王子殿下に救われたので、婚約破棄は認めます。さようなら

マルローネ

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1話

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「ヴェノム様、お呼びでございますか?」

「ああ、アニエ。来てくれたのか。礼を言うぞ」

「いえ、とんでもないことでございます」


 私はアニエ・ウィルバーク。侯爵令嬢に該当している。目の前の婚約者はヴェノム・サイランス侯爵だ。侯爵家の中ではもっとも権力が強いと言われているお方だ。病弱なお父上に代わって23歳という若さで侯爵になられた。私は彼の婚約者。17歳なので世間知らずを表に出さないようにしなくてはならない。

 今日はヴェノム様に呼び出されたのだった。


「本日は重大な話がある」

「重大な話でございますか?」

「ああ、そういうことだ」


 一体、なんだろうか? 想像もつかないけれど……ヴェノム様の表情は真剣だった。


「私はこの前のパーティーに出席していた姫と婚約しようと考えている」

「この間の姫……?」

「ああ」

 その催し物には私も出席していた。確か隣国との共同で開発していた河川事業が始動したことを祝うパーティーだったはず。隣国アーズール王国の姫君であるメリアス様が出席されていたわね。我がトラシェル王国との架け橋と呼ばれていたっけ。彼女と婚約関係になりたい貴族は非常に多いはずだ。

 でも、ヴェノム様が……あれ?


「どういうことでしょうか? 意味が分からないんですが……」

「私はお前との婚約を破棄して、メリアス王女と婚約をしたいと考えているわけだ」

「そ、そんな……」


 最初は冗談か何かだとは思ったけれど、彼の顔は笑っていない。嘘でしょ……?

「お前は肩書き的にも侯爵令嬢だし悪くはないのだが……隣国の王女であるメリアス様とは比較にならん。すまないな」

 ヴェノム様は謝っているけれど、まったく感情が籠っていなかった。信じられない……。

「ちょっと待ってください! この半年間の婚約は一体何だったのですか!? いきなり婚約破棄だなんて……」

「心配するな、アニエ。後で色々と文句を言われても困るからな。慰謝料などはしっかりと払ってやる。それで問題はないだろう」

「慰謝料の問題ではありません!」


 こんな身勝手な婚約破棄があるだろうか……彼は自分の権力をより高みに置くために私を捨てようとしているのだ。


「反論をするのは構わないが、ウィルバーク家の力で我がサイランス家に適うとでも思っているのか? 同じ侯爵家だからと言って調子に乗るなよ? ん?」

「そ、そんなつもりは……ヴェノム様……」


 権力を振りかざして来た。最早、彼にはまともに話し合うつもりがないようだ。私はその後も反論を続けていたが全く相手にされず、最終的には護衛の人達により強制的に屋敷の外へと出された。こんなことって……。
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