14 / 40
14話 重要な舞踏会 その2
しおりを挟む
「エリザ・ガーランド公爵令嬢、お久しぶりやな。元気にしとりましたか?」
「は、はい……ファブナー・エッセル公爵。エッセル公爵もお元気そうで何よりでございます」
私はシリカとファブナー様の二人と会っていた。ファブナー様に挨拶をするけれど、このお方の独特な口調には未だに慣れない。ファブナー様の先祖は東方から来たのだそうで、その口調は先祖からの名残りなんだとか。本当かどうかは分からないけど。
「アルゼイ王子殿下、お久しぶりでございますな。お元気そうで嬉しいですわ」
「ありがとうございます、エッセル公爵。エッセル公爵もお元気そうですね」
「そらもう……僕なんて、元気さだけしか誇れるところがありませんからね」
重要な舞踏会にも関わらず、ファブナー様は平常運転のようだった。いえ、本人は至って真面目なのは分かっているけれど、話し方にどうしても違和感を持ってしまう。ファブナー様曰く、この方言は抜けないのだとかなんとか。あと、彼の国ではそういう方言で話す貴族も多いらしく、自然体を許してこその国家という方針があるらしい。
公爵であるファブナー様はその最先端ということなんだと思う。
「姉さま、相変わらず固いんだから。もっと、ファブナー様みたいに自然体でいればいいのに……」
「そう簡単にはいかないわよ、まったく」
シリカは私の隣に立ちながら、欠伸をしていた。ファブナー様と一緒だからって、気が抜けているわね……。これから、他の貴族の方々とも挨拶が控えているというのに。よ~し、少しだけからかってみようかな。
「それにしても……シリカは、エッセル公爵と仲が良くて羨ましいわね。あまり、迷惑を掛けないようにしなさい」
「姉さまこそ、気負い過ぎてアルゼイ王子殿下の前で恥をかかないようね。スペックは申し分ないんだから、緊張し過ぎないこと。わかった?」
「なっ……!」
軽くいなされてしまった……いけない、何か言ってやらないと。微妙に誉め言葉が入っているのが嬉しいと感じてしまったことが悔しい。
「シリカはエッセル公爵のことしか考えられないんだから、この間だって……」
「姉さま正解。私はファブナー様のことしか考えられないのよ。流石は私の姉さまですね!」
「シリカ、あなた……」
シリカはまったく恥ずかしがっている素振りを見せていない。とても自然体だった。しかも「姉さま」って少しだけ呼び方を変えているし。ファブナー様もいらっしゃるから、公式の場の雰囲気に少し合わせてるのかしら? なんとも中途半端なのが気になるけれど……。
それにしても……ダメだ、シリカを恥ずかしがらせる方法が思いつかない。全部余裕で返されてしまいそうなのが悔しい……。
「ははは、シリカ嬢と仲が良いのだな。姉妹の仲が良いのは貴族としても、重要だと思うぞ?」
「アルゼイ様……仲が良いというのでしょうか。最近、分からなくなってきました」
「何を言ってるのよ、姉さま。こんなに姉さまのことを愛しているのに」
「はいはい、わかったわ。ありがとう」
「適当に言ってるでしょ、もう……!」
「ははははっ、ええやんええやん。こういう雰囲気は貴族としては珍しいやん。やっぱり、舞踏会は楽しまないといけませんからな、ほんまに」
ファブナー様が陽気に声を出していたけれど、それに真っ先に反応したのはアルゼイ様だった。
「そうですね、エッセル公爵。両国間の親交もこのくらい楽しめるものになれることを、祈っておりますよ」
「僕もそう願ってますわ、よろしゅうお願いします」
サンマルト王国とエラルド王国……両国間の架け橋にシリカがなれれば、一気に友好関係は進みそうだけどね。果たしてどうなるかしら。さて、そろそろ他の貴族の方々がにも挨拶を……と、思った時だ。「それ」は起こった。
「フリック王子殿下……まさか、この舞踏会に出られているとは」
「キングダム侯爵か。ふふふ、だからなんだと言うのかな?」
なんだか、前にも見た光景がそこにはあった。キングダム侯爵とフリック王子殿下が話していたのだ。でも、今回はフリック様は余裕そうにしているわね。前とは違う雰囲気を醸し出している。もしかしたら、随分と成長したのかもしれない。隣に立っているシャーリー嬢にも余裕が感じられるし。
「は、はい……ファブナー・エッセル公爵。エッセル公爵もお元気そうで何よりでございます」
私はシリカとファブナー様の二人と会っていた。ファブナー様に挨拶をするけれど、このお方の独特な口調には未だに慣れない。ファブナー様の先祖は東方から来たのだそうで、その口調は先祖からの名残りなんだとか。本当かどうかは分からないけど。
