器用貧乏の底辺冒険者~俺だけ使える『ステータスボード』で最強になる!~

夢・風魔

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「昨日も思ったんだけど、俺の予想以上にこっちのダンジョンは人が少ないみたいだな」
「そうね。昨日一日で三組のパーティーしか見ていないもの」
「狩り放題にゃ」
「みたいね」

 ルナが矢を番える。
 にゃびの言う通り、さっそく獲物がやって来たようだ。

「"プチ・ファイア"」

 いつもならそのまま飛んでいく火の玉が、今は俺の掌の上で浮かんでいる。

「へぇ、こうなるのか」

 制限時間は十五秒。その間、飛ばしまくってやる。

「こうか?」

 火の玉を投げるような仕草をすると、それに合わせて飛んでいく。
 腕を横に振れば同じように火の玉も横に飛んで行った。
 手の動きに合わせて飛んでくれるのか。これなら操作しやすい。

 この辺りは草の背丈が低い。だから向かってくるゴブリンも丸見えだ。
 そいつに向かって火の玉を操作して──当たれ!

「イギャッ!」
「よし!」

 ゴブリンは他にシーフが二匹。

「"プチ・ファイア"!」

 今度はすぐに投げる。二匹のシーフの周りを旋回するように操作すると、一匹が悲鳴を上げた。
 眉間に矢が突き刺さっている。ルナだ。
 俺の火の玉を見てゴブリンが戸惑っている間に射ったんだな。

 残りの一匹は──

「にゃにゃー!」
「あぁっ。あぁ……」

 にゃびが止めを刺してしまった。
 俺のプチ・ファイア……どうしよう。





 昼食は階段で。
 今日は他の冒険者もいないんだな。

「やっぱりレベルの低い見習い冒険者だと、上がるのも早いな」

 午前中だけで見習い冒険者のレベルは、4から11に上がった。

「早すぎない? 私とにゃびのレベルは一つしか上がってないのに」
「これかにゃー」

 にゃびが経験値増加を指さす。たぶんそれだろうけど、確かに上がりやすい気はする。
 冒険者だけ上がりやすいってことなのか?

「新しいスキル、なんかあるか──おぉ!」
「え、ちょっとなにそれズルい!」
「ズルいにゃ!」

 ズルい──そう言われても納得してしまうスキルが新しく一覧に加わっていた。

【スキルポイントアップ】
 レベルアップ時に獲得するスキルポイント+1。

 これ最高じゃないか!
 え、レベル2にしたら+2されるとか?
 スキル取り放題じゃないか!

 浮かれてスキルを獲得してレベル2に上げようと思ったけれど、一覧から消えてしまった。
 どういうことだ?
 でも獲得スキル欄にはちゃんと『スキルレベルアップ レベル上限』っていうのが──上限?

「え、これレベル1しかないの?」
「ぷふっ。そう甘くはないってことね」
「1増えるだけでもズルいにゃー」

 スキル取り放題。さすがに無理だったか。

「ね、ロイド。もう少しレベルの上がりやすい所に行かない?」
「行きたいにゃ」
「にゃびはなんて?」
「行きたいってさ」

 ちょっと落ち込みがちに言うと、ルナがくすくすと笑う。

「1増えるだけでもいいじゃない。私だってもっとポイント欲しいわよ」
「ズルいにゃー」

 まぁなかなかにズルいのかもな。

 二人はもう少し下の階層に行きたいという。
 午前中だけでレベルが1しか上がらなかったのもあるけど、まったく苦戦もしないので手応えがなさすぎると言われた。
 俺もそれは実感している。

 実のところ、ルイックのパーティーではここを狩場にしていた。
 六階にも行ったことがあったけど、モンスターは一緒。数が少し多くなるのと、森の割合が増えるだけ。
 そこから下の階層は知らない。

「六階はここより森が多くて、モンスターの種類は同じだけど数が少し多いんだ。行ってみる?」
「じゃあ七階で」
「え……」
「七階にゃー」 
「にゃびはなんて?」

 ここで「六階だって」と伝えたところで、にゃびはこちらの言葉を理解している。
 抗議されるのが目に見えてるし、俺は素直に多数決に従うことにした。





「黒い熊だ!」
「ブラックベアにゃー」

 七階は森だった。どこまでも森だ。
 奥へ行けば行くほど、森は深くなっていく──とにゃびが言った。

「お前、七階に来たことあるのか?」

 動物系モンスターは火が弱点な場合が多い。
 こいつもそうだった。おかげでプチ・ファイア一発で仕留めることが出来た。

「にゃー。九階まで行ったことあるにゃけど、普段はここか八階で狩りをしていたにゃ」
「──だって」
「えぇー! じゃあ九階に行きましょうよっ」

 ルナがそう言うと、にゃびは慌てて首を振って「にゃにゃっ」と連呼する。

「にゃにゃ?」
「にゃにゃだね。俺にもにゃにゃって聞こえる」
「いにゃにゃってことにゃ! 九階は暑くて硬くて絶対いにゃにゃ!」

 暑くて硬い?
 狩りを続けながら話を聞くと、九階は砂だらけて暑くて、モンスターは硬い甲羅に覆われている、と。

「サソリかしら?」
「かもしれない。ギルドのアイテム査定カウンターに、サソリの毒針を持って来てる冒険者を見たことあるし」
「サソリなら弓との相性も悪いわね」
「火属性の魔法とも相性が悪い」

 結果、このまま大人しく七階で狩りを続けるってことになった。
 でもここでも狩場としては生ぬるく感じる……。

 いっそ十階まで下りてしまうか?
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