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デリントン
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昼食はまだ終わってはいなかった。
だがルインに「食事は済んでいたのだな」――そう言われて仕方なく終わったことになってしまったデリントン一行。
「あいつおかしいですよデリントンさま」
「椅子無いのに、なんでこけないんだ」
「あれって魔法じゃないですか? ほら、空中浮遊の」
「馬鹿! それ上級魔法だぞお前っ。しかも神聖魔法じゃねーし!」
食べ足りなかった少年らは、苛立たしそうに言う。
聞いていたデリントンも唇を噛み、自分が取り巻きに指示してやらせた「椅子を引いてこけさせる大作戦」が失敗したことに腹を立てた。
失敗した取り巻きに対してではなく、倒れなかったルインに対して。
「気に入らない。気に入らないぞあいつ!」
ここへ来てまだ三日。
なのに彼の存在感は凄まじい。
まず――容姿端麗。
デリントンも容姿に関しては自信があった。
事実、彼がここへ来て半年のうちに、告白してきた少女、及び大人の女性の数は二桁に上る。
取り巻きの少年らが居るので女子は表立って寄り付きはしないが、彼らが居なくなればハーレム状態であった。
そう――『あった』とは、既に過去形なのだ。
黒髪に赤紫色のアメジストのように輝く瞳が印象的なルイン。瞳の色だけでなく、全てが整った容姿は女子受けがいい。
陰では『漆黒の王子様』などと呼ばれているほどだ。
男爵家の次男というのもあって女子らが目を輝かせ、飢えた獣のように熱いまなざしをルインに向けている。
尚、ルインの実家が貧乏貴族だとは誰も知らない。
貴族でもなければ、辺境のアルファート家がど貧乏など知らないのだ。
極めつけは時折見せる笑み。
その笑みはまるで天使とすら、女子の間では既に話題になっている。
心奪われぬ女子は誰一人として居なかった。
そして女性講師の司祭たちもだ。
彼の人とはズレた言動も、目立つ原因になっている。
そして――図々しい。
同じ貴族ではあるが、デリントンは自分の方が格上だと思っている。
裕福さでいえばその通りなのだが。
他の連中はみな、四人部屋の狭い中で生活を送っている。
だが自分は権力に物を言わせて貸切にした。にも拘わらず、ルインが突然同室になったのだ。
デリントンにはそれが許せなかった。
だから無視していたし、名前を聞かれても答えなかった。
なのにルインはいつの間にか自分のフルネームを知り、名前で呼ぶのだ。
イライラマックス。
更に――潜在能力。
ルインの聖属性レベルは3だと、最初の学びの時間に司祭から紹介されている。
それが女子の人気に拍車をかける原因でもあれば、デリントンの嫉妬に火を点けたのも事実。
デリントンですら、神殿で学ぶようになってようやく聖属性が開花している。
中には神殿で何年学ぼうと、聖属性が開花しない者だって居るのだ。
それをルインは、神殿へと来る前から属性を開花させており、しかも3もある。
十歳の子供で属性を開花させているだけでも、素晴らしい能力の持ち主だともてはやされる世界。
ルインが優遇されても仕方がないのだ。
だからこそデリントンにとって、彼の全てが目障りだった。
だから今日、男性講師の司祭に怒鳴られ、廊下に立たされた時には胸がスカっとした。
が――悔しいかな、彼の言った言葉こそが真実である事をデリントンは知っている。
ローリエ神殿では、女神は邪悪な三神を倒したとされるが、光の神の神殿では、彼こそが三神を――。そして知識神の神殿では――と、それぞれで偽りの神話を作り上げているのだ。
デリントンが学ぶ場所は、どの神殿でも良かった。
ただ豊穣の女神ローリエ神殿が、寄付金の額が一番安かっただけ。
ただそれだけだ。
なので彼は事前にそれぞれの神殿の経典を学んでいた。
だからすべてが嘘だと知っていた。
尤も、この事実を知る者は少なくはなく、触らぬ神になんとやらの心理で異を唱えないだけ。
「くっ……どうにかして奴を追い出してやるっ。おいお前。奴の上履きに押しピンを入れて来い」
「俺ですか?」
「おぉ、それいいな!」
画びょうを上履きへ。
典型的な虐めの方法だが、デリントンは唇を歪め笑みを浮かべる。
「さっそくやるぞ」
こうして取り巻きのひとりが備品室に置いてある画びょうを取って来た。
午後の授業は実技になる。
中庭へ出るため、外履きの靴へと履き替えるが、事業が終わればまた室内用の上履きに履き替える。
