恋愛小説の悪役令嬢に転生しました!~借金のために皇子と婚約したけど、返済目処が立ったので婚約破棄されてさしあげます~

夢・風魔

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41:庭園で──グレン視点

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 ルシアナ!?
 くっ、なんてタイミングで庭園なんかに。

 ベンジャミンたちに気づかれないよう、迂回してルシアナがいた垣根へと向かう。
 が、見当たらない。

「どこへ行った」

 まさか侯爵家に帰ったんじゃ……。いや、その方がいいかもしれない。
 あんなものを見せられたあとで、婚約発表なんて耐えられないだろう。

 はぁ……奴と話をしなければな。



 庭園から奴の自室へと向かう廊下で、奴が来るのを待った。
 思ったより待たされたうえ、奴の隣には祝福魔法の女がいた。

「グ、グレン様」
「エリーシャ、グレンのことを知っているのかい?」
「あ、えっと……はい」

 その女が俺のことを知っていると言った途端、不機嫌そうな顔になるのは何故なんだ。

「ベンジャミン。ちょっと顔を貸せ」
「話か? ここで出来ないような内容か?」

 当たり前だろう。
 頷いて答えるが、直ぐには応じようとしない。

「わたしは今すぐエリーシャに、してやらねばならないことがある。その後であれば──」
「お前の婚約者のことで話がある。今すぐにだ」
「……分かった。部屋で待っていてくれ。彼女を執務室に案内したら、すぐに向かう」

 彼女にしてやらねばならないこと?
 いったいなんだと思ったが、よく見ると女のドレスの裾が破れているのが見えた。
 着替えさせるのか、それともメイドに繕わせるつもりなのか。

「すぐに来いよ」
「分かっているよ、グレン」

 不安ではあったが、ベンジャミンは言葉通り、すぐに部屋へと戻ってきた。

「それで、ルシアナ嬢がどうかしたのか?」
「その前に、あの女とはどういう関係だ?」
「お前の方こそ、エリーシャ嬢とはどういう関係なのだ? もしかして恋焦がれているなどと」
「タイプじゃない」

 即答すると、奴は目を丸くしていた。
 それから嬉しそうに「そうか」と小さく呟く。

 ちっ。

「まかさ一目惚れとは言わないだろうな」
「ひとめぼ……な、何を言うかグレン。わ、わたしは──」
「そうか、違うのか。彼女は愛らしいご令嬢だ。今日のパーティーで何人の男から声を掛けられるだろうな」

 そう言うと、今度はさっきと打って変わって、苦虫を噛み砕いたような表情になる。
 
「あんたは……婚約者がいる身で、他の女に惚れるのかよ!」
「……結婚と恋は別物だ」
「はっ。開き直ったな。だが知っているのか? あんたが惚れたあの女は、ルシアナ令嬢の友人だということを!」
「エリーシャとルシアナが!?」

 知らなかったのか。いや、その方がまだ救いがある。
 知っていて婚約者の友人に想いを寄せるなど、絶対にあってはならないことだ。

「自分の婚約者が、別の女に思いを寄せる。それを知ったら、彼女はどうなると思う? 平然としているだろうか、それとも傷つくだろうか?」
「……知られなければいい」
「……もう遅い」
「なっ!? ルシアナにわたしとエリーシャの事を話したのか!?」
「俺がそんなこと、するとでも思ったか? あの庭園にいたのは、お前たち二人と俺、他にもいたということだ」

 さすがに顔色が悪くなったな。
 いいざまだと言いたいところだが、傷つくのはあいつだ。

「エリーシャだったな。彼女のことは綺麗さっぱり諦めろ、今すぐにだ」
「グレン……なぜそこまで口出しをする。お前はわたしや母を恨んでいるのではないか?」
「煩わしいと思っているだけで、恨んでいる訳じゃない。俺が魔力を暴走させ、皇后妃を傷つけたことは間違っていないからな」

 もちろんそれが原因で皇后妃や第二夫人にいびられていた訳じゃない。
 俺の母が、皇后妃のメイドだったからというのが大きい。
 だが結果的に、二人の義母にいびられ王都を追放されたことで自由の身を手に入れている。

 正直、ベンジャミンを見ていると思う。
 帝位継承権なんて、もつもんじゃないなと。

「とにかくエリーシャとのことは……いや……」

 むしろ……今ここでベンジャミンにルシアナとの婚姻を解消させることが出来れば俺にも……。
 ちっ。そうじゃないだろう。

「そうか……グレン、お前、ルシアナ嬢のことを愛しているのだな?」
「あっ、いや、そうじゃないっ」
「では彼女のことは、これっぽっちも気に留めていない、と? 嘘偽りなく?」
「ちっ……」

 婚約者がいる女に、好意を寄せているのは事実だ。
 だが俺は、こいつのように相手を悲しませるようなことはしない。
 したくない。

 だからこの想いは、決して口にしてはいけない。

「分かった。彼女らにとって何をすれば最善の結果になるのか、しっかり考えよう」
「……そうしてくれ」

 どこか後悔の念に駆られながらも、これでいいのだと己に言い聞かせてベンジャミンの部屋を後にした。

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