってこと?」
「違うよぉ。これぜーんぶ、一本のツリーハウスなの」
「いや、ツリーハウスって、普通は木の上に建てた家のことだろ?」
「え? そうなの?」

 と、ルナは後ろで落ち込み気味の女性エルフに尋ねる。
 彼女が落ち込んでいるのは、食パンが無くなったからホットサンドがもう作れない。そう話したからだ。
 尋ねて来た時も、俺の顔を見て「ほっとさんどの異世界人」と言っていたし。
 なんて覚えられ方だ。

「ほっとさんどの異世界人さんが住んでいた世界ではどうだか知らないけれど、ここではこの木をツリーハウスと呼ぶの。ねぇ、本当にもう無理なの?」
「小麦を栽培してください。そうしたらまた作れますから」
「まぁ!? じゃあ長老様にそうお話ししましょうっ」
「昨夜話はしました。そういう方向で行くみたいですよ」

 途端に元気になるエルフ女性。
 ここは彼女の一家が住む家で、ルンルン気分で中を案内してくれた。

「夫は森に薬草を摘みに行っているの。息子も今は他の子と遊びに行っているから気兼ねなく見ていってね」
「ど、どうも。それにしても、なんで木がこんな形に?」
「ツリーハウスだからよ。この木は私たちエルフと共存しているの。私たちが暮らしやすいように、自ら空洞を作るようにして成長するのよ」

 理解しがたいけれど、異世界なんだからと無理やり納得するしかない。
 階段の支柱になっているのも木の幹で、床板は別に取り付けたものらしい。
 ところどころ壁──幹に穴があって、それが窓の役目をしていた。

「じゃあ里の巨木は全部?」
「ううん、違うのー。大きな木が全部ツリーハウスって訳じゃないんだよぉ」
「これは精霊が宿った木。意図的に宿らせたんじゃなく、精霊が好んで宿ったものよ。フンッ」

 ツンっとしながらも説明してくれるネフィティア。
 精霊が宿って、エルフと共存する巨木が『ツリーハウス』となるらしい。

 うぅん……もう見たまんまを理解するしかないな。

「テント暮らしもいいけど、ツリーハウスも楽しそうだな」
「フンッ、残念だったわね。空きツリーはないのよ。ボクたちだってツリー待ちしているんだから」
「まさかの順番待ち……」
「ルナたちもツリーハウスが欲しいもん」

 じゃあ俺はやっぱりテントか。ま、いいや。

「あら、じゃああのツリーハウスがいいんじゃない? ほら、大岩の隣の少し焦げちゃって、へそ曲げしちゃったアレ」

 焦げた?
 へそ曲がり?





「確かに焦げてるな」

 ルナとネフィティアに連れて来て貰ったのは、高さ20メートル弱の準巨木だった。
 上から見た時に、視力検査をするときに使うCマークに似た形になるんだろう。

「筒状に育っているんだな。この入口になっている所が焦げているけど、燃えたのか?」
「雷よ。空洞を形成する段階で雷が落ちてしまって、焦げて削れた部分が再生しないのよ」
「だからねぇ、天井も出来なかったのぉ」

 ツリーハウスの内側から上を見上げると、確かに青空がよく見える。
 木の枝が揺れているから風が吹いているんだろうけど、中までは届かないようだ。

「あれ? ここってテントを張るのに最適な場所じゃないか」
「使うなら長老様に報告しなさい。べ、別にボクが行ってやってもいいけどねっ」
「いやぁ、それはネフィティアに悪いよ。ところで大岩って?」
「イディノアさんが言ってた岩のことね。こっちこっちぃ」

 ルナに手を引かれて外に出て、次はぐるりと裏手に回り込む。
 なるほど、大きな岩だ。
 何かの拍子に岩が転がり落ちてくるような、そういう状況だったらと不安があったけど大丈夫そうだ。
 岩は大部分が地面に埋まっているみたいだけど、それでも見えているだけでも高さが5メートル以上はありそう。

「これなら転がったりしないだろうし、安心かな」
「なにあんた、大岩が転がって来て木を押し倒さないかとか考えてたわけ?」
「そりゃあ考えるさ。せっかく住み始めたのに、直ぐぺしゃんことか嫌だろ?」
「……意外とちゃんと考えてるのね。──べ、別に褒めてないわよっ」
「いや、何も言ってないし。まぁいいや。長老に報告すればいいんだよな」

 昨夜の円形小屋へと行くと、五人衆のひとりだけがそこにいた。
 
「へそ曲がりのツリーハウスに住む? それは構わぬが、天井はないぞ。良いのか?」
「えぇ。テントを張って暮らそうと思っているので、天井は無くて結構です。幹が風を防いでくれるし、テント暮らしには最適な場所ですよ」
「テント暮らし? ほぉ、それは面白い。異世界のテントがどんなものか、見てみたいな」

 ・
 ・
 ・

「いや、だからってこの人数はいかがなものかと」

 テントの組み立てから見たいと言う長老は、歩くたびに暇を持て余しているエルフに声を掛けて回った。
 その結果、直径7、8メートルの準ツリーハウスの中には、三十人ぐらいのエルフが集まってしまった。

「なんだこの素材は? つるんとしているな」
「これが支柱になるのかしら? 鉄……にしてはぐにゃって曲がるわよ!?」
「あの、ちょっと……全部種類ごとに分けて置いてるんだから、あちこち持って行かないでくださいよっ」
「テントに網が付いているぞ。これはいったいなんだい?」

 あぁぁーっ!
 ぜんっぜん進まねぇーっ。

 キャンプ本にある「初心者でも安心、組み立て解説!」を見ながらやってるのに、エルフが邪魔をする!

