32 / 54
32:それが彼女の願い
しおりを挟む
神眼。
その目で見た魔法陣を、一瞬にして記憶し発動することが可能になる。
魔法には全て属性が存在する。地水火風、雷、氷、聖と闇。
魔法が使える使えないを抜きにしても、人には適正不適正の属性を持っているの。
ほとんどの人は、適正属性一つ、残りは不適正。
つまり魔法が使えたとしても、一つの属性のみってこと。
たまーに複数の属性に適性がある、賢者と呼ばれるような人はいるけどね。
それでも全属性に適性がある人は、これまでの歴史では存在したことがない。
ただし──
「適正はなくとも、全ての魔法を網羅出来る方法はございます」
そう言って司祭様が一冊の本を私に見せてくれた。
「ここです。まず大前提として鑑定眼の持ち主であることが絶対条件でございます」
「鑑定眼……私、ずっと自分のは鑑定スキルだと思っていました」
「仕方ございません。鑑定スキルと鑑定眼の能力は、まったく同じものですので。
そして鑑定スキルに鑑定眼、どちらかを所有している方は意外と、ご自身を鑑定なさらない方が多いようですので」
自分のことは自分が一番よく知っている。
そんな感じで鑑定することはないものね。
鑑定スキルは、もちろんスキルのこと。だけど鑑定眼はスキルではなく、特異体質みたいなものだってこと。
神眼は鑑定眼の上位覚醒版なので、もちろん特異体質に入る。
鑑定スキルもレアだけど、鑑定眼はもっとレア。
今の時代だと、鑑定眼を持っている人物はこの国には私ひとりだけ。
他の国を見ても、一国にひとりいるかどうかなんですって。
私、チート級!
そのうえ神眼にも覚醒している。
この神眼の持ち主こそが、全属性の魔法を使える唯一の人だってこと。
そう……この私が、全属性、全ての魔法の使い手となったのだ。
オーッホッホッホッホ!
「ここに最強の悪役令嬢が爆誕したのよ!」
「ル、ルシアナ様?」
「あ、なんでもございません。ほんとなんでもないの。それよりエリーシャさんは……」
エリーシャは先ほど、急に眩暈を起こして休んでいる。
「ご心配ございません。あれほど巨大な魔法陣を作った上に、初覚醒でしたので、今になって疲れが現れたのでしょう」
「そう。それならいいんだけど」
「しかし私はなんと幸運なことか」
そう言って司祭様が興奮気味に修練の間にある女神像に祈る。
「幸運、なんですか?」
「はい! 数十年にひとり現れるかどうかという神眼の覚醒と、そして聖女の誕生に立ち会えたのですから!」
「せい、じょ……ぁ、エリーシャさん!?」
そうだ。エリーシャって、原作二巻の中盤から聖女と呼ばれるようになってたんだった。
でも今はまだ、原作一巻の後半手前。
早すぎる……けど、そうか、私が彼女に祝福の魔法が使えるって教えちゃったから流れがズレちゃったんだわ。
「そっかぁ。エリーシャさん、聖女様なのね」
「えぇ。あれほど大きな祝福の魔法をお使いになられるのは、聖女ただひとりですから」
女神に愛されし娘。
そんな彼女の力が、この国を救うことになる。
「聖女様! お加減はもうよろしいので?」
休んでいたエリーシャが起き上がって、私たちの所へとやって来た。
まだ足元はおぼつかないみたい。
「エリーシャさん、大丈夫?」
「はい。ご心配をおかけしました」
「ううん。あんな凄い魔法だったんだ。疲れて当然よ」
「そうです、聖女様。ささ、お座りになって、ゆっくりなさってください」
司祭様にそう言われ、私の隣に腰を下ろす。だけどその顔はどこか寂しげだった。
「どうしたの、エリーシャさん」
「……あの、私」
「うん」
ちらりとこちらを見て、それから顔を伏せて言葉を続けた。
「私、聖女がなんなのかよく分かりません。私はただ、魔法を使いたかっただけで、誰かの役に立てたらいいなって、そう思っただけなんです」
「その結果が、あれだったのよ」
「でも私っ。私……聖女だなんて……」
エリーシャは眉尻を下げ、不安そうな表情を浮かべた。
不安。そう、不安なんだね。
