ワンパン無双の最強聖職者は、スローライフを夢見た最強魔王の転生者でした。

夢・風魔

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40元魔王は手見上げを持っていく。

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「という訳で旅に出ることになった」
「相変わらずお前さんが考えるスローライフというものは、どこかズレておるの」
「そうだろうか?」

 手土産に苺を持って大聖堂へとやって来た僕は、師匠のクリフドーと、今や聖女さまとしてこの国でも有名になったフィリアに挨拶をしにやって来た。
 まずはいつでも暇そうな師匠へ挨拶だ。
 
「世界を旅するというが、お前さん、金はどうする?」
「お金? やはり必要なのだろうか」

 そんな返答に師匠は大きなため息を吐き捨てる。

「当たり前じゃろうが。まさか無一文で旅に出ようとしたのか」
「いや、父上と兄上が餞別をくれた」

 母上からは花柄模様の財布を貰い、その中身を師匠に見せた。
 師匠は渋い顔をしている。これでは足りないのか。

「この金額だとそうじゃなぁ、一か月分と言ったところか」
「な……に?」

 い、一か月も働かずに暮らせる金を、父上と兄上はくれたというのか!?

「これでは世界中を旅などできぬだろう。やはりどこかで金銭を稼ぎながら――」
「父上と兄上に感謝せねば!」
「あ……あぁ、そ、そうじゃな。じゃが金が無くなったらどうする?」
「無くなったら……」
「また御父上や兄君にねだりに行くか?」

 いや、それはあり得ない。
 いくら領地が潤ってきたとはいえ、これから先も流民の受け入れで彼らの衣食住を当面は面倒みらねばならないのだ。
 それに作物の収穫量が増えれば、その分、国へ治める税金も増やされたと兄上が嘆いていた。
 一か月分のこのお金もギリギリの金額なのだろう。

 これから先は、旅に必要なお金は自分で稼がなくてはならない。
 幸い僕はその方法を知っている。

「師匠。世の中には馬鹿な悪党が多いものだ」
「そ、そうだな」
「奴らには賞金が賭けられていることも多い!」
「まさかお前さん……いや、何も言うまい。うん、もう好きにせい」

 我が前に立ちはだかる愚かなるものに、正義の鉄槌を下そうではないか。
 ふふふ。
 ふはははは。

「はーっはっはっはっはっは!」
「いいから早くフィリアの所へ行ってこい。暫く戻らないのだろう」
「週一ぐらいで顔を見せるつもりだが?」
「……神聖魔法と古代語魔法の両方を習得する者は、そう滅多におらんのだがな」

 複数形態の魔術を使う者を、賢者と呼ぶ。
 普通は古代語魔法と精霊魔法、錬金魔法の三つの中からづれか二つ、無いし三つ全部が使える者が賢者だ。
 神聖魔法はあなり含まれることは無い。相性が悪いだなんだの言われているが、僕に言わせれば努力が足りなかったのだろう。

 しかし僕は賢者――特に大賢者とかは嫌悪の対象でもある。
 僕を討とうとする勇者一行には、常に大賢者が存在していたからだ。
 だから僕は賢者などと呼ばれたくはない。

「僕は聖職者。古代語魔法はただの趣味でしかない」
「……趣味で魔法を使う者も、早々おらんよ……」

 そう言って師匠は「行け」と言わんばかりに手を振る。
 一礼し、部屋を出て向かうはフィリアの部屋だ。

 先ほどは大聖堂で祈り捧げていた。ここへやってくる金持ちの為にだ。
 祈ることで金を置いて行く金持ちは、神殿にとっては大事な金づる。
 フィリアにとって嫌であろうとも、奴らが落とす金で神殿に務める者の衣食住が賄われているのだ。無下には出来ない。
 時にそれらの金は、飢餓の際にも使われる事になる。
 そう考えれば、フィリアが目指す「子供が餓死しなくて済む世界」に少なからず貢献も出来る。
 ゼロは不可能でも、ゼロに近づけることは出来る。そう割り切って頑張れるのだろう。

 のんびりと歩いていると、ちょうど祈りを終えたフィリアと廊下で出会った。

「ルインさま!?」
「やぁフィリア。お疲れ様。苺、食べるかい?」
「うふふ。また苺ですか?」

 笑みを零しながら、愚痴まで零している。
 確かにここのところ、大神殿に来るたびに苺を持って来てはいるけれど。
 後ろに控えたフィリア付きの女司祭らも、同じように苦笑いを浮かべていた。

「うぅむ。苺以外の何かあると、やはりいいのだろうか」
「ふふ。冗談です。ルインさまが持って来てくださる苺は、とっても美味しいですもの。ね?」

 そう言ってフィリアは後ろを振り向くと、控えている二人の司祭も頷いた。
 なんだ、苺でいいんじゃないか。
 とはいえ、確かに毎回苺では飽きるだろうな。
 今度くるときは野菜にしよう。

「それでルインさま、今日は……その格好からすると、とうとう旅に出られるのですね?」
「あぁ、そうだ。一応挨拶をしておこうとね。まぁこれまで通り、ここには来るつもりだ」

 そう話すとフィリアは胸を撫でおろし、それから笑顔である情報をくれた。

「城下町の冒険者ギルドに行けば、ラフィに会えるかもしれませんよ」
「ラフィに?」

 無事に冒険者になった。
 そう手紙を貰ったのは、大神殿を卒業して一月後だったか。
 月に一度は手紙をよこすラフィだが、あれから会ったことは一度もない。
 彼女はそれこそあちこち冒険をして回り、一つ所に留まっていないようだからな。

「彼女にも会ってあげてくださいルインさま。きっと……待っているはずですから」
「待つ? そうか、なら会いに行こう」

 冒険者として各地を転々としているなら……きっと美味なる物の情報を持っているかもしれない!
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