有能婚約者を捨てた王子は、幼馴染との真実の愛に目覚めたらしい

マルローネ

文字の大きさ
8 / 40

8話 煽り

 私は頭が痛くなってきた……目の前の光景をなんて形容して良いのか分からなかったからだ。口喧嘩、と言ってしまえばすぐに伝わるのだけれど、それにしてはあまりにも……。


 私の元婚約者であるフリック第三王子が、ルービック・キングダム侯爵と言い争いをしているのだから。しかも内容的に、キングダム侯爵の煽りにフリック様が顔を真っ赤にして怒っているような状態だった。


「サンマルト王国の恥だと……? 貴様、何を根拠にそんなことを言えるのだ!? 私は王位継承権第三位のフリック・サンマルトだぞ? 将来の国王は私になるかもしれんのだ!」

「ははははっ、これは傑作ですな! フリック王子殿下はなかなか面白いギャグを述べる才能が、おありのようだ」

「な、なんだと……!?」


 フリック様が劣勢に見えるのはおそらく気のせいではないはず。キングダム侯爵があんなに好戦的な人だとは思わなかったけれど、第三王子殿下に対してあんな物言いをして大丈夫なんだろうか? いくら侯爵様とはいえ……。まあ、権力という意味合いでは公爵の令嬢でしかない私よりは事実上、上になるだろうけど。


「フリック王子殿下、あなた様は私達貴族の名前を何人覚えていましたかな?」

「そ、それが何か関係があるのか……?」


 フリック様は答えようとしないわね。婚約者であるはずのシャーリー嬢も黙ったままだし……。本日はフリック様とシャーリー嬢の婚約記念パーティーみたいなもののはず。そう考えると、有名な貴族達が様々な理由で挨拶に来ているはず。その時に祝辞を述べるのか賄賂を提供するのか、単なる挨拶で終わるのか……その辺りは本当にまちまちだけれど。

 シャーリー嬢の無言の様子を見る限り、各貴族への対応は失敗したようね。


「関係あるでしょう? 臣下の名前を覚えるのは、上位者である王家の人間にとっては最低限のマナーのはずです。婚約者のシャーリー嬢にも頼っていたようでしたが……フルネームを言えた相手は、半分に到達しましたかな?」

「……」


 フリック様の沈黙……どうやら、名前を覚えていた貴族は半分に満たなかったようね。

「アルゼイ様……申し訳ありません。なんとお恥ずかしい……」


 私の徹夜で事前準備をしたサポートは、フリック様には全く届いていなかったようね。彼は私の苦労を継承してくれてはいなかった。私に婚約破棄をする時には、あんなに「誰でも出来る仕事をやったからと言って威張るな!」と叫んでいたのに……フリック様なら簡単に出来るとも言ってたっけ。


「いや、エリザ嬢の気持ちも分からなくはないが、全く気にすることではない。それよりも、同じ兄弟として恥ずかしいのは私の方だ……」


 アルゼイ様の気持ちはとても理解できていた。確かに同じ王族というカテゴリーで比べる貴族が居るだろうことも考えると、彼にもダメージが行きそうだし。


「エリザ嬢と別れたのは非常に勿体なかったのでは? そちらのシャーリー嬢は、エリザ嬢と比べると政務能力等が落ちるようですし」

「何を馬鹿なことを……! エリザなど居なくても、王位継承権争いに何の問題もない!」

「左様でございますか、フリック王子殿下。ですが、自分の名前もろくに覚えてもらっていない貴族達が、果たしてあなたを支持するでしょうかね? さらに、エリザ嬢とは婚約破棄をしたのですし。この状況で、兄上であるアルゼイ様達に勝てると考えているとは……素晴らしい自信家ですな。尊敬いたしますよ」

「ルービック・キングダム……随分と好き勝手言ってくれるじゃないか? その顔、しかと覚えたぞ?」

「おやおや、今度は脅しですかな? フリック王子殿下。この程度の煽りで取り乱すお方に、サンマルト王国の頂点が務まるとは、とても思えませんがね……」

「貴様……!」


 キングダム侯爵はどこまでも挑発的だった。本当に大丈夫かしら? フリック様は頭の出来はともかくとして、権力だけは無駄に持っているから……仕返しされないといいけれど。

 アルゼイ様と楽しく話していた矢先に垣間見た、フリック様とキングダム侯爵との口喧嘩。フリック様とシャーリー嬢は想像以上に仕事が出来ていないことが分かり、キングダム侯爵はとても好戦的だということが分かる結果となった。
感想 88

あなたにおすすめの小説

性格が嫌いだと言われ婚約破棄をしました

クロユキ
恋愛
エリック・フィゼリ子息子爵とキャロル・ラシリア令嬢子爵は親同士で決めた婚約で、エリックは不満があった。 十五歳になって突然婚約者を決められエリックは不満だった。婚約者のキャロルは大人しい性格で目立たない彼女がイヤだった。十六歳になったエリックには付き合っている彼女が出来た。 我慢の限界に来たエリックはキャロルと婚約破棄をする事に決めた。 誤字脱字があります不定期ですがよろしくお願いします。

