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48:修学旅行前の高校生気分
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「ここが公爵様の別宅。意外とこじんまりしているのね」
小さな庭園はあるけれど、公爵家の別宅と考えると小さい気がする。
まぁ滅多に使わない別宅なんだから、バカみたいに大きな屋敷にする必要なんてないけどさ。
門の前で馬車を下り、門番に「グレン卿に会いに来た」と伝える。
「カイチェスター侯爵令嬢ですね。お話は伺っております。どうぞ、馬車のまま御進みください」
「ありがとう」
会釈をして再び馬車へ。
邸宅の入り口前で馬車が停止した。
「え? グレン卿!?」
馬車の扉が開かれ、てっきりアッシュ卿が手を差し伸べてくれるのかと思ったら、いたのはグレン卿だった。
「それでルシアナ。例の返事は?」
「えぇー、それここで聞きますぅ? 普通は屋敷の中に招いて、お茶でもしながらお話することですけどぉ」
「あっ、わ、悪い。ど、どうぞこちらへ」
「んふふ、ありがとうございます」
エスコートしてくれたことにお礼をいいながら、彼の後を追う。
あ、ぅ……歩くのはや!
そもそもたっぱが違うんだもんっ。絶対的に歩幅が違い過ぎるわよっ。
あ、止まった。
私が追い付いて、また彼が歩き出す。
ぷふっ。待ってくれてるって訳?
いやいや、それなら最初からゆっくり歩こうよ。
案内された応接間に通されると、すぐにお茶とお菓子が運ばれて来た。
あ、この前のクッキーだ。
グレン卿がお勧めのお店なのかなぁ。
ニオイからして紅茶なんだけど、ティーカップではなくグラスが用意されている。
そのグラスを彼が掴み、ティーポットからお茶を注ぐ。
「わぁ、注ぎながら同時に冷やしてるの?」
「あぁ」
「熱くないの?」
「……少しは。だがグラスに注いだ瞬間から冷やしているからそうでもない」
うぅ、やっぱり氷魔法欲しいなぁ。
でも北部に行ったら、今度は炎の魔法が欲しいとか思うんだろうな。
あ、でもカップを燃やしちゃうからホットにはならないのかな?
「どうぞ、ルシアナ嬢」
「では頂きます」
グラスにレモンの輪切りが添えらている。アイスレモンティーだ。
暑い夏に、いつでもどこでも冷たい飲み物が飲めるっていいなぁ。
あ、グレン卿に氷の魔法陣を見せて貰おうかな。
ん?
でもさっきのやつって、魔法陣が出ていなかったような。
「ねぇグレン卿。紅茶を冷やしたその魔法って、魔法陣はどうなってるの?」
「ん? いや、今のは魔法ではないぞ」
「違うの!?」
「あぁ。魔力をコントロールしただけだ。魔法ではない」
魔法じゃない。魔法陣を使わない。
私には使えないってことじゃないぃ。うえぇーん。
や、でも魔法陣から氷を出してグラスに浮かべてることもあったじゃない。
「グレン卿、グラスに氷を浮かべる魔法陣を、ぜひ見せて!」
「魔法陣を? いったい何故」
そうね、彼には神眼のことは話していないし、今ここで説明しておこう。
「鑑定眼から、神眼に覚醒しただと!?」
「神眼のこと、知っているの?」
「……まぁ、人から聞いたり本で読んだ程度のことだが」
「そっか。で、神眼に覚醒したから、私、魔法が使えるの!」
「だからグラスに氷を浮かべる魔法が使いたいと?」
ドヤ顔で頷く。
そうしたら少し呆れたように、彼がため息を吐いた。
「あの魔法は別に、グラスに氷を浮かべるためだけのものじゃない。魔力を正確にコントロールして、攻撃にも使う氷を最小サイズで生み出しているだけだはぁ、はぁ」
「え、じゃあ攻撃魔法も飲み物を冷やす氷も、同じ魔法なの?」
グレンが頷く。
一つの魔法で込める魔力を変化させることで、大きさも形も様々に変化する。
彼はそう教えてくれた。
「意外と小さな氷を作るのは難しいものだぞ。まずは魔力のコントロールを学ばねば」
「コントロール……今まで魔法なんて使ったことなかったし、使えないと思っていたからコントロール方法なんてまったく知らないわ」
「それは……俺が、教えてやってもいい」
「本当!? じゃあ北部にいる間、お願いしようかな」
グレン卿は小さく頷いた後、目を丸くして私を見た。
ん? なんか変なこと言ったっけ?
