Loop✳Resonance

夜空奏音

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-重く消えない記憶(メモリア)-

Episode17 -8月4日-

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(双葉視点に移る)

現在時刻は午前2時。私は部屋にずっと閉じ籠もっており、一睡もしていない。眠くなるという事は無く、ずっと「父親の記憶」、「楽しかった思い出」が脳内を過っていた。

あれから私は食欲が無い。お姉ちゃんが毎朝、部屋の前に朝ご飯を置いてくれてるのは知っているが、身体が弱っていて、取りに行く事さえままならなかった。

頑張って這いつくばりながら、取りに行く事は可能だったが、それも私にとっては、一苦労だった。

私の身体は、常に激しい倦怠感、目眩、吐き気、頭痛に襲われている。

昨日まで、朝ご飯を少しは食べる事はできたが、しばらく経ってゴミ箱に吐き戻してしまった。

服は、以前警察署で着替えてから、1回も着替えていなかった。

隣のお姉ちゃんの部屋からは、何も音が聞こえない。恐らく、お姉ちゃんは寝ているのだろう。

その瞬間、私は激しい目眩と吐き気に襲われ、床にうずくまる。

​その時、突然、青い蝶が私の部屋に現れた。それは、はかなくも美しい、淡い光を放っていた。

双葉​「…蝶…?」

​私は、その不思議な蝶をぼんやりと見つめた。すると、その蝶は、ゆっくりと私の顔に近づいてきた。

​「触って…」

​それは、私の心を誘うかのように、儚く微笑んだ。私は、その蝶に、そっと手を伸ばした。

​そして、蝶が私の身体に止まった瞬間、私は、あの日の記憶を、鮮明に、体験することになった。

​私は、お父さんの視界にいた。

​そこには、私を抱きしめるお父さんと、楽しそうに笑うお母さんの姿があった。そして、お父さんは、私を抱きしめながら、私に優しく語りかけてくれた。

​「双葉、お父さんはずっとそばにいるからな…」

​しかし、その言葉が終わると、突然、目の前に、楓さんのお父さんが現れた。

​「すまん…!」

​楓さんのお父さんの顔は、激しく恐怖に歪んでいた。そして、その背後には、激しい水の流れがあった。

​「ドボォン!」という音と共に、お父さんは、私を抱きしめたまま、水の中へと沈んでいった。

​双葉「いやあああああああああ!」

​私は、その場で、激しく叫び声を上げた。私は、お父さんの死の真実を知ってしまった。

​それは、楓さんのお父さんが、誤って、お父さんを突き落としてしまったという事だった。

​双葉「そんな…嘘…」

​私は、この時、楓が裏切り者であることを確信した…。

​私は、恐怖と絶望に、身体を震わせる。

​双葉「…私を…連れて行って…」

​私の口から、無意識のうちに言葉が漏れた。それは、記憶の中のお父さんの声に、私自身が懇願しているかのようだった。

​「双葉、お父さんはずっとそばにいるからな…」

​その優しい言葉が、今、私にとっては呪いのように響く。

​私は、この時から、お父さんが眠る場所へ、「いつか、私も帰らなければならない」という、歪んだ確信を抱くようになった。

それは、もう二度と目が覚めない、静かで冷たい場所。この苦しみから解放されるための、唯一の道だと信じていた…。

-✳-

(蒼葉視点に移る)