「俺だってこんなテント、初めて組み立てるんだから邪魔しないでくれよ!」
「ほぉほぉ、これはなかなか分かりやすい」
「あ、おい。本持っていかないでくれよ」
「これがこう?」
「待てまて、順番通りにやるんだ。ほら見ろ。この絵の順番でやるんだろう。えぇっと、ここにはなんて書いてある?」

 ん?
 言葉は通じているけど、文字は読めないのか。

「えぇっと、ここは──1、テントのフレームを立てる。フレームってのはこれだな」
「よし、出来たぞ」
「はぁ!?」

 五人ぐらいがフレームをサクっと組み立ててしまった。

「「次っ」」

 他のエルフたちが、自分の出番はまだかと言わんばかりに待機。
 結局、俺は本に書いてある説明を読んだだけで、テントは完成してしまった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。 ※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。 詳細は近況ボードをご覧ください。

【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜

あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」 貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。 しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった! 失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する! 辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。 これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!

最強付与術師の成長革命 追放元パーティから魔力回収して自由に暮らします。え、勇者降ろされた? 知らんがな

月ノ@最強付与術師の成長革命/発売中
ファンタジー
旧題:最強付与術師の成長革命~レベルの無い世界で俺だけレベルアップ!あ、追放元パーティーから魔力回収しますね?え?勇者降ろされた?知らんがな ・成長チート特盛の追放ざまぁファンタジー! 【ファンタジー小説大賞の投票お待ちしております!】  付与術のアレンはある日「お前だけ成長が遅い」と追放されてしまう。  だが、仲間たちが成長していたのは、ほかならぬアレンのおかげだったことに、まだ誰も気づいていない。  なんとアレンの付与術は世界で唯一の《永久持続バフ》だったのだ!  《永久持続バフ》によってステータス強化付与がスタックすることに気づいたアレンは、それを利用して無限の魔力を手に入れる。  そして莫大な魔力を利用して、付与術を研究したアレンは【レベル付与】の能力に目覚める!  ステータス無限付与とレベルシステムによる最強チートの組み合わせで、アレンは無制限に強くなり、規格外の存在に成り上がる!  一方でアレンを追放したナメップは、大事な勇者就任式典でへまをして、王様に大恥をかかせてしまう大失態!  彼はアレンの能力を無能だと決めつけ、なにも努力しないで戦いを舐めきっていた。  アレンの努力が報われる一方で、ナメップはそのツケを払わされるはめになる。  アレンを追放したことによってすべてを失った元パーティは、次第に空中分解していくことになる。 カクヨムにも掲載 なろう 日間2位 月間6位 なろうブクマ6500 カクヨム3000 ★最強付与術師の成長革命~レベルの概念が無い世界で俺だけレベルが上がります。知らずに永久バフ掛けてたけど、魔力が必要になったので追放した元パーティーから回収しますね。えっ?勇者降ろされた?知らんがな…

キャンピングカーで走ってるだけで異世界が平和になるそうです~万物生成系チートスキルを添えて~

サメのおでこ
ファンタジー
手違いだったのだ。もしくは事故。 ヒトと魔族が今日もドンパチやっている世界。行方不明の勇者を捜す使命を帯びて……訂正、押しつけられて召喚された俺は、スキル≪物質変換≫の使い手だ。 木を鉄に、紙を鋼に、雪をオムライスに――あらゆる物質を望むがままに変換してのけるこのスキルは、しかし何故か召喚師から「役立たずのド三流」と罵られる。その挙げ句、人界の果てへと魔法で追放される有り様。 そんな俺は、≪物質変換≫でもって生き延びるための武器を生み出そうとして――キャンピングカーを創ってしまう。 もう一度言う。 手違いだったのだ。もしくは事故。 出来てしまったキャンピングカーで、渋々出発する俺。だが、実はこの平和なクルマには俺自身も知らない途方もない力が隠されていた! そんな俺とキャンピングカーに、ある願いを託す人々が現れて―― ※本作は他サイトでも掲載しています

タブレット片手に異世界転移!〜元社畜、ダウンロード→インストールでチート強化しつつ温泉巡り始めます〜

夢・風魔
ファンタジー
一か月の平均残業時間130時間。残業代ゼロ。そんなブラック企業で働いていた葉月悠斗は、巨漢上司が眩暈を起こし倒れた所に居たため圧死した。 不真面目な天使のせいでデスルーラを繰り返すハメになった彼は、輪廻の女神によって1001回目にようやくまともな異世界転移を果たす。 その際、便利アイテムとしてタブレットを貰った。検索機能、収納機能を持ったタブレットで『ダウンロード』『インストール』で徐々に強化されていく悠斗。 彼を「勇者殿」と呼び慕うどうみても美少女な男装エルフと共に、彼は社畜時代に夢見た「温泉巡り」を異世界ですることにした。 異世界の温泉事情もあり、温泉地でいろいろな事件に巻き込まれつつも、彼は社畜時代には無かったポジティブ思考で事件を解決していく!? *小説家になろうでも公開しております。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します

名無し
ファンタジー
 毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。

収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?

木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。 追放される理由はよく分からなかった。 彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。 結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。 しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。 たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。 ケイトは彼らを失いたくなかった。 勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。 しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。 「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」 これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。

処理中です...