Loop✳Resonance

夜空奏音

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-鳴り止まない蒼き残響(レゾナンス)-

Episode4 -7月22日-

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今日は学校が無い日、というか祝日である。こういう日があったら、大抵の高校生以外も含む学生達は、「遊ぼう」などと言い始めるだろう。

でも実際、私は違った。昨日から楓くんに手当てされたことや、冬姫にからかわれた事で頭がいっぱいになっているのだ。でも、微かに手当てされた事は、嬉しいと感じた。

その影響で、いつもなら朝の7時には起きれるのに、今日起きたのは朝の10時前だった。幼なじみに手当てされただけで寝付けなくなったなど、意地でも家族には言えなかった。

とりあえず、このまま布団の上にいる訳にはいかないので、身体を起こし身支度を始めた。妹の双葉は、友達と出かけるらしく、もう既に家を出ている。

一方私はというと、今日は特にやることが無く、暇な状態である。のんびりして過ごすか、勉強して過ごすか、好きな事をして過ごすか、これくらいしか選択肢が無い。

パジャマから部屋着に着替え、調子を整える。今日は、黒のズボンと白のパーカーというラフな格好である。そして、洗面所に行き、顔を洗って目を覚まし、寝癖をしっかりと直して、髪型を整える。

これで、私は「寝起き」という状態では無くなり、「いつもの私」という状態に変化する。この作業をもっと手際良くできればいいのにと、お母さんが一時期言っていたことがあった。

中学生の双葉は、朝から友達とお出かけに行っている。どこに行っているか、誰と一緒なのかは詳しくは分からないが、きっと冬姫の妹の蛍ちゃんだろう。

昨日の双葉、よくソワソワせずに寝れたなと私は思っている。私だったら、楓くんとお出かけする前日の夜は絶対に眠れなかった。

私が今分かることは1つだけだった。それは、双葉は朝に強いということ。私はいつも双葉を孫のいるおじいちゃんおばあちゃんのように、見守ることしかしていなかった。

そんなこんな考えながら、私はゆっくりと廊下を歩き、リビングへと向かった。いくら顔を洗ったとは言え、まだ多少の眠気は残っていた。

歩き方は少しふらついており、完全に目は覚めていなかった。

リビングのドアを開けると、お母さんがキッチンで食器を洗っていた。水を流して食器を洗う音が、私にとっては少しうるさく感じた。食卓には、随分前に作って置いたまま放棄していると思われる、私の朝ごはんがあった。

朝ごはんくらい自分で用意できると思っていたが、お母さんがいつも仕事を夜遅くまでやっており、今日がお母さんにとって唯一の休みだと思うと、この朝ごはんが、なんだかありがたく感じてきた。

食卓の椅子に座り、目の前に置かれた朝ごはんを黙々と食べ始めた。勿論、ご飯は冷めていた。普段の私ならあまり美味しくなくて、すぐに食べるのをやめているレベルだった。

そして、お母さんは忙しいのか、或いは疲れているのか私に話しかけてくることは、一切無かった。

ご飯は当たり前だけど、味はする。

-✳-

食べ始めてから約10分後、全部食べ終わった私は、お母さんに食べ終わったお皿を渡して、自分の部屋に向かった。この後、やらなければならない課題があったからだ。

廊下を歩いている間、私はふと、双葉の事が頭に浮かんだ。双葉がまだ小学生の頃に、既に亡くなっている私と双葉のお父さんについて聞いてきたことがあった。

私が3歳の時、つまり双葉が産まれた時に、お父さんは亡くなった。何故亡くなったのか詳しい理由は分からないが、あの時から、お母さんは深夜まで仕事をするようになった。

私は双葉が聞いてきたあの時、私はこう答えた。

『お父さんは、双葉が産まれた時に死んじゃった』

そう答えた時の双葉の顔は、今でも覚えている。よく分からなさそうにしている顔、そして、どこか悲しそうな顔をした複雑な感情を抱いた顔だった。

部屋に着くと、ベッドの上の布団が先程起きたばかりの時のままだった。布団も片付けなければならない、課題もやらなければならないので色々やる事が多かった。

蒼葉「とりあえず布団片付けよ……」

私は、ベッドの前まで歩き、布団を整えて枕の位置を定位置に置いた。

布団を片付け終わった後にやる事は、課題だ。

自分から机に向かい、椅子に座り、課題をやり始める。以前なら面倒くさくて、こんなの後でもできると放置してしまい、結局できなかったということになっていた。

でも、流石にこんなことは避けたいと思い、私は机に向かって真剣に課題に取り組み始めた。

-✳-

課題を始めてから約15分程経った頃、私は課題のワークシートの全体を眺めてみた。やはり、少しだけしか書けていない。このクオリティだと、成績に大きなダメージを与えてしまう。私はそう思っていた。

なんだかんだ悩んでいると、玄関の方から扉が開く音がした。朝から友達と出かけに行った双葉が帰ってきたのだろうか?