全員が外に出たタイミングで、ルインの上履きへ画びょうを忍ばせる計画だ。
さて、彼らの虐めは果たして成功するのか。
だがルインに「食事は済んでいたのだな」――そう言われて仕方なく終わったことになってしまったデリントン一行。
「あいつおかしいですよデリントンさま」
「椅子無いのに、なんでこけないんだ」
「あれって魔法じゃないですか? ほら、空中浮遊の」
「馬鹿! それ上級魔法だぞお前っ。しかも神聖魔法じゃねーし!」
食べ足りなかった少年らは、苛立たしそうに言う。
聞いていたデリントンも唇を噛み、自分が取り巻きに指示してやらせた「椅子を引いてこけさせる大作戦」が失敗したことに腹を立てた。
失敗した取り巻きに対してではなく、倒れなかったルインに対して。
「気に入らない。気に入らないぞあいつ!」
ここへ来てまだ三日。
なのに彼の存在感は凄まじい。
まず――容姿端麗。
デリントンも容姿に関しては自信があった。
事実、彼がここへ来て半年のうちに、告白してきた少女、及び大人の女性の数は二桁に上る。
取り巻きの少年らが居るので女子は表立って寄り付きはしないが、彼らが居なくなればハーレム状態であった。
そう――『あった』とは、既に過去形なのだ。
黒髪に赤紫色のアメジストのように輝く瞳が印象的なルイン。瞳の色だけでなく、全てが整った容姿は女子受けがいい。
陰では『漆黒の王子様』などと呼ばれているほどだ。
男爵家の次男というのもあって女子らが目を輝かせ、飢えた獣のように熱いまなざしをルインに向けている。
尚、ルインの実家が貧乏貴族だとは誰も知らない。
貴族でもなければ、辺境のアルファート家がど貧乏など知らないのだ。
極めつけは時折見せる笑み。
その笑みはまるで天使とすら、女子の間では既に話題になっている。
心奪われぬ女子は誰一人として居なかった。
そして女性講師の司祭たちもだ。
彼の人とはズレた言動も、目立つ原因になっている。
そして――図々しい。
同じ貴族ではあるが、デリントンは自分の方が格上だと思っている。
裕福さでいえばその通りなのだが。
他の連中はみな、四人部屋の狭い中で生活を送っている。
だが自分は権力に物を言わせて貸切にした。にも拘わらず、ルインが突然同室になったのだ。
デリントンにはそれが許せなかった。
だから無視していたし、名前を聞かれても答えなかった。
なのにルインはいつの間にか自分のフルネームを知り、名前で呼ぶのだ。
イライラマックス。
更に――潜在能力。
ルインの聖属性レベルは3だと、最初の学びの時間に司祭から紹介されている。
それが女子の人気に拍車をかける原因でもあれば、デリントンの嫉妬に火を点けたのも事実。
デリントンですら、神殿で学ぶようになってようやく聖属性が開花している。
中には神殿で何年学ぼうと、聖属性が開花しない者だって居るのだ。
それをルインは、神殿へと来る前から属性を開花させており、しかも3もある。
十歳の子供で属性を開花させているだけでも、素晴らしい能力の持ち主だともてはやされる世界。
ルインが優遇されても仕方がないのだ。
だからこそデリントンにとって、彼の全てが目障りだった。
だから今日、男性講師の司祭に怒鳴られ、廊下に立たされた時には胸がスカっとした。
が――悔しいかな、彼の言った言葉こそが真実である事をデリントンは知っている。
ローリエ神殿では、女神は邪悪な三神を倒したとされるが、光の神の神殿では、彼こそが三神を――。そして知識神の神殿では――と、それぞれで偽りの神話を作り上げているのだ。
デリントンが学ぶ場所は、どの神殿でも良かった。
ただ豊穣の女神ローリエ神殿が、寄付金の額が一番安かっただけ。
ただそれだけだ。
なので彼は事前にそれぞれの神殿の経典を学んでいた。
だからすべてが嘘だと知っていた。
尤も、この事実を知る者は少なくはなく、触らぬ神になんとやらの心理で異を唱えないだけ。
「くっ……どうにかして奴を追い出してやるっ。おいお前。奴の上履きに押しピンを入れて来い」
「俺ですか?」
「おぉ、それいいな!」
画びょうを上履きへ。
典型的な虐めの方法だが、デリントンは唇を歪め笑みを浮かべる。
「さっそくやるぞ」
こうして取り巻きのひとりが備品室に置いてある画びょうを取って来た。
午後の授業は実技になる。
中庭へ出るため、外履きの靴へと履き替えるが、事業が終わればまた室内用の上履きに履き替える。
全員が外に出たタイミングで、ルインの上履きへ画びょうを忍ばせる計画だ。
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