王子殿下に救われたので、婚約破棄は認めます。さようなら

マルローネ

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2話

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 ヴェノム様の突然の婚約破棄……それは私の中にとてつもないダメージを与えていた。


「どうしてヴェノム様があんなことを……信じられません……」

「悲しい気持ちは分かるぞアニエよ。悲しい時は涙を流しても良いのだぞ?」


 目の前にお父様がいらっしゃる……でも、私は涙を流すことは必死に堪えていた。涙を流してしまったら……私の、いえ、ウィルバーク侯爵家の敗北になってしまうと思えたから。お父様はそんな私を責めることはしなかった。


「ヴェノム・サイランス侯爵には強く抗議をしておく。しっかりと慰謝料も貰うから心配するな、アニエよ」

「それについては問題ありませんわ、お父様。彼は……ヴェノム様は慰謝料は支払うと言っていました」

「な、なんと……そうだったか」


 サイランス侯爵家としても無用な揉め事は避けたいはずだ。これからは、メリアス・アーズール王女殿下との婚約が待っているのだから。それをなんとしても成功させる必要があるはず。私達との揉め事は最小限にしたいのでしょうね。もしかしたら、こちらがごねれば慰謝料を多く貰うことができるかもしれない。

 でも、そんなことは些細なことだった。私の心に受けたダメージはそんなことでは決して癒されないのだから……。


「しかし……いきなり他国の王女と婚約をするとは、いったい何を考えているのだ? ヴェノム殿は……」

「そのままの意味だと思います。私と結婚するよりも、メリアス王女殿下と結婚する方が将来の為になると考えただけでしょう」


 むしろそのくらい単純な方が分かりやすいというものだ。ヴェノム様はまだ23歳の侯爵閣下……若さゆえの過ちが起きたと考える方が自然だろうか。


「信じられん……そんな短絡的な考えで。あのサイランス侯爵家が婚約破棄などと……」

「私もそう思います……」


 サイランス侯爵家はトラシェル王国内でも有名な家系だ。他国との親睦パーティーを開催した時には目玉になる家系でもある。それだけに信じられなかった……その当主であるヴェノム様が短絡的な婚約破棄を行ったことを。サイランス侯爵家は間違った人事をしてしまったのではないだろうか?


「しかし、深く考えても仕方あるまい。アニエは気分転換も含めて少し遠出をしてみてはどうかな?」

「遠出でございますか?」


 いきなり遠出と言われても……別荘は各地にあるけれど、意味もなく行く気にはなれなかった。

「お前には別件で仕事を与える。我がウィルバーク家も進めていた河川事業……現在の進捗状況を確認してきて貰いたいのだ」

「河川事業……なるほど、それなら承知いたしましたわ」

「うむ、よろしく頼むぞ」


 これはお父様なりの優しさなのだろう。近く行われるパーティー等に出席するのは酷だと判断しての。私はお父様に感謝した。
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