【完結】死にたがり少女は過保護なヤクザの若頭に全肯定される~勘違い男の「光の暴力」は強面旦那様が排除します~

伊東園

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第9話 光と闇-走り出す運命-

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303号室。部屋には既に数人の男が集まり始めていた。

「……うわ……ほんとにいた」  「……まじで全裸じゃん……えろ……」 「……ほんとに鳴ちゃんだ……やば……」 

男達の下卑た視線が一糸まとわぬ僕に向けられる。 この状況に、僕の黒くドロドロした胸の渦巻きは、神経の昂りへと変換されていった。

「……ぁ……はやく……きて……」

パカッと見せつけるように足を開く。それを見た男達の目の色が変わったのが分かった。

「……やば……まじかよ……」 「……そんなのがまんできねぇよ」 

熱い塊が押し寄せ、思考が白く塗りつぶされていく。

「……んっ……んん……ちゅ……ちゅる……んんっ……んぅっ……」 「んんっ……じゅるっ……ん……じゅるる……んんっ……んぅっ…!」

 ◇

新宿。ホテル前。欲望を剥き出しにした男達がそこへと吸い寄せられるように集まっていく。

「……おいおいめっちゃ集まってんじゃねーかよー」 「……鳴ちゃん大人気だな」 「……部屋パンパンじゃん……早くヤリてー」

その喧騒を少し離れた場所から見つめる影があった。

「……なんや……えらい盛り上がっとんな」

なんでラブホなんかにこないな人だがりが出来とんのや。まぁどうだってええわ。
やけど俺のその考えとは裏腹に、俺の胸はザワザワと警鐘を鳴らしているようやった。

「……ちっ……なんやこの胸騒ぎは……いつもよりえらいざわつきよるわ……」

俺がタバコを取り出そうとした時、一人の男がこちらに近付いてきた。

「お兄さんも鳴ちゃん目当てっすか!」 
「……あ?」  

なんやこの軽いノリのガキは。よう俺なんかに話しかけてくんな。酒でも入っとんか?

「いやーすげぇっすよねーこの人だかり!みんな鳴ちゃんとヤリにきてるってまじ面白くねぇっすか」 
「なんや鳴ちゃんて……そんなもん知らんわ」 
「えぇっ!?まじすか!?これっすよこれ!」 
「……あ?」 

差し出されたスマホの画面を見て、俺の胸のざわつきがピタリと止まった。

(……この身体…………まさかな……いや……俺が見間違うはずあらへん……何回も抱いた…あの白いちっこい身体……) 

「……何をやっとんねんあいつは……破滅にも程があるで」 

 ◇

ホテルの自動ドアの前。人だかりの背後からドスの効いた声を浴びせる。

「……おい……どけ」 

「……は?……え……ヤクザっ!?やっ……やべぇっ!!」 

俺の姿を見るなり、そこにおった奴らが蜘蛛の子を散らしたように逃げ去った。

「……はっ……そないビビらんでええやろが」

 ◇

ピーンッ
3階です ドアが開きます

303号室の前。その中からは男達の欲望を剥き出しにした声と、パンパンと肌と肌が触れ合う音。そして壊れたように喘ぐひなの声が響き渡っていた。

俺は部屋の中に向けて、低く地を這う様な声で言い放った。

「……おい……そこ……道開けろ」 

「はぁ!?順番待ち……ひっ!?」 「やべぇっ……お前らっ……どけ!」

一瞬の喧騒の後、部屋を埋め尽くすほどいた男達の姿が霧散して消えた。

ベッドに残されたひなの身体は全身白濁塗れで、その下の白い肌の上には赤い花が大量に咲き誇っていた。

「……えらいお楽しみやったみたいやな……ひな……」 

「……ぅ…?」 

俺を見たひなの瞳は、いつもの虚ろで空虚な瞳とは違った。その瞳からは完全に光が消え失せ、暗く濁り切っとった。完全に飛んどるわ。

「……帰るぞ……ひな」 

俺はベッドの方へ近づいてひなを抱き上げようとした。すると下の方からカチャカチャと金属が擦れる音がした。下に目をやると、焦燥を含んだ白く細い指先が俺のベルトにかけられていた。

「……もうええ………ええで……ひな……」 
「……ぅ……んぅ……」

俺はベルトにかけられたひなの手の上に手を重ねた。それでもひなは必死になってバックルを外そうとする。

「……わかった……わかったから……もう大丈夫や……」

俺の熱を伝えるようにひなの頭に手を置く。するとひなが甘えたようにスリスリと俺の手に頭を擦り付けた。
 
「……こんな時でも甘えたさんなんか……お前は……」 

「ほら……帰るで……ひな……」

俺が着てたコートをひなに着せてやる。ひなのちっこい身体には俺のコートはでかすぎて、全身が完全に覆い隠せてもうた。

(着せるっていうか……巻いとるな……みのむしみたいや……) 

「……んぅ……」 
「……よっしゃ……ええ子や……」

ひながギュッと俺にしがみ付いてくる。そのままひなを抱き上げて部屋を後にした。

 ◇

ホテル前。そこはホテルから溢れ出た男達でごった返していた。

「……いやまじでやばかったんだって!まじでガチのヤツ!俺まじヤクザ見たの初めてだわ……まじ死ぬかと思ったー」

 ◇

「……なんだあれ……すげぇ人だかり……ヤクザ?」 

俺、彩月涼は野球部の奴らと飯を食って帰っていたところだった。すると視線の先に理解不能な光景が広がっていた。

「……え?……ひな……た?」 

黒い布に巻かれて全身を覆い隠された日向。そして何よりそれを抱きかかえている巨大な黒い影。

(え……なんだ……あれ……え………ヤク…ザ…?) 

「……なんであんなのに……お姫様抱っこ……されてんだ?」 

俺の頭の中は訳が分からない状況に完全に真っ白になりかけていた。でもそれを日向への想いが上回った。

「……いやいや混乱してる場合か!」

正気に戻った俺は、日向が乗せられた黒塗りの車目掛けて一直線に駆け出した。

「おい待てー!日向をどこに連れてく気だー!返せー!」

 ◇

車の中。外からなんか騒いどる声がする。

「……なんやあれ……頭いかれとる坊主やな……でも今…日向言いよったな……なんや……知り合いなんか?……まぁ今はそないなことどうでもええわ……」 
「……よっと……シートベルト……するで……ん……よし……ほな帰ろな……」

俺はひなの頭をポンポンと撫でた。するとそこから愛しい声がした。

「ん……えへ……」 

ふにゃりと笑ったその顔は、いつもよりどこか幼くてあどけなかった。

「……なんや……笑っとんか……ほんまお前は…………あかんわ……こんなんでも……可愛ええ思ってまう俺も……相当…毒されとんな………ちゅっ……」
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