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15:実際、紙に描く。そして覚える
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「ルシアナ嬢、心配することはない。あいつは確かに不愛想で、顔色一つ変えずに魔物を葬るような奴だが、善良な者に手を上げるような奴ではない」
「ぜ、善良、が前提なのですね」
「はは、言い方が悪かったか。悪党以外には手を挙げることはない。たぶんな」
最後のそのたぶんってなんっすか!?
しかも私、原作通りに進んだら皇子にとって『悪党』になるんですけど?
「確か君の父上は北部にも別荘を持っていただろう? ならば弟の後継人でもあるリュグライド公爵が興味を持つかもしれない」
「北部のですか? 雪山を背景に、まるでお城のような別荘の絵が気に入った母が、その別荘を買ったものなのですが……もちろん、一度も訪れたことがないのです」
「はははは。君の父上は、本当に奥方を愛しておられたのだね」
ふわっと笑みを零すベンジャミン皇子。
恋愛小説の主人公と恋に落ちるキャラなだけあって、ベンジャミン皇子は当然イケメン。
優しい面持ちで、年齢の割に幼く見えるところが人気だった。
そんな人に微笑まれても、まったく胸がときめかない。
だってこの人。
こーんな優しそうな顔してても、一目惚れ癖があって速攻心変わりするんだもん!
ふむ。北部の別荘かぁ。
リュグライド公爵はきっとお金持ちだろうし、いい値段で買ってくれるかしら?
プランBが現実味を帯びて来たわね。
あとは、傾きかけている事業の立て直しよね。
でもそっちは流石に私にもどうにもできないし。
ふーむ。
「ってことで、王国でも調査をしてくれたらしいんだけど依頼者は分からず終い」
皇子との茶会を終えた翌々日、今日はエリーシャと町でお茶をする約束をしていた。
あんな社交界デビューになっちゃったし、大丈夫かなと思ってお手紙を出していたのよね。
エリーシャには皇子との婚約話は伏せておいて、ただ王国の調査機関が調べてくれたとだけ伝えた。
「そう、ですか……でもそうなると、ルシアナ様がまた誘拐される可能性もあるのですね? こんな所で私と会っていても、よろしいのでしょうか?」
「んー、平気へいき。あの時は人から離れた場所にいたけど、町の中は人だらけでしょ」
「それに本日は護衛騎士の方もが五人いらっしゃいますので」
とローラが得意げに話す。
「え? アッシュ様はいらっしゃらないようですが?」
「うん。アッシュ卿含めて、少し離れた所で見守っているのよ」
「そうなのですか」
「アッシュ卿もだけど、今回は魔法を使える騎士を専属でつけてくださったので大丈夫ですよ」
魔法を使える騎士はそう多くはないから、今回私に五人も付けてくださったのはお父さまがそれだけ心配してくれているからだろうな。
本当は遊びに行っちゃダメだって言われてたんだけどね。
「魔法と言えば、先日の黒い方」
「黒い? ぷっ、エリーシャさんも第一印象は黒なんですね」
「え、あ、はい。じゃあルシアナ様も?」
「もちろん! だって上から下まで、ぜーんぶ黒なんですもの」
言って私たちは笑う。
「ふふふ。それで私、魔法を始めて見たのですが。あの、青白く光ってた丸いあれはなんでしょうか?」
「丸い? 魔法陣のことかしら」
「そうだと思われます。エリーシャ様、魔法を使う際には必ず丸く光る模様を描く必要があるのです」
「描く、のですか? あんな細かな模様を、いったいどうやって?」
エリーシャのその質問に、私もローラも答えられない。
だって私たちは魔法が使えないから。
うぅん、アッシュ卿が来て説明してくれないかしら。
今どこにいるんだろう。そう思って視線を右に向けると、黒い壁が遮った。
このデジャブ……。
「実際、紙に描く。そして覚える」
そんな声が頭上で聞こえた。
見上げるとそこには全身黒づくめで、瞳の色だけが金色の黒い人が立っていた。
「ぜ、善良、が前提なのですね」
「はは、言い方が悪かったか。悪党以外には手を挙げることはない。たぶんな」
最後のそのたぶんってなんっすか!?
