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5話

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「おや、誰かと思えば……」

「あら、エミリーじゃない。相変わらず貧相な格好をしているわね」

「ウィンド様……ヘルメス様……」


 侯爵家の二人組は私に気付くなり毒舌を吐いていた。せっかくジストと楽しく食事をしていたのに……。


「まさかお前程度の身分でこの新しいレストランに来ることができるとはな。驚きだよ」

「……なにか用ですか?」

「用がないと話しかけちゃいけないって言うの? 子爵令嬢は常識というものが分かっているのかしら?」


 とてもブーメランな発言だった。この二人こそ、常識を学ぶべきだと思うのだけれど。高位貴族で浮気をしている時点でお察しというやつかもしれない。そんなことを言うと大変なので黙っておくけれど。

「なにか言いたそうな顔をしているわね。遠慮せずに言ってもらっても構わないのよ?」

「では僭越ながら、私から言わせてもらいます」

「お前は誰だ?」


 割って入ったのはジストだった。軽く頭を下げている。


「私はジスト・オーウェンと申します。よろしくお願い致します」

「ジスト……? 聞かない名前ね。階級は何になるの?」

「貴族の階級で言いますと、男爵になります」

「ぷっ……!」


 すると二人は大笑いをし始めた。ウィンドもヘルメスも腹を抱えて笑っている。一体、なにがそんなに面白いのだろうか……?

「なにがそんなにおかしいのですか?」

「だって……だって! 子爵令嬢のエミリーよりも下の階級じゃない! そんな奴が私達に意見を言うなんて!」

「まったく笑わせてくれるな」


 二人はジストのことを馬鹿にしているようだった。ジストは黙っているけれど……最低な人達ね。階級だけでしか判断できないのかしら?
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