2度目の人生は好きにやらせていただきます

みおな
恋愛
公爵令嬢アリスティアは、婚約者であるエリックに学園の卒業パーティーで冤罪で婚約破棄を言い渡され、そのまま処刑された。 そして目覚めた時、アリスティアは学園入学前に戻っていた。 今度こそは幸せになりたいと、アリスティアは婚約回避を目指すことにする。

いつまでも変わらない愛情を与えてもらえるのだと思っていた

奏千歌
恋愛
 [ディエム家の双子姉妹]  どうして、こんな事になってしまったのか。  妻から向けられる愛情を、どうして疎ましいと思ってしまっていたのか。

悪役令嬢にされたので婚約破棄を受け入れたら、なぜか全員困っています

かきんとう
恋愛
 王城の大広間は、いつも以上に華やいでいた。  磨き上げられた床は燭台の光を反射し、色とりどりのドレスが揺れるたびに、まるで花畑が動いているかのように見える。貴族たちの笑い声、楽団の優雅な旋律、そして、ひそやかな噂話が、空気を満たしていた。  その中心に、私は立っていた。  ――今日、この瞬間のために。 「エレノア・フォン・リーベルト嬢」  高らかに呼ばれた私の名に、ざわめきがぴたりと止む。

捨てられたなら 〜婚約破棄された私に出来ること〜

ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
長年の婚約者だった王太子殿下から婚約破棄を言い渡されたクリスティン。 彼女は婚約破棄を受け入れ、周りも処理に動き出します。 さて、どうなりますでしょうか…… 別作品のボツネタ救済です(ヒロインの名前と設定のみ)。 突然のポイント数増加に驚いています。HOTランキングですか? 自分には縁のないものだと思っていたのでびっくりしました。 私の拙い作品をたくさんの方に読んでいただけて嬉しいです。 それに伴い、たくさんの方から感想をいただくようになりました。 ありがとうございます。 様々なご意見、真摯に受け止めさせていただきたいと思います。 ただ、皆様に楽しんでいただけたらと思いますので、中にはいただいたコメントを非公開とさせていただく場合がございます。 申し訳ありませんが、どうかご了承くださいませ。 もちろん、私は全て読ませていただきますし、削除はいたしません。 7/16 最終部がわかりにくいとのご指摘をいただき、訂正しました。 ※この作品は小説家になろうさんでも公開しています。

【完結】離縁したいのなら、もっと穏便な方法もありましたのに。では、徹底的にやらせて頂きますね

との
恋愛
離婚したいのですか?  喜んでお受けします。 でも、本当に大丈夫なんでしょうか? 伯爵様・・自滅の道を行ってません? まあ、徹底的にやらせて頂くだけですが。 収納スキル持ちの主人公と、錬金術師と異名をとる父親が爆走します。 (父さんの今の顔を見たらフリーカンパニーの団長も怯えるわ。ちっちゃい頃の私だったら確実に泣いてる) ーーーーーー ゆるふわの中世ヨーロッパ、幻の国の設定です。 32話、完結迄予約投稿済みです。 R15は念の為・・

そちらがその気なら、こちらもそれなりに。

直野 紀伊路
恋愛
公爵令嬢アレクシアの婚約者・第一王子のヘイリーは、ある日、「子爵令嬢との真実の愛を見つけた!」としてアレクシアに婚約破棄を突き付ける。 それだけならまだ良かったのだが、よりにもよって二人はアレクシアに冤罪をふっかけてきた。 真摯に謝罪するなら潔く身を引こうと思っていたアレクシアだったが、「自分達の愛の為に人を貶めることを厭わないような人達に、遠慮することはないよね♪」と二人を返り討ちにすることにした。 ※小説家になろう様で掲載していたお話のリメイクになります。 リメイクですが土台だけ残したフルリメイクなので、もはや別のお話になっております。 ※カクヨム様、エブリスタ様でも掲載中。 …ºo。✵…𖧷''☛Thank you ☚″𖧷…✵。oº… ☻2021.04.23 183,747pt/24h☻ ★HOTランキング2位 ★人気ランキング7位 たくさんの方にお読みいただけてほんと嬉しいです(*^^*) ありがとうございます!

【完結】時戻り令嬢は復讐する

やまぐちこはる
恋愛
ソイスト侯爵令嬢ユートリーと想いあう婚約者ナイジェルス王子との結婚を楽しみにしていた。 しかしナイジェルスが長期の視察に出た数日後、ナイジェルス一行が襲撃された事を知って倒れたユートリーにも魔の手が。 自分の身に何が起きたかユートリーが理解した直後、ユートリーの命もその灯火を消した・・・と思ったが、まるで悪夢を見ていたように目が覚める。 夢だったのか、それともまさか時を遡ったのか? 迷いながらもユートリーは動き出す。 サスペンス要素ありの作品です。 設定は緩いです。 6時と18時の一日2回更新予定で、全80話です、よろしくお願い致します。