深夜の2時、私は目が覚めて、トイレに行きたくなり、部屋から出た。

蒼葉「……ん……トイレ…」

すると、隣の双葉の部屋から悲鳴が聞こえた。

​双葉「いやあああああああああ!」

蒼葉「…ひゃっ!?双葉…!?」

私は焦って、双葉の部屋のドアを開けようとした。でも、双葉の部屋には鍵がかかっていた。

蒼葉「双葉…お姉ちゃんだよ…開けて…!」

私は双葉に必死に問い掛けたが、双葉は返事をしてくれなかった。私はとても怖かった。

蒼葉「双葉……双葉…!」

どうせいくら問い掛けても無駄だと、私は分かっていた。でも、双葉の事が心配な気持ち、双葉を助けたいという気持ちが強くなっていた。

蒼葉「お願い……開けて…!」

私は泣きながらも、ドアを叩き続けたが中からは反応はなかった。でも、微かに物音が聞こえていた。

蒼葉「双葉! お願い、開けて! 何があったの!? 叫び声が聞こえたよ……!」

​私は、喉がちぎれんばかりの声で叫び続け、木製のドアを拳が赤くなるほど叩いた。

返事はない。けれど、ドアの向こう側から、ズルリ……と、何かが床を這うような、絶望的に弱々しい音が聞こえた。

​蒼葉「双葉……そこにいるの? ねぇ、鍵を開けて……。お姉ちゃんが悪かったから。謝るから。……だから、独りで泣かないで」

​私の涙がドアの表面を濡らし、冷たく弾ける。

(双葉視点に移る)

​双葉「……あ……、……は……っ……」

​肺に、冷たい鉛が詰まったみたいに呼吸が苦しい。お姉ちゃんの叫び声が、水の中にいるみたいに遠く、ぼんやりと響いている。

私は這いつくばった。今の私にとって、冷たいフローリングは果てしなく広い砂漠のようだった。

ドアノブまで、あと数十センチ。たったそれだけの距離が、天国と地獄を隔てる壁のように遠い。  

​腕に力を込めようとするけれど、指先がピクリとも動かない。

何日も口にしていない身体は、もはや自分の意思に従うことを拒否していた。

視界がチカチカと火花を散らし、頭痛がハンマーで殴られたように脈打つ。

​双葉(お姉、ちゃん……。……助けて……。……ううん、来ないで……)

​心の中の二人の私が、激しく衝突する。会いたい。抱きしめてほしい。

でも、もし今ドアを開けて、お姉ちゃんの顔を見てしまったら。

お兄ちゃんのお父さんに殺された「私のお父さん」の記憶が、私の中から溢れ出して、お姉ちゃんの幸せをすべて壊してしまう。

​双葉「……っ……、く……」

​私は最後の力を振り絞り、ドアを背にするようにして、鍵の位置まで右手を伸ばした。 

ガリ…と爪がドアの表面を虚しく引っ掻く。カチリ、と鍵を回す、たった数ミリの力が、今の私には……残っていなかった。

​双葉「……あ……お父、さん……」

​伸ばした手は、重力に逆らえず床に落ちた。暗闇の中で、再び青い蝶が私の周りを静かに舞い始める。

それが、お迎えの合図のように見えて、私はゆっくりとまぶたを閉じた。

​(蒼葉視点に移る)

​蒼葉「双葉! 返事をしてよ! 双葉……っ!」

​ドアを叩く音だけが、深夜の廊下に虚しく響き渡る。一度だけ、ドアの内側からカサリ……と爪で引っ掻くような音がした気がした。 

でも、それきり、物音は完全に途絶えてしまった。

​静寂。

それは、死よりも深い沈黙だった。私はドアノブをがちゃがちゃと何度も回し、肩をぶつけてこじ開けようとした。

けれど、幼い私の力では、固く閉ざされたドアは一ミリも動いてはくれない。 

​蒼葉「……嫌。……嫌だよ、双葉……!」

​私はその場にへたり込み、ドアを背にして泣き崩れた。この一枚の板の向こうで、私の世界で一番大切な妹が、消えていこうとしている。

そんな予感が、暗闇の中から私を冷たく見つめていた。

-✳-

そして朝。一睡もできなかった私は、再び双葉の部屋へと向かった。

すると衝撃的な事が起きていた。あの双葉の部屋のドアが開いていたのだ。

蒼葉「えっ…なんで開いてるの…?」

恐る恐る部屋の中を覗いてみると、そこには衝撃的な光景があった。

ビリビリに破られた写真、そこは中に散らばっている小物類、乱れた布団、外れかけているカーテン、ずっと付いているエアコン。

まさに、双葉の部屋の中は、「双葉の冷たくなった心の中」を表していた。

蒼葉「えっ……なにこれ……」 

私は、絶望で涙が出てきた。幼い頃からあんなに元気だった唯一の妹が、今はこんなに悲惨な目にあっていたのだ。

私が双葉の部屋の前で立ち尽くしていると、後ろから声が聞こえた。

双葉「……おね…ちゃん……なに、してるの……?」

私が恐る恐る後ろを振り向くと、酷く痩せて、顔色を悪くした双葉がいた。

私は、思わず抱きしめようとした。でもその瞬間……。

(ドサッ…!)

蒼葉「…痛っ…!!」

双葉に思い切り腹を刺激された。私は、痛みに耐えながら、目の前の双葉を見てみると、前の笑顔なんて消え去っていた。

双葉「…邪魔」

双葉の鋭い声は、私の心の奥深くを抉った。そして、双葉はそのまま、私を押しのけて、部屋に入ってしまった。

バタン、と。重たい音を立てて、目の前でドアが閉ざされた。

先ほどまでの衝撃的な部屋の惨状と、妹のあまりにも冷たい拒絶。腹部の痛みよりも、心が粉々に砕け散る音の方が、今の私には大きく響いていた。

​蒼葉「……双葉、嘘でしょ……?」

​私は震える手で、スマホを握りしめた。もう、私一人ではどうしようもない。限界だった。

私は必死な思いで、楓くんと、そして先ほど冬姫から聞いたばかりの妹、蛍ちゃんにメッセージを送った。

​蒼葉『双葉の部屋のドアが開いた。でも、中がめちゃくちゃで……双葉も、まるで見知らぬ誰かみたいに冷たくて。私、もうどうしたらいいかわからない』

​すぐに返信が来たのは、楓くんからだった。

楓『今すぐ行く。蒼葉、一人で抱え込むな』

​そして、数分後。玄関のチャイムが激しく鳴り、そこには息を切らした楓くんと、どこか不安げな表情を浮かべた少女──蛍ちゃんが立っていた。

​楓「蒼葉、大丈夫か!?」

蒼葉「あ……楓くん。蛍、ちゃん……?」

​私のボロボロの姿を見て、蛍ちゃんは小さく息を呑んだ。

蛍「冬姫お姉ちゃんから話は聞いてるよ。双葉ちゃんのこと……私が話してみる」

蛍ちゃんは、同い年だからこそわかる何かがあるのかもしれない。彼女は私の横を通り過ぎ、さっき閉ざされたばかりの双葉の部屋の前に立った。

楓くんが私を支える中、蛍ちゃんはドア越しではなく、あえて鍵の開いたドアノブに手をかけた。

​蛍「双葉ちゃん、私だよ。蛍。……入るね」

​静かにドアが開く。そこには、先ほど私を拒絶した、あの冷たい瞳の双葉がいた。

蛍ちゃんは、荒れ果てた部屋の惨状に怯むことなく、真っ直ぐに双葉の元へ歩み寄った。

​蛍「双葉ちゃん、そんなに痩せちゃって……。お姉ちゃん、泣いてたよ。あんなにボロボロになって、あなたのことだけを考えてるお姉ちゃんを、あんな風に突き放すのが……今のあなたの『正解』なの?」

​蛍ちゃんの鋭くも、どこか寂しげな問いかけ。双葉の肩が、微かに震えた。それは、閉ざされた心の殻に、初めてヒビが入った瞬間だった。

-✳-

(蛍視点に移る)

私は、双葉ちゃんのことが、ただ心配でたまらなかった。普段、ポンコツで燥ぐお姉ちゃんが、あんなにも本気になるということは、重い事実が待っている。

蛍「双葉ちゃん、ご飯ちゃんと食べよ…?ね?」

私は、双葉ちゃんを刺激しないよう、双葉ちゃんの前に座って、慎重に交渉を始めた。

蛍「私さ、双葉ちゃんが元気じゃないと嫌なの。」

蛍「服も着替えよ?そして、お姉ちゃんにたくさん甘えてみて。」

私が服を着替えさせようと、双葉ちゃんの服に触れた瞬間……。

(パチッ!!)

蛍「きゃっ…!?」

私は、双葉ちゃんに強く弾かれた。

双葉「……うるさい」

双葉ちゃんが発したことは、ただそれだけだった。これは双葉ちゃんの本当の気持ちなのだろうか。私は、戸惑ってしまった。

蛍「ねぇ、双葉ちゃん。遊ぼう?みんなで海行った時みたいにさ?」

私のその言葉が、とうとう、双葉ちゃんの逆鱗に触れてしまった。

双葉「…もういい加減にしてよ!!」

双葉ちゃんが怒鳴った瞬間、彼女の顔色は青くなり、口を抑え始めた。

蛍「あっ…!」

双葉ちゃんは、今まで溜め込んでいた物を、全て戻してしまった。

-✳- 

(蒼葉視点に移る)

双葉が戻して、私と蛍ちゃんで協力して後処理をしたその後、蛍ちゃんは家に帰ってしまった。

私は楓くんと、今後の双葉についての作戦会議を始めた。

蛍「……ごめんなさい、蒼葉さん。結局、何もできませんでした…」

​申し訳なさそうに肩を落とす蛍ちゃんを玄関で見送り、私は再び静まり返ったリビングに戻った。

あんなに激しく、そして苦しそうに胃の中のものを吐き戻してしまった双葉。掃除を終えた後、彼女は再び、殻に閉じこもるように布団を被ってしまった。

​私と楓くんは、キッチンのテーブルで向かい合った。淹れたてのコーヒーから立ち上る湯気が、私たちの間に重く漂っている。

​蒼葉「楓くん……双葉、どうしちゃったんだろう。海の話をしただけで、あんなに……」

​私が震える声で切り出すと、楓くんは組んだ指をじっと見つめながら、慎重に言葉を選んだ。

​楓「……今の双葉ちゃんにとって、『楽しかった思い出』は、逆に今の自分を苦しめる毒になっちゃってるのかもしれない」

​楓くんの言葉が、私の胸に刺さった。かつての輝きが、今の暗闇をより深く際立たせてしまう。だから、彼女は必死に思い出を拒絶し、写真を引き裂いたのかもしれない。

​楓「作戦会議って言っても……今は無理に部屋に入らない方がいいのかもしれないな」

蒼葉「でも、このままじゃ双葉が死んじゃうよ……!」

​必死に食い下がる私に、楓くんは私の手を優しく包み込んだ。

​楓「まずは、冬姫にもう一度詳しく状況を共有しよう。あいつは双葉ちゃんの本音に近いところにいるはずだ。それに、今の双葉ちゃんに必要なのは『説得』じゃなくて、もっと別の……『何か』かもしれない」

​時計の針が重なり、お昼の12時を回った。楓くんも、ずっと私のために付きっきりでいてくれたけれど、彼には彼の生活がある。

​楓「蒼葉、少しは休めよ。俺、一旦帰るけど、何かあったらすぐ電話しろ。絶対だぞ」

​楓くんは玄関先で、私のクマのひどい顔を心配そうに覗き込み、軽く肩を叩いてくれた。

彼が去った後の家は、今まで以上に広く、冷たく感じられた。独りになったリビングで、私はスマホを手に取る。

楓くんの言う通り、今は冬姫に頼るしかない。でも、私の心のどこかで、あの冬姫の微笑みが、言いようのない不安を掻き立てていた。
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