扉の開いた音の正体が気になり、私は課題を中断して、部屋を出た。

転ばないように、階段をゆっくりと降りて行くと、やはり、朝から友達と出かけに行った双葉だった。

蒼葉「あれ?もう帰ってきたの?」

さすがの私も、この時間に帰ってくるのは想定外だった。昨日、双葉は朝の9時半に家を出ると言っていた。現在の時刻は午前11時半。

双葉「うん、あのね…蛍ちゃんがショッピングモールの中で体調崩しちゃってさ…」

どうやら、冬姫の妹である真白蛍ましろほたるが、双葉とショッピングモールで買い物をしている途中に、体調を悪くしてしまい、帰ってこなければならなくなったらしい。

双葉「蛍ちゃん、私と出かけるのが楽しみで相当無理してたみたい…」

蒼葉「そっか…」

後に、双葉を私の部屋まで連れてきて、詳しい話を聞かせてもらった。流石に、玄関前で喋るのはお母さんに注意される可能性がある。

詳しい話を聞いた結果、蛍はショッピングモール内で、熱を出してしまったらしい。正確な体温は、本人から聞いていない為、不明ではあるが、双葉が蛍の額に触れた感じ、38.0℃近くはあったと言っていた。

話を聞いた後、双葉は自分の部屋へと戻って行った。双葉は、部屋に戻る時まで、心配そうな顔をしていた。

余程心配なのだろう。まあ、38.0℃の熱を出しているからね…。もし、楓くんか冬姫がこれくらいの熱を出した場合、私は心配過ぎて、夜も眠れないだろう。

時刻はもう既に午後を迎えている。私は、やり残していた課題を再開した。

-✳-

蒼葉「えっと……ここはこうして…」

先程気になっていた玄関の音の正体が、双葉であることを知り、安心感と共に私は、課題に集中して取り組むことができた。

思ってた以上、課題はすぐに終わり、私は椅子の上に座りながら、思いっきり腕を伸ばした。「課題」という名の疲れが、一気に解放された気がした。  

蒼葉「ん~っ……!」

「課題を放棄する」という、あまり良くない事をしてしまったが、結局全て終えられたので、特に気にする必要は無かった。

そして、何よりも私を襲ったのは、疲れによる激しい眠気だった。お昼の時間なので、空腹状態ではあるが、別に空腹なんてどうでもよかった。

今1番思っていること、それは「寝たい」ということだった。

蒼葉「ふわぁ……」

私は、大きなあくびをして、そのまま自然と白のパーカーのフードを被り、深い眠りについていった……。

-✳-


(夢の中で)


『……好、、、きで……す!』

『……お姉、、ちゃ……ん、さよ……なら。そして、、、ありが、、とう……』

『……あ、、、あん……た…なん、、か……!』

『お……れは……も、、もう、、、だ、、駄目だ、……』

『ご、、ごめんね……わた、、私……も、、も、う、無理……なの……』

夢の中では、ノイズが走ったような、又は今後の何かを示唆しているような声がいくつも聞こえた。顔がはっきりと浮かばなかった為、誰なのかは、分からなかったが、少なくとも私の記憶の中にいる人だということは確信していた……。

-✳-

(目が覚めて)

不思議な夢を見た。私の記憶の中にいる人が助けを求めているのか、或いは私自身に何か呼びかけているのか、詳しいことは分からなかったが、聞こえた言葉は、鮮明に記憶の中に残っていた。

『……好、、、きで……す!』

『……お姉、、ちゃ……ん、さよ……なら。そして、、、ありが、、とう……』

『……あ、、、あん……た…なん、、か……!』

『お……れは……も、、もう、、、だ、、駄目だ、……』

『ご、、ごめんね……わた、、私……も、、も、う、無理……なの……』

1つ目のこの「好き」という言葉は、私の心に深く刺さった気がした。これは、私が楓くんがこのことを好きである、ということを示唆してる気がした。 

2つ目の言葉を聞いた時、幼いような感じの少女の声が聞こえた。その背景には、川が映っていた。

3つ目の言葉を聞いた時、私と歳が同じくらいの正体が少女の声が聞こえた。背景は山であり、その少女は血だらけだった。

4つ目のら言葉を聞いた時、今度は男の子の声だった。歳は私と同じくらいだろう。でも、今までの記憶と比べて、あまり鮮明では無かった。背景が黒だった。

5つ目の言葉を聞いた時、私の胸は一気に苦しくなった感じがした。4つ目と同じく、背景は鮮明では無かったが、白色だったのは覚えていた。

夢の中の私は、幸せそうではなかった……。
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