しかも私、原作通りに進んだら皇子にとって『悪党』になるんですけど?
「確か君の父上は北部にも別荘を持っていただろう? ならば弟の後継人でもあるリュグライド公爵が興味を持つかもしれない」
「北部のですか? 雪山を背景に、まるでお城のような別荘の絵が気に入った母が、その別荘を買ったものなのですが……もちろん、一度も訪れたことがないのです」
「はははは。君の父上は、本当に奥方を愛しておられたのだね」
ふわっと笑みを零すベンジャミン皇子。
恋愛小説の主人公と恋に落ちるキャラなだけあって、ベンジャミン皇子は当然イケメン。
優しい面持ちで、年齢の割に幼く見えるところが人気だった。
そんな人に微笑まれても、まったく胸がときめかない。
だってこの人。
こーんな優しそうな顔してても、一目惚れ癖があって速攻心変わりするんだもん!
ふむ。北部の別荘かぁ。
リュグライド公爵はきっとお金持ちだろうし、いい値段で買ってくれるかしら?
プランBが現実味を帯びて来たわね。
あとは、傾きかけている事業の立て直しよね。
でもそっちは流石に私にもどうにもできないし。
ふーむ。
「ってことで、王国でも調査をしてくれたらしいんだけど依頼者は分からず終い」
皇子との茶会を終えた翌々日、今日はエリーシャと町でお茶をする約束をしていた。
あんな社交界デビューになっちゃったし、大丈夫かなと思ってお手紙を出していたのよね。
エリーシャには皇子との婚約話は伏せておいて、ただ王国の調査機関が調べてくれたとだけ伝えた。
「そう、ですか……でもそうなると、ルシアナ様がまた誘拐される可能性もあるのですね? こんな所で私と会っていても、よろしいのでしょうか?」
「んー、平気へいき。あの時は人から離れた場所にいたけど、町の中は人だらけでしょ」
「それに本日は護衛騎士の方もが五人いらっしゃいますので」
とローラが得意げに話す。
「え? アッシュ様はいらっしゃらないようですが?」
「うん。アッシュ卿含めて、少し離れた所で見守っているのよ」
「そうなのですか」
「アッシュ卿もだけど、今回は魔法を使える騎士を専属でつけてくださったので大丈夫ですよ」
魔法を使える騎士はそう多くはないから、今回私に五人も付けてくださったのはお父さまがそれだけ心配してくれているからだろうな。
本当は遊びに行っちゃダメだって言われてたんだけどね。
「魔法と言えば、先日の黒い方」
「黒い? ぷっ、エリーシャさんも第一印象は黒なんですね」
「え、あ、はい。じゃあルシアナ様も?」
「もちろん! だって上から下まで、ぜーんぶ黒なんですもの」
言って私たちは笑う。
「ふふふ。それで私、魔法を始めて見たのですが。あの、青白く光ってた丸いあれはなんでしょうか?」
「丸い? 魔法陣のことかしら」
「そうだと思われます。エリーシャ様、魔法を使う際には必ず丸く光る模様を描く必要があるのです」
「描く、のですか? あんな細かな模様を、いったいどうやって?」
エリーシャのその質問に、私もローラも答えられない。
だって私たちは魔法が使えないから。
うぅん、アッシュ卿が来て説明してくれないかしら。
今どこにいるんだろう。そう思って視線を右に向けると、黒い壁が遮った。
このデジャブ……。
「実際、紙に描く。そして覚える」
そんな声が頭上で聞こえた。
見上げるとそこには全身黒づくめで、瞳の色だけが金色の黒い人が立っていた。
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