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15:火花散る

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「じゃあその子、ダンジョンモンスターなの?」
「いや、そういう訳でもなさそうで」

 俺が視線を向けると、トーカは踏ん反り返った。

「トーカはダンジョンの精霊です。ユニークスキル『フィールドダンジョン生成』の使用者の為に、ダンジョンの生成をサポートする役割の精霊です」
「って言うんだ。んで、とにかくスキルレベルを上げろってさ」
「スキルレベル3で、ようやく外部の人間を入れることが出来るのです。入れないとDPも増やせないのです!」
「DP……もしかして入って来た人たちを──」

 俺がそう言うと、トーカはドヤ顔で「殺して獲得するのです!」と言う。
 マジか……やっぱりこのスキル、使えない。

「他にもスキルレベルが上がれば、500DP貰えますよ」
「お、スキルレベルでもいいのか」
「ダンジョン内で人が死ねば、その人のレベルによって大量のDPが貰えます。例えばレベル200の方でしたら、2万ほ──」
「あー、あー、聞きたくない。俺はダンジョンマスターになって、人類の敵になるつもりはないからな」
「え、え、でも。ダンジョンマスターになれば、様々な特典が得られますよ!?」

 人殺しをして得られる特典なんて、物騒で受け取れません。

「はぁ、獲得したスキルを消去する方法はないのかなー」
「はわわわっ。あ、ああ、あ、そうです! DPは他にも、ダンジョン内に生息させたモンスターが繁殖することでも増えます」

 トーカが慌ててそう説明する。
 なんだよ。人を殺さなくても増やす方法がけっこうあるじゃん。

「生息……外から連れて来て中に入れるのかしら?」
「……マスター以外の方のご質問には、お答えできません」
「くっ」

 な、なんか険悪なムードだな。

「トーカ、モンスターはどうやってダンジョンの中に?」
「はい。モンスターの配置にもDPは必要なのですが、唯一レベル1スライムだけはDPを必要としません」
「つまりスライムを配置させて、あとは自然繁殖させてポイントを増やせってことでしょうね」

 と、ルーシェが言っても、トーカはぷいっとそっぽを向いてまた俺の後ろに隠れてしまった。
 しかし配置させたモンスターの使い道がなぁ……。

「モンスターを配置してやることと言えば?」
「はい! 侵入者をぶったお──えぇっと、侵入者のレベル上げを手伝うことですー?」

 言い直したなこいつ。

「あ、相手に怪我を負わせたりした程度でも、DPはすこーし貰えますからぁ」
「冒険者と戦わせる以外で使い道ってないのかよ」
「んー、あるかもね」

 そう言ったのはルーシェだ。

「食材になるモンスターや高級素材を落すモンスターばかりを配置すれば、立派な牧場だと思うけれど」
「なるほど。トーカ、モンスターを飼育した場合、出荷するのにその……大人しく俺に殺されてくれるのだろうか?」
「んー、無理ですねぇ。マスターは確かにダンジョンマスターですがぁ、モンスターを生み出すことが出来ても、命令に従わせることはできないのですぅ」
「だそうだ?」

 牧場も命懸けってことになるな。

 辺りを見渡し、ここに牧場のある光景を想像した。
 緑が生い茂るこの草原を拡張すれば、立派な牧場に出来そうだ。

 異世界に来て牧場主になる?
 まぁ、それも悪くないかも?

「この生成スキルは前にルーシェが言っていた、経験値配分設定の対象?」
「えぇ、そうよ。ステータス画面に経験値配分って項目があるはずよ。下の方ね」
「お勧めの配分設定は50:50ですぅ」
「ふふ。あんたはタクミのこと、まだ何も知らないんだから黙ってなさいよ」

 とルーシェが勝ち誇る。火花がバッチバチだな。
 まぁいいや、見てみよう。

 UIの左半分がステータス画面になっている。その下に『経験値配分』というボタンがあった。
 そこをタップすると新しく窓が開き、スキル名と、経験値を配分設定するのだろう項目が。

 パーセント設定だな。
 ん? これは……

「経験値設定が0%か100%にしか設定できないんだけど」
「そ、そんなことあり得ませんっ。マスター、優しくタップしてみてください」
「ふふ。タクミ、無駄よ。あなた経験値1しか貰えないんだもの。経験値は1以下には出来ないのよ」
「え?」

 驚いたのはトーカだ。その顔を見てルーシェはまた勝ち誇る。

 なるほど。俺の経験値は1しかないから、それで0%か100%にしか出来ないってことだな。
 これ、スキルのレベルも必要経験値1になってるのだろうか?

「んー、ちょっとレベルが上がるかどうか確認したいし、さっき中断していたレベルドレインお願いできるかい?」
「そう言えばまだだったわね。ん、じゃあタクミ……手、貸して」

 ルーシェに右手を差し出すと、彼女は掌に口づけをする。
 ちゅぅっという、ちょっと恥ずかしい音が聞こえる。
 隣ではトーカが青ざめた顔でじぃっとこちらを見つめていた。

「な、な、なな、ななな、何をしているのですかこの女は! 如何わしいですっ、如何わしいですぅ」
「違うっ。何も如何わしいことなんてしていないしされていない!」

 そんな俺とトーカのやり取りにもめげず、ルーシェはちゅーっと掌に吸い付いたままだ。
 いつもより吸い取り時間が長いようだけど、気のせいか?

「は、はは、早くマスターから離れるですぅ」
「んふぅ。もうなによトーカ。ただのレベルドレインじゃない。ね、タクミ?」
「え、あ、そう。ただのレベルドレインだ」
「それでも離れるですぅーっ!」
「ふふん。何をそんなにムキになっているのかしらぁ?」
「ぷぅーっ!!」

 もうね……仲良くしてくれないかなぁ。

「ん。レベル40貰ったけど、経験値の設定はちゃんとしてる?」
「スキル100%にした。ってことはベースレベルは上がらないってことだよな」
「そうね。タクミの場合、経験値は1しか入らないから、ベースかスキルか、どちらかしか上げられないわね」

 まぁそれでも一匹倒せばレベルが上がるんだし、いいか。
 ただ問題は、スキルのレベルアップに必要な経験値が1じゃかなった時だよなぁ。
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