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「うっわぁぁぁぁ」
「すごぉーい!」
山を登り出して初めて四日目。
右を見ても左を見ても、前も後ろも山だらけ!
でも私とクリフが驚いているのは、そんなことじゃない。
私たちの乗る馬車が進むその先には、ぽっかりと空いた洞窟──ううん、トンネルがあった!
形はまさに私が知るトンネルそのもの。
ただコンクリートで固められているとかじゃなく、岩が剥き出しの状態。
「ここを抜ければ街までもうすぐだ」
「まさか山を貫通しているの?」
「あぁ。山越えをするには、山頂付近まで登ることになる。馬車はもちろん、徒歩でもなかなか険しい道のりだ」
グレン卿がそう言うと、彼は西の方を指差した。
その方角に、比較的緩やかな山道があるらしい。だけどそこまで行って街に向かうと、追加で十日ほどかかるんだとか。
それでトンネルが掘られることになったのだけど、これがまさかの──
「魔法でぶち抜いた」
「ひえぇーっ。ま、魔法で!?」
「あぁ。大地の魔法を使えば、穴は案外簡単に開く。らしい」
最後のらしいって……まぁグレン卿も実際に見たわけじゃないってことよね。
はぁー、この世界のトンネルは、魔法なのねぇ。
トンネルの中には、転々と明かりが灯されている。
松明でもないし、もちろん電気でもない。
何かと思ったら、石が光ってる?
「あれは魔石だ。それに光の魔法を閉じ込めると、ああやって明るくなる」
「え、あれって光魔法なんですか?」
グレンの言葉に興味を持ったのはクリフ。
自分も光魔法の適正があるから、気になるのね。
「あぁ。一度魔法を閉じ込めると、だいたい十日ほど光るらしい」
「え、じゃあ定期的に魔法を使わなきゃいけないのね」
グレン卿が頷き、北部で光魔法を使える数名が、交代でやっているんだって。
なかなか大変ね。
でも……もうかなり長いこと進んでるのに、まぁだ外に出ないんだけど。
まだ?
まだなの?
かれこれ三〇分はトンネルの中なんだけど、さすがに怖くなってきた。
本当はこれ、出口なんてないんじゃって。
でもそれからしばらくして、
「姉さま! 出口が見えてきましたっ」
「え? 本当に!? ああぁぁ、明かりだぁ」
「ようやくですね。もう私、このまま闇の中を彷徨うんじゃないかと不安でした」
とローラが言うけど、それに関しては同意よ。
転々と明かりがあっても、全体的には暗かったもの。
ほんと、怖かったぁ。
久々の太陽が凄く眩しい。
はぁ、でもこれで一安心ね。
と思ったのもつかの間。
「警戒!」
グレン卿の一言で、北部から来た騎士たちが一斉に剣を構える。
「ルシアナ様。魔獣は近くにおります」
「え、魔獣!?」
アッシュ卿も剣を抜いて馬車の傍へとやって来た。
馬車が止まり、騎士たちが周囲に視線を送る。
ここで戦闘になるの?
「おい。お前たちは魔獣との戦闘経験はあるのか?」
グレン卿の質問にアッシュ卿は頷く。
え? うちの騎士団って魔獣と戦ったことがあるの!?
「ですがわたしだけです。鉱山の近くの山で、何度かは」
「そうか。なら他の三人は出来るだけ補佐に回れ」
アッシュ卿だけなのね。
他の三人は凄く緊張しているみたいだけど、大丈夫かしら。
どうにかして緊張をほぐしてあげられればいいけど……おぉ、そうだ!
「みんな、こっちに来て」
「お嬢様?」
うちの騎士四人が集まる。
そこに、えいやっと魔法陣を出した。
「こ、これは?」
「これは聖女様の、ありがたーい祝福の魔法──のパクリよ!」
「パ、パクリ?」
ふっふっふ。だって私が見た魔法陣が、エリーシャの祝福の魔法陣なんだもん。
だからパクリよ、パクリ。
「おぉ、これは──勇気が湧いてくる」
「これが祝福の魔法の効果……これならいけそうです!」
「でも無茶はしないで。まずは魔獣狩りに慣れた騎士の戦い方をよく見て学ぶのよ」
「「はい」」
そうはいったものの、実は私が緊張している。
魔獣なんて見たことがないんだもん、怖いに決まってるじゃない。
獣が狂暴化したものだって話も聞いたことがあるけど、じゃあ見た目は動物?
そんなことを考えていると、左奥の茂みが鳴った。
飛び出してきたのは狼──じゃなく、狼男みたいに二足歩行の狼!?
が、茂みから飛び出してきて、氷漬けにされた。
んー、これはグレン卿、よね?
見ると彼の周りに青白いオーラみたいなのが見える。
うん、氷の魔法ね。
だけど飛び出してきたのは他にも三体いた。更に別の方角からも!?
どうしよう。騎士の人数より魔獣の方が多い。
そんな不安も一瞬で終わった。
北部からの騎士たちは顔色一つ変えず、平然と魔獣を切り伏せる。
うちの騎士たちもアッシュ卿を中心に、確実に魔獣を倒していった。
ちょ、うちの騎士たちカッコいい!
「ねぇねぇ。うちの騎士たちもまんざらじゃないわね。見直しちゃった」
私がそう言うと、ローラがある一点を見つめて頬を染めた。
「はい。アッシュ卿、素敵です」
ふーん。
ふーん。
アッシュ卿ねぇ。ふふふ。
「すごぉーい!」
山を登り出して初めて四日目。
右を見ても左を見ても、前も後ろも山だらけ!
