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10話 ドール・ジストン侯爵がやって来た

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 私はその日、自宅の屋敷で過ごしていた。婚約破棄をしてくれないドール様の屋敷に戻ることはあっても理由を付けては泊まることを拒否している。今の状態で彼の屋敷に泊まることは怖かったからだ。ウィルガさんも協力してくれて本日まではなんとか成功していた。


「国王陛下の調査はどうなっているかな……あれから何の連絡もないけど」

「時間が掛かっているんだと思うわ。相手は高名なドール様だもの。確実な証拠が出にくいのかもしれないし」


 ファラウも私の部屋に来ていた。というより、最近はこの屋敷に泊まっているけれど。もちろん同じ部屋ではないけれどね。ファラウは客室に泊まってもらっている。

 彼も今回の事態がどうなるのか気になっているようだ。一刻も早く、国王陛下からの返事が欲しいみたい。私と同じ気持ちね。

「ファラウが近くにいてくれると、安心するわ」

「ほ、本当かい? エレナ」

「ええ、本当よ。ありがとう、ファラウ」

「いや……そんなことは。君さえ良ければ、私はずっと一緒にいるよ。どうかな?」

「えっ……? いや、それは……ええと」


 考えようによってはまずい発言のように思えた。まるで、愛の告白のような……私は顔が赤くなっていくのを感じた。


「エレナ様、ファラウ様……そういうお話しは少々マズイのではないでしょうか? 失礼ながら申し上げます」

「あっ……そうでしたね」


 後ろから様子を見ていたウィルガが私達を諫めた。確かに……ファラウはフリーだけれど、私には婚約者がいるものね。ドール様……婚約者とは絶対に認めたくない相手だけれど。

 私は別れたつもりでいるからね……。


「と、とにかく! 私はいつまでもエレナの味方だからね。その辺りは覚えておいて欲しい!」

「え、ええ! わかったわ、ファラウ! ありがとう」


 なんだか二人とも焦ってしまっていた。お互いの顔を見れなく、言葉だけが加速しているような。変な空気が流れてしまった。でも、楽しい時間だった。あ~あ、こういう時間がずっと続いたら嬉しいのにな。


「失礼致します、エレナ様」

「はい、いいですよ。入ってください」


 そんな時、私の部屋を訪れたのはメイドの一人だった。


「どうかしましたか?」

「それが……ドール・ジストン侯爵が来ております……」

「なっ……!」


 こんな時にドール様が来ている!? マズイ……お父様は今は不在のはずだし。私が対応しなければならない。


「エレナ……どうするんだ? やはり会うのか?」

「会わないわけにはいかないから……仕方ないわ」

 このまま帰すことはできない。話の内容は分かっているけれど、対応しなければね……はあ、最悪だわ。
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