確かに聖女って、具体的になんなの? と問われると、なんなんだろう。
行き成り「あなたは今日から聖女です!」と言われて「はい、わかりました!」と言える人はそういないと思う。
「エリーシャさんは、エリーシャさんよ。あなたがやりたいと思っていたことを忘れず、その為に自分の力を使えばいいだけ」
「ルシ……アナ様。私、私……聖女だなんて呼ばれたくありません」
「うん。あなたはエリーシャだものね」
「はい。はい。ひとりの人間として、見て頂きたいです」
それが彼女の願い。
「司祭様。エリーシャさんは神のように崇め奉られたくないんですよ。この子はエリーシャ。聖女という壁を作ってしまわず、これまで通り、親しみを込めて名前で呼んであげてください」
私がそう話すと、司祭様は目を丸くした後、頷き、優しい笑顔を見せてくれた。
「分かりました。ではこれからも、エリーシャ様と、お呼びさせていただきます」
「はい、司祭様っ」
エリーシャも嬉しそうに返事をした。
その目で見た魔法陣を、一瞬にして記憶し発動することが可能になる。
魔法には全て属性が存在する。地水火風、雷、氷、聖と闇。
魔法が使える使えないを抜きにしても、人には適正不適正の属性を持っているの。
ほとんどの人は、適正属性一つ、残りは不適正。
つまり魔法が使えたとしても、一つの属性のみってこと。
たまーに複数の属性に適性がある、賢者と呼ばれるような人はいるけどね。
それでも全属性に適性がある人は、これまでの歴史では存在したことがない。
ただし──
「適正はなくとも、全ての魔法を網羅出来る方法はございます」
そう言って司祭様が一冊の本を私に見せてくれた。
「ここです。まず大前提として鑑定眼の持ち主であることが絶対条件でございます」
「鑑定眼……私、ずっと自分のは鑑定スキルだと思っていました」
「仕方ございません。鑑定スキルと鑑定眼の能力は、まったく同じものですので。
そして鑑定スキルに鑑定眼、どちらかを所有している方は意外と、ご自身を鑑定なさらない方が多いようですので」
自分のことは自分が一番よく知っている。
そんな感じで鑑定することはないものね。
鑑定スキルは、もちろんスキルのこと。だけど鑑定眼はスキルではなく、特異体質みたいなものだってこと。
神眼は鑑定眼の上位覚醒版なので、もちろん特異体質に入る。
鑑定スキルもレアだけど、鑑定眼はもっとレア。
今の時代だと、鑑定眼を持っている人物はこの国には私ひとりだけ。
他の国を見ても、一国にひとりいるかどうかなんですって。
私、チート級!
そのうえ神眼にも覚醒している。
この神眼の持ち主こそが、全属性の魔法を使える唯一の人だってこと。
そう……この私が、全属性、全ての魔法の使い手となったのだ。
オーッホッホッホッホ!
「ここに最強の悪役令嬢が爆誕したのよ!」
「ル、ルシアナ様?」
「あ、なんでもございません。ほんとなんでもないの。それよりエリーシャさんは……」
エリーシャは先ほど、急に眩暈を起こして休んでいる。
「ご心配ございません。あれほど巨大な魔法陣を作った上に、初覚醒でしたので、今になって疲れが現れたのでしょう」
「そう。それならいいんだけど」
「しかし私はなんと幸運なことか」
そう言って司祭様が興奮気味に修練の間にある女神像に祈る。
「幸運、なんですか?」
「はい! 数十年にひとり現れるかどうかという神眼の覚醒と、そして聖女の誕生に立ち会えたのですから!」
「せい、じょ……ぁ、エリーシャさん!?」
そうだ。エリーシャって、原作二巻の中盤から聖女と呼ばれるようになってたんだった。
でも今はまだ、原作一巻の後半手前。
早すぎる……けど、そうか、私が彼女に祝福の魔法が使えるって教えちゃったから流れがズレちゃったんだわ。
「そっかぁ。エリーシャさん、聖女様なのね」
「えぇ。あれほど大きな祝福の魔法をお使いになられるのは、聖女ただひとりですから」
女神に愛されし娘。
そんな彼女の力が、この国を救うことになる。
「聖女様! お加減はもうよろしいので?」
