平行線

ライ子

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第一章

人生暇つぶし

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「こてっちゃんってさぁ、休みの日とか、何してんの?」
「吉行さぁ、何でいつも俺にくっついて来るの?」
吉行は、虎徹の学生証を拾って以来、よく虎徹と行動を共にしていた。今日も、1.2時限の講義を一緒に受けていた。
「たまたまだって。同じ講義受けるんだから、しょうがないだろ?」
「まあ、そうだけどさ。」
「で、休みの日なんだけど、買い物付き合ってよ。」
「え?買い物ぐらい一人で行けよ。」
「梨花ちゃんと、デート?どこ行くの?その後でもいいし、梨花ちゃんが一緒でもいいし。」
「なんで、吉行もついて来んだよ。他の友達と行けばいいだろ?」
「だからー。俺、友達いないんだって。」
流れで、学食に着くと、
「今日は、ハンバーグでいいや。」
吉行が、食券機を指差した。
「え?俺が奢るの?」
「じゃあ、買い物付いてきてくれるなら、俺が奢るよ。」
なんだか、はめられた感じはしたが、吉行に、スタミナ定食をおごって貰った。虎徹は、いつも吉行のペースに乗せられてしまう。でも、不思議と悪くない気がしていた。

次の週末、朝から虎徹は吉行の買い物に付き合うことになった。
「で、何を買うの?」
「何を買おう…。」
「買う物決まってんじゃないの?」
「いや。何を買っていいかわかんないから、こてっちゃんに付き合ってもらってる。」
「プレゼントか何か?」
「うん。」
「誰に?」
「……。」
吉行は、恥ずかしそうに、もじもじしながら、小声で、
「杏奈さん。もうすぐ誕生日なんだ。」
と、言った。
「バイト一緒なら、何が欲しいか聞けばいいじゃん。」
「聞けないから、こてっちゃんに、相談してるんじゃん。」
「俺には、ぐいぐい来るくせに。」
「しょうがねえだろ。」
吉行は、本当に困った顔をしていた。虎徹も、女の子が欲しがる物なんて、全く検討がつかなかった。
「ちょっと待ってろ。」
梨花に電話して、来てもらうことにした。今日は、夕方までバイトだから、その後に落ち合うことになった。
「梨花が後で来てくれるから、じゃあ、一旦解散…。」
「カラオケでも行こうよ。暇つぶしに。」
吉行は、強引に虎徹をカラオケに連れて行った。
「こてっちゃん、何飲む?」
「コーラ。」
「すみませーん。コーラと生中ください。」
「吉行、昼間から飲むの?」
「えー。ダメ?今日、久しぶりの1日オフなんだよ。」
「そんなにバイトしてるの?」
「うん。だいたい週7で。」
吉行は、何でもないことのように、答えた。
「疲れない?倒れるぞ。」
「いいの。いいの。さぁ、歌うぞー。」
吉行は、2.3曲選曲して、勝手に歌い出した。なんて勝手なやつと、思った虎徹だったが、吉行の歌のうまさに驚いた。声が良かった。耳障りのよいハスキーボイス。低音は腹に響くような重さがあったが、高音は突き抜けるような清々しさだった。音程が全くぶれない。
「こてっちゃんは、何歌う?」
吉行の後に歌うのは、かなり気が引けた。
「俺はいいよ。吉行、歌、うまいんだな。」
吉行は、照れ笑いをしながら、生中をグビグビと、美味しそうに飲んだ。
結局、夕方までカラオケで過ごした。最初、吉行の歌のうまさに、圧倒されていた虎徹だったが、一緒に歌ったりしているうちに、すっかり楽しんでいた。そして、梨花から連絡をもらい合流した。
「吉行くん、虎徹、お待たせー。」
「ありがとう。バイト終わりに。」
「いいよー。杏奈先輩が喜びそうな物、知ってるんだ。」
梨花は、駅前の百貨店の化粧品売り場に向かった。梨花はともかく、完全に場違いな男ふたりは、居心地が悪そうだった。そんなふたりのことは無視して、楽しそうに、化粧品を見ていた。
「あっ。これこれ。」
梨花は、リップを手にした。透け感があるリップの中心には、小さい花がちりばめられていた。
「この前、杏奈先輩と話してて、いいなぁって、言ってたの。唇の温度によって色が変わるんだって。」
「へぇ。」
吉行が、興味深そうに見ていた。
「色が違うの?どういうこと?」
「ああ、お花の色?発色は、みんな同じだから、お花の色は好みかな?」
「じゃあ、これにしようかな。」
吉行は、淡いピンクの花が散りばめられたリップを買った。

買い物を終え、3人は、近くの居酒屋で飲むことにした。
「乾杯。」
「いやぁ、梨花ちゃんが来てくれて、助かったよ。」
「いえいえ。お役に立てたみいでよかったよ。」
梨花が、虎徹と吉行を見て、
「すっかり、仲良しだね。」
と、ニヤニヤしながら言った。
「そんなことねーし。」
「まあまあ。素直になりなよ、こてっちゃん。」
吉行は、虎徹の肩に腕を回した。
(本当に男かなぁ?こいつ…。腕とか、肩とか、体のつくりがすごい細いんだけど…。)
「梨花ちゃんは、どこでバイトしてるの?」
「私は、パン屋さんだよ。売れ残りのパンもらえるし、楽しいよ。」
「へぇ。こてっちゃんは、バイト何してるの?」
「俺は、運送屋で、荷物の仕分けとか。」
「ふぅん。大変?」
「それなりに。カフェよりは、体力使うかも。」
「俺は、バーのバイトと、掛け持ちしてる。」
「バーなんて、カッコイイ。私、行ってみたい。」
梨花が、興味津々で言った。
「いいよ。この後行く?」
「やったー。」
「吉行さぁ、何でそんなに働いてるの?」
「何でって、人生暇つぶしでしょ。ぼーっと、してるの好きじゃないんだよね。」
吉行は、何かに急いでいるような、時々寂しそうな顔をしていることもあったり、つかめないやつだと、虎徹は思った。
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