「ほ、北部っ」
「ん、あ。えぇ、北部に行くことにしたの。グレン卿が出発を遅らせると言っていたし、早めに知らせておかなきゃと思ってね」
「そうかっ。一緒に来てくれるのか」
「それで、出発はいつに?」
荷造りのこともあるし、それも聞いておかなきゃ。
「明日にでも出発はできるが」
「明日!? 荷造りがまだ……」
「そうだな。なら三日後でどうだ? 出来れば馬車にはクッションを多めに入れて置け。長旅になるから、その……あちこち痛むことになるぞ。はぁ」
「クッションね。分かった。他に何かアドバイスある?」
冷たくて美味しいレモンティーとクッキーを頂きつつ、彼から旅支度のアドバイスを伺った。
北部まで約半月の道のり。
ふふふ、なんだかワクワクしてきた。
まるで修学旅行前の高校生気分みたい。
小さな庭園はあるけれど、公爵家の別宅と考えると小さい気がする。
まぁ滅多に使わない別宅なんだから、バカみたいに大きな屋敷にする必要なんてないけどさ。
門の前で馬車を下り、門番に「グレン卿に会いに来た」と伝える。
「カイチェスター侯爵令嬢ですね。お話は伺っております。どうぞ、馬車のまま御進みください」
「ありがとう」
会釈をして再び馬車へ。
邸宅の入り口前で馬車が停止した。
「え? グレン卿!?」
馬車の扉が開かれ、てっきりアッシュ卿が手を差し伸べてくれるのかと思ったら、いたのはグレン卿だった。
「それでルシアナ。例の返事は?」
「えぇー、それここで聞きますぅ? 普通は屋敷の中に招いて、お茶でもしながらお話することですけどぉ」
「あっ、わ、悪い。ど、どうぞこちらへ」
「んふふ、ありがとうございます」
エスコートしてくれたことにお礼をいいながら、彼の後を追う。
あ、ぅ……歩くのはや!
そもそもたっぱが違うんだもんっ。絶対的に歩幅が違い過ぎるわよっ。
あ、止まった。
私が追い付いて、また彼が歩き出す。
ぷふっ。待ってくれてるって訳?
いやいや、それなら最初からゆっくり歩こうよ。
案内された応接間に通されると、すぐにお茶とお菓子が運ばれて来た。
あ、この前のクッキーだ。
グレン卿がお勧めのお店なのかなぁ。
ニオイからして紅茶なんだけど、ティーカップではなくグラスが用意されている。
そのグラスを彼が掴み、ティーポットからお茶を注ぐ。
「わぁ、注ぎながら同時に冷やしてるの?」
「あぁ」
「熱くないの?」
「……少しは。だがグラスに注いだ瞬間から冷やしているからそうでもない」
うぅ、やっぱり氷魔法欲しいなぁ。
でも北部に行ったら、今度は炎の魔法が欲しいとか思うんだろうな。
あ、でもカップを燃やしちゃうからホットにはならないのかな?
「どうぞ、ルシアナ嬢」
「では頂きます」
グラスにレモンの輪切りが添えらている。アイスレモンティーだ。
暑い夏に、いつでもどこでも冷たい飲み物が飲めるっていいなぁ。
あ、グレン卿に氷の魔法陣を見せて貰おうかな。
ん?
でもさっきのやつって、魔法陣が出ていなかったような。
「ねぇグレン卿。紅茶を冷やしたその魔法って、魔法陣はどうなってるの?」
「ん? いや、今のは魔法ではないぞ」
「違うの!?」
「あぁ。魔力をコントロールしただけだ。魔法ではない」
魔法じゃない。魔法陣を使わない。
私には使えないってことじゃないぃ。うえぇーん。
や、でも魔法陣から氷を出してグラスに浮かべてることもあったじゃない。
「グレン卿、グラスに氷を浮かべる魔法陣を、ぜひ見せて!」
「魔法陣を? いったい何故」
そうね、彼には神眼のことは話していないし、今ここで説明しておこう。
「鑑定眼から、神眼に覚醒しただと!?」
「神眼のこと、知っているの?」
「……まぁ、人から聞いたり本で読んだ程度のことだが」
「そっか。で、神眼に覚醒したから、私、魔法が使えるの!」
「だからグラスに氷を浮かべる魔法が使いたいと?」
ドヤ顔で頷く。
そうしたら少し呆れたように、彼がため息を吐いた。
「あの魔法は別に、グラスに氷を浮かべるためだけのものじゃない。魔力を正確にコントロールして、攻撃にも使う氷を最小サイズで生み出しているだけだはぁ、はぁ」
「え、じゃあ攻撃魔法も飲み物を冷やす氷も、同じ魔法なの?」
グレンが頷く。
一つの魔法で込める魔力を変化させることで、大きさも形も様々に変化する。
彼はそう教えてくれた。
「意外と小さな氷を作るのは難しいものだぞ。まずは魔力のコントロールを学ばねば」
「コントロール……今まで魔法なんて使ったことなかったし、使えないと思っていたからコントロール方法なんてまったく知らないわ」
「それは……俺が、教えてやってもいい」
「本当!? じゃあ北部にいる間、お願いしようかな」
グレン卿は小さく頷いた後、目を丸くして私を見た。
ん? なんか変なこと言ったっけ?
「ほ、北部っ」
「ん、あ。えぇ、北部に行くことにしたの。グレン卿が出発を遅らせると言っていたし、早めに知らせておかなきゃと思ってね」
「そうかっ。一緒に来てくれるのか」
「それで、出発はいつに?」
荷造りのこともあるし、それも聞いておかなきゃ。
「明日にでも出発はできるが」
「明日!? 荷造りがまだ……」
「そうだな。なら三日後でどうだ? 出来れば馬車にはクッションを多めに入れて置け。長旅になるから、その……あちこち痛むことになるぞ。はぁ」
「クッションね。分かった。他に何かアドバイスある?」
冷たくて美味しいレモンティーとクッキーを頂きつつ、彼から旅支度のアドバイスを伺った。
北部まで約半月の道のり。
ふふふ、なんだかワクワクしてきた。
まるで修学旅行前の高校生気分みたい。
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