休んでいたエリーシャが起き上がって、私たちの所へとやって来た。
まだ足元はおぼつかないみたい。
「エリーシャさん、大丈夫?」
「はい。ご心配をおかけしました」
「ううん。あんな凄い魔法だったんだ。疲れて当然よ」
「そうです、聖女様。ささ、お座りになって、ゆっくりなさってください」
司祭様にそう言われ、私の隣に腰を下ろす。だけどその顔はどこか寂しげだった。
「どうしたの、エリーシャさん」
「……あの、私」
「うん」
ちらりとこちらを見て、それから顔を伏せて言葉を続けた。
「私、聖女がなんなのかよく分かりません。私はただ、魔法を使いたかっただけで、誰かの役に立てたらいいなって、そう思っただけなんです」
「その結果が、あれだったのよ」
「でも私っ。私……聖女だなんて……」
エリーシャは眉尻を下げ、不安そうな表情を浮かべた。
不安。そう、不安なんだね。
確かに聖女って、具体的になんなの? と問われると、なんなんだろう。
行き成り「あなたは今日から聖女です!」と言われて「はい、わかりました!」と言える人はそういないと思う。
「エリーシャさんは、エリーシャさんよ。あなたがやりたいと思っていたことを忘れず、その為に自分の力を使えばいいだけ」
「ルシ……アナ様。私、私……聖女だなんて呼ばれたくありません」
「うん。あなたはエリーシャだものね」
「はい。はい。ひとりの人間として、見て頂きたいです」
それが彼女の願い。
「司祭様。エリーシャさんは神のように崇め奉られたくないんですよ。この子はエリーシャ。聖女という壁を作ってしまわず、これまで通り、親しみを込めて名前で呼んであげてください」
私がそう話すと、司祭様は目を丸くした後、頷き、優しい笑顔を見せてくれた。
「分かりました。ではこれからも、エリーシャ様と、お呼びさせていただきます」
「はい、司祭様っ」
エリーシャも嬉しそうに返事をした。
2
あなたにおすすめの小説
痩せすぎ貧乳令嬢の侍女になりましたが、前世の技術で絶世の美女に変身させます
ちゃんゆ
恋愛
男爵家の三女に産まれた私。衝撃的な出来事などもなく、頭を打ったわけでもなく、池で溺れて死にかけたわけでもない。ごくごく自然に前世の記憶があった。
そして前世の私は…
ゴットハンドと呼ばれるほどのエステティシャンだった。
とあるお屋敷へ呼ばれて行くと、そこには細い細い風に飛ばされそうなお嬢様がいた。
お嬢様の悩みは…。。。
さぁ、お嬢様。
私のゴッドハンドで世界を変えますよ?
**********************
転生侍女シリーズ第三弾。
『おデブな悪役令嬢の侍女に転生しましたが、前世の技術で絶世の美女に変身させます』
『醜いと蔑まれている令嬢の侍女になりましたが、前世の技術で絶世の美女に変身させます』
の続編です。
続編ですが、これだけでも楽しんでいただけます。
前作も読んでいただけるともっと嬉しいです!
この悪役令嬢には悪さは無理です!みんなで保護しましょう!
naturalsoft
恋愛
フレイムハート公爵家令嬢、シオン・クロス・フレイムハートは父に似て目付きが鋭くつり目で、金髪のサラサラヘアーのその見た目は、いかにもプライドの高そうな高飛車な令嬢だが、本当は気が弱く、すぐ涙目でアワアワする令嬢。
そのギャップ萌えでみんなを悶えさせるお話。
シオンの受難は続く。
ちょっと暇潰しに書いたのでサラッと読んで頂ければと思います。
あんまり悪役令嬢は関係ないです。見た目のみ想像して頂けたらと思います。
乙女ゲームに転生したので、推しの悲恋EDを回避します〜愛され令嬢は逆ハーはお断りです!
神城葵
恋愛
気づいたら、やり込んだ乙女ゲームのサブキャラに転生していました。
体調不良を治そうとしてくれた神様の手違いだそうです。迷惑です。
でも、スチル一枚のサブキャラのまま終わりたくないので、最萌えだった神竜王を攻略させていただきます。
※ヒロインは親友に溺愛されます。GLではないですが、お嫌いな方はご注意下さい。
※完結しました。ありがとうございました!
