錬金術師だったけど、婚約破棄されました~屋敷の前で店を構えたら大成功した伯爵令嬢~

マルローネ

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8話 お店について その1

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「この薬をいただけますか?」

「毎度、ありがとうございます」

「私はこのアイテムを2ダースいただきたいのだけれど……」

「少々、お時間をいただいて宜しいでしょうか?」

「構わないですよ」


 あれからしばらくして、私の店はさらに忙しくなっていった。自らの領地で薬屋のチェーン店を作る貴族も訪れるようになったため、仕入れ元の様相も呈しているからだ。いえ、この店は仮店舗だし、個人経営のお店なんですけれど……。

「あの、少しよろしいですか?」

「なんでしょうか?」


 先ほど、私のアイテムを2ダース購入してくれた人に尋ねている。この方は薬屋のチェーン展開事業をしている、マグアイ・コスパ伯爵だ。伯爵自らが訪れているのが凄いけど、不思議な点があった。

「前にチェーン店舗を経営していると伺いましたが、私の店のアイテムだけではとても数が足りないと思うのですが……?」

「ええ、わかっております。これらのアイテムはあくまでも見本です」

「見本……?」

「はい、見本です。従業員を雇い、アイテムの複製作業をさせているのですよ。品質は当然、メドロア様ほどにはならないでしょうが、商品としては十分な物を作っております」

「な、なるほど……」


 やはり、伯爵様だけあって考えることが利益に傾いているのね。品質は落ちるけど、安いアイテムを大量に生産するってことか。薄利多売というやつかしら……確かにチェーン店舗にするなら、それがもっとも効率が良いだろうけれど。

「メドロア様、ご安心を。オニキス家にも利益が入るようにロイヤリティとして、売り上げの何パーセントかを上納いたしますよ」

「上納って……なんだか、怪しい雰囲気がするんですが……」

「ふふ、確かに。ですが、商売をする上では重要なことです。メドロア様も覚えておいた方が良いでしょう。そうでなければ、自らの才能を掠め取られてしまうかもしれませんよ?」


 マグアイ様はおそらく、私の為に言ってくれているのだろう。仕入れ元の様相を呈するようになって、仕入先からのロイヤリティ等がまったくない状態が続いた場合、言い方は悪いけれど、私の薬がただ売られているだけになってしまうからね。

 個人で使用するお客様はともかくとして、私の薬を他の店で出す予定の人々には、個別に話し合いをした方が良いかもしれないわね。

「そう言えば、メドロア様はアゼールト・ローマン公爵の下で働いていらっしゃったのですかな?」

「あ、はい……元婚約者でもありました」

「ほほう、その時に明確な給料は出ていたのですか?」

「一応出てはいましたが、4万ゴールド前後とかなり曖昧な数字でしたね。婚約者だったので、契約書なども交わしていませんでしたし……」

「ふ~む、それはいけませんな。体よく利用されていただけに思われます。それに月に4万ゴールド……ははは、これ程のアイテムを作れるお方を4万ゴールドで雇うとは、ローマン公爵のアイテム製造ラインは相当に潤っていたでしょうな」


 ま、まさか……役立たずとまでは言われなかったけれど、私の代わりは普通にいるみたいに言われていたけれど……。

「4万ゴールドというのは流石に安すぎる。5倍の20万ゴールドを支払ってもまだ、お釣りが来るレベルではないですかな」


 なんだかいつの間にか、コスパ伯爵との売り上げについての話し合いになっていた。とても興味のあるテーマではあるので、私も真剣に聞いていたけれど。

 それにしても、20万ゴールド……!? 一般的な国民の10倍の給料になるのだけれど……いやいや、流石にそれはおかしいわ。私はたくさんいる錬金術師の一人でしかないのだし。
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