でも私とクリフが驚いているのは、そんなことじゃない。
私たちの乗る馬車が進むその先には、ぽっかりと空いた洞窟──ううん、トンネルがあった!
形はまさに私が知るトンネルそのもの。
ただコンクリートで固められているとかじゃなく、岩が剥き出しの状態。
「ここを抜ければ街までもうすぐだ」
「まさか山を貫通しているの?」
「あぁ。山越えをするには、山頂付近まで登ることになる。馬車はもちろん、徒歩でもなかなか険しい道のりだ」
グレン卿がそう言うと、彼は西の方を指差した。
その方角に、比較的緩やかな山道があるらしい。だけどそこまで行って街に向かうと、追加で十日ほどかかるんだとか。
それでトンネルが掘られることになったのだけど、これがまさかの──
「魔法でぶち抜いた」
「ひえぇーっ。ま、魔法で!?」
「あぁ。大地の魔法を使えば、穴は案外簡単に開く。らしい」
最後のらしいって……まぁグレン卿も実際に見たわけじゃないってことよね。
はぁー、この世界のトンネルは、魔法なのねぇ。
トンネルの中には、転々と明かりが灯されている。
松明でもないし、もちろん電気でもない。
何かと思ったら、石が光ってる?
「あれは魔石だ。それに光の魔法を閉じ込めると、ああやって明るくなる」
「え、あれって光魔法なんですか?」
グレンの言葉に興味を持ったのはクリフ。
自分も光魔法の適正があるから、気になるのね。
「あぁ。一度魔法を閉じ込めると、だいたい十日ほど光るらしい」
「え、じゃあ定期的に魔法を使わなきゃいけないのね」
グレン卿が頷き、北部で光魔法を使える数名が、交代でやっているんだって。
なかなか大変ね。
でも……もうかなり長いこと進んでるのに、まぁだ外に出ないんだけど。
まだ?
まだなの?
かれこれ三〇分はトンネルの中なんだけど、さすがに怖くなってきた。
本当はこれ、出口なんてないんじゃって。
でもそれからしばらくして、
「姉さま! 出口が見えてきましたっ」
「え? 本当に!? ああぁぁ、明かりだぁ」
「ようやくですね。もう私、このまま闇の中を彷徨うんじゃないかと不安でした」
とローラが言うけど、それに関しては同意よ。
転々と明かりがあっても、全体的には暗かったもの。
ほんと、怖かったぁ。
久々の太陽が凄く眩しい。
はぁ、でもこれで一安心ね。
と思ったのもつかの間。
「警戒!」
グレン卿の一言で、北部から来た騎士たちが一斉に剣を構える。
「ルシアナ様。魔獣は近くにおります」
「え、魔獣!?」
アッシュ卿も剣を抜いて馬車の傍へとやって来た。
馬車が止まり、騎士たちが周囲に視線を送る。
ここで戦闘になるの?
「おい。お前たちは魔獣との戦闘経験はあるのか?」
グレン卿の質問にアッシュ卿は頷く。
え? うちの騎士団って魔獣と戦ったことがあるの!?
「ですがわたしだけです。鉱山の近くの山で、何度かは」
「そうか。なら他の三人は出来るだけ補佐に回れ」
アッシュ卿だけなのね。
他の三人は凄く緊張しているみたいだけど、大丈夫かしら。
どうにかして緊張をほぐしてあげられればいいけど……おぉ、そうだ!
「みんな、こっちに来て」
「お嬢様?」
うちの騎士四人が集まる。
そこに、えいやっと魔法陣を出した。
「こ、これは?」
「これは聖女様の、ありがたーい祝福の魔法──のパクリよ!」
「パ、パクリ?」
ふっふっふ。だって私が見た魔法陣が、エリーシャの祝福の魔法陣なんだもん。
だからパクリよ、パクリ。
「おぉ、これは──勇気が湧いてくる」
「これが祝福の魔法の効果……これならいけそうです!」
「でも無茶はしないで。まずは魔獣狩りに慣れた騎士の戦い方をよく見て学ぶのよ」
「「はい」」
そうはいったものの、実は私が緊張している。
魔獣なんて見たことがないんだもん、怖いに決まってるじゃない。
獣が狂暴化したものだって話も聞いたことがあるけど、じゃあ見た目は動物?
そんなことを考えていると、左奥の茂みが鳴った。
飛び出してきたのは狼──じゃなく、狼男みたいに二足歩行の狼!?
が、茂みから飛び出してきて、氷漬けにされた。
んー、これはグレン卿、よね?
見ると彼の周りに青白いオーラみたいなのが見える。
うん、氷の魔法ね。
だけど飛び出してきたのは他にも三体いた。更に別の方角からも!?
どうしよう。騎士の人数より魔獣の方が多い。
そんな不安も一瞬で終わった。
北部からの騎士たちは顔色一つ変えず、平然と魔獣を切り伏せる。
うちの騎士たちもアッシュ卿を中心に、確実に魔獣を倒していった。
ちょ、うちの騎士たちカッコいい!
「ねぇねぇ。うちの騎士たちもまんざらじゃないわね。見直しちゃった」
私がそう言うと、ローラがある一点を見つめて頬を染めた。
「はい。アッシュ卿、素敵です」
ふーん。
ふーん。
アッシュ卿ねぇ。ふふふ。
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