※改題しましたが、改稿はしていません。誤字は気づいたら直します。
表紙イラストはのの様に依頼しました。
【完結】転生したので悪役令嬢かと思ったらヒロインの妹でした
果実果音
恋愛
まあ、ラノベとかでよくある話、転生ですね。
そういう類のものは結構読んでたから嬉しいなーと思ったけど、
あれあれ??私ってもしかしても物語にあまり関係の無いというか、全くないモブでは??だって、一度もこんな子出てこなかったもの。
じゃあ、気楽にいきますか。
*『小説家になろう』様でも公開を始めましたが、修正してから公開しているため、こちらよりも遅いです。また、こちらでも、『小説家になろう』様の方で完結しましたら修正していこうと考えています。
逆ハーレムを完成させた男爵令嬢は死ぬまで皆に可愛がられる(※ただし本人が幸せかは不明である)
ラララキヲ
恋愛
平民生まれだが父が男爵だったので母親が死んでから男爵家に迎え入れられたメロディーは、男爵令嬢として貴族の通う学園へと入学した。
そこでメロディーは第一王子とその側近候補の令息三人と出会う。4人には婚約者が居たが、4人全員がメロディーを可愛がってくれて、メロディーもそれを喜んだ。
メロディーは4人の男性を同時に愛した。そしてその4人の男性からも同じ様に愛された。
しかし相手には婚約者が居る。この関係は卒業までだと悲しむメロディーに男たちは寄り添い「大丈夫だ」と言ってくれる。
そして学園の卒業式。
第一王子たちは自分の婚約者に婚約破棄を突き付ける。
そしてメロディーは愛する4人の男たちに愛されて……──
※話全体通して『ざまぁ』の話です(笑)
※乙女ゲームの様な世界観ですが転生者はいません。
※性行為を仄めかす表現があります(が、行為そのものの表現はありません)
※バイセクシャルが居るので醸(カモ)されるのも嫌な方は注意。
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾もあるかも。
◇なろうにも上げてます。
ヒロインだと言われましたが、人違いです!
みおな
恋愛
目が覚めたら、そこは乙女ゲームの世界でした。
って、ベタすぎなので勘弁してください。
しかも悪役令嬢にざまあされる運命のヒロインとかって、冗談じゃありません。
私はヒロインでも悪役令嬢でもありません。ですから、関わらないで下さい。
悪役令嬢に成り代わったのに、すでに詰みってどういうことですか!?
ぽんぽこ狸
恋愛
仕事帰りのある日、居眠り運転をしていたトラックにはねられて死んでしまった主人公。次に目を覚ますとなにやら暗くジメジメした場所で、自分に仕えているというヴィンスという男の子と二人きり。
彼から話を聞いているうちに、なぜかその話に既視感を覚えて、確認すると昔読んだことのある児童向けの小説『ララの魔法書!』の世界だった。
その中でも悪役令嬢である、クラリスにどうやら成り代わってしまったらしい。
混乱しつつも話をきていくとすでに原作はクラリスが幽閉されることによって終結しているようで愕然としているさなか、クラリスを見限り原作の主人公であるララとくっついた王子ローレンスが、訪ねてきて━━━━?!
原作のさらに奥深くで動いていた思惑、魔法玉(まほうぎょく)の謎、そして原作の男主人公だった完璧な王子様の本性。そのどれもに翻弄されながら、なんとか生きる一手を見出す、学園ファンタジー!
ローレンスの性格が割とやばめですが、それ以外にもダークな要素強めな主人公と恋愛?をする、キャラが二人ほど、登場します。世界観が殺伐としているので重い描写も多いです。読者さまが色々な意味でドキドキしてくれるような作品を目指して頑張りますので、よろしくお願いいたします。
完結しました!最後の一章分は遂行していた分がたまっていたのと、話が込み合っているので一気に二十万文字ぐらい上げました。きちんと納得できる結末にできたと思います。ありがとうございました。
転生したら悪役令嬢になりかけてました!〜まだ5歳だからやり直せる!〜
具なっしー
恋愛
5歳のベアトリーチェは、苦いピーマンを食べて気絶した拍子に、
前世の記憶を取り戻す。
前世は日本の女子学生。
家でも学校でも「空気を読む」ことばかりで、誰にも本音を言えず、
息苦しい毎日を過ごしていた。
ただ、本を読んでいるときだけは心が自由になれた――。
転生したこの世界は、女性が希少で、男性しか魔法を使えない世界。
女性は「守られるだけの存在」とされ、社会の中で特別に甘やかされている。
だがそのせいで、女性たちはみな我儘で傲慢になり、
横暴さを誇るのが「普通」だった。
けれどベアトリーチェは違う。
前世で身につけた「空気を読む力」と、
本を愛する静かな心を持っていた。
そんな彼女には二人の婚約者がいる。
――父違いの、血を分けた兄たち。
彼らは溺愛どころではなく、
「彼女のためなら国を滅ぼしても構わない」とまで思っている危険な兄たちだった。
ベアトリーチェは戸惑いながらも、
この異世界で「ただ愛されるだけの人生」を歩んでいくことになる。
※表紙はAI画像です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる