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12話

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「なんだか、緊張するわね……」

「まったくだ。一体、レイナはどんなことをされているのか。うらやま……けしからん」

「ジェームズ? どういうこと?」


 馬車で護衛を伴いながらシーザー・カンタゴル侯爵の屋敷を訪れた。既に本日向かうことは伝えている。でも……なんだか、ジェームズの発言が気になる。楽しんでいるというか、レイナの状況に興味津々なような。

「い、いや! なんでもないさ! 気にしないでくれ、アリス」

「怪しい……うらやましいって言いかけてなかった?」

「そ、そんなことはないよ?」

「本当かしら……」

「本当だって……!」


 私はジェームズの目をじっと見つめた。なんだか顔が熱くなるのを感じるけれど気にしない。流石に幼馴染だけあって、ジェームズの気持ちはなんとなく理解できる。彼は以前から嘘を吐くのが下手だった。それだけ誠実だということだけれど。

 6年経った現在でもそれは変わっていないみたいね。

「と、とにかく! シーザー殿に直談判をしに行かないとな! 君の妹のレイナが心配だ!」

「直談判て……使い方が違うような」

 でも、確かにレイナが心配なことは間違いない。今はそちらに集中した方が良さそうね。私達はシーザー様の屋敷の正門から中へ入ることにした。



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「ジェームズ様、アリス嬢。ようこそお出で下さいました。どうぞ、ごゆっくりとお寛ぎください」

「ありがとう、シーザー殿」

「ありがとうございます、シーザー様」


 私と婚約破棄した時のシーザー様の態度とはまるで別人だった。表向きのおもてなしでしかないのは分かっているけれど、この辺りは流石に侯爵様なだけはあるわね。

 私達は応接室に招かれていた。

「ところで……レイナは居ないのですか?」

「レイナか? レイナは……」


 私の質問に少しだけ答えにくそうにしているシーザー様。ここへ来たのが私だけなら、彼はこのまま答えなかったかもしれない。でも今回は、ジェームズも一緒に居るからそういうわけにはいかなかった。

「レイナは粗相をおかしたので、少しだけ仕置きを行っているところだ。今は別室に待機させているよ」

「粗相? お仕置き……?」

「貴族としての自覚を持たせる、という意味だ」


 貴族としての覚悟を鍛える為の教育のことを言っているのかしら? でも、私はシーザー様の性格を知っている。彼がお仕置きと言うからには、相応のことが起こっているはずだ。普通の貴族が言うお仕置きとは違う。いえ、そもそもお仕置きなんて言葉が出る時点でおかしいけれど。

「……アリス、どうするんだ?」

「シーザー様、レイナに会わせてもらえますか?」

「レイナに……?」

「ええ、そうです。会わせてください」


 レイナを助けるというのもどうかとは思うけど……やっぱり気になるわ。私はこのまま強気に出ることにした。
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