「アルゼイ王子殿下、お久しぶりでございますな。お元気そうで嬉しいですわ」
「ありがとうございます、エッセル公爵。エッセル公爵もお元気そうですね」
「そらもう……僕なんて、元気さだけしか誇れるところがありませんからね」
重要な舞踏会にも関わらず、ファブナー様は平常運転のようだった。いえ、本人は至って真面目なのは分かっているけれど、話し方にどうしても違和感を持ってしまう。ファブナー様曰く、この方言は抜けないのだとかなんとか。あと、彼の国ではそういう方言で話す貴族も多いらしく、自然体を許してこその国家という方針があるらしい。
公爵であるファブナー様はその最先端ということなんだと思う。
「姉さま、相変わらず固いんだから。もっと、ファブナー様みたいに自然体でいればいいのに……」
「そう簡単にはいかないわよ、まったく」
シリカは私の隣に立ちながら、欠伸をしていた。ファブナー様と一緒だからって、気が抜けているわね……。これから、他の貴族の方々とも挨拶が控えているというのに。よ~し、少しだけからかってみようかな。
「それにしても……シリカは、エッセル公爵と仲が良くて羨ましいわね。あまり、迷惑を掛けないようにしなさい」
「姉さまこそ、気負い過ぎてアルゼイ王子殿下の前で恥をかかないようね。スペックは申し分ないんだから、緊張し過ぎないこと。わかった?」
「なっ……!」
軽くいなされてしまった……いけない、何か言ってやらないと。微妙に誉め言葉が入っているのが嬉しいと感じてしまったことが悔しい。
「シリカはエッセル公爵のことしか考えられないんだから、この間だって……」
「姉さま正解。私はファブナー様のことしか考えられないのよ。流石は私の姉さまですね!」
「シリカ、あなた……」
シリカはまったく恥ずかしがっている素振りを見せていない。とても自然体だった。しかも「姉さま」って少しだけ呼び方を変えているし。ファブナー様もいらっしゃるから、公式の場の雰囲気に少し合わせてるのかしら? なんとも中途半端なのが気になるけれど……。
それにしても……ダメだ、シリカを恥ずかしがらせる方法が思いつかない。全部余裕で返されてしまいそうなのが悔しい……。
「ははは、シリカ嬢と仲が良いのだな。姉妹の仲が良いのは貴族としても、重要だと思うぞ?」
「アルゼイ様……仲が良いというのでしょうか。最近、分からなくなってきました」
「何を言ってるのよ、姉さま。こんなに姉さまのことを愛しているのに」
「はいはい、わかったわ。ありがとう」
「適当に言ってるでしょ、もう……!」
「ははははっ、ええやんええやん。こういう雰囲気は貴族としては珍しいやん。やっぱり、舞踏会は楽しまないといけませんからな、ほんまに」
ファブナー様が陽気に声を出していたけれど、それに真っ先に反応したのはアルゼイ様だった。
「そうですね、エッセル公爵。両国間の親交もこのくらい楽しめるものになれることを、祈っておりますよ」
「僕もそう願ってますわ、よろしゅうお願いします」
サンマルト王国とエラルド王国……両国間の架け橋にシリカがなれれば、一気に友好関係は進みそうだけどね。果たしてどうなるかしら。さて、そろそろ他の貴族の方々がにも挨拶を……と、思った時だ。「それ」は起こった。
「フリック王子殿下……まさか、この舞踏会に出られているとは」
「キングダム侯爵か。ふふふ、だからなんだと言うのかな?」
なんだか、前にも見た光景がそこにはあった。キングダム侯爵とフリック王子殿下が話していたのだ。でも、今回はフリック様は余裕そうにしているわね。前とは違う雰囲気を醸し出している。もしかしたら、随分と成長したのかもしれない。隣に立っているシャーリー嬢にも余裕が感じられるし。
125
あなたにおすすめの小説
婚約破棄された氷の令嬢 ~偽りの聖女を暴き、炎の公爵エクウスに溺愛される~
ふわふわ
恋愛
侯爵令嬢アイシス・ヴァレンティンは、王太子レグナムの婚約者として厳しい妃教育に耐えてきた。しかし、王宮パーティーで突然婚約破棄を宣告される。理由は、レグナムの幼馴染で「聖女」と称されるエマが「アイシスにいじめられた」という濡れ衣。実際はすべてエマの策略だった。
絶望の底で、アイシスは前世の記憶を思い出す――この世界は乙女ゲームで、自分は「悪役令嬢」として破滅する運命だった。覚醒した氷魔法の力と前世知識を武器に、辺境のフロスト領へ追放されたアイシスは、自立の道を選ぶ。そこで出会ったのは、冷徹で「炎の公爵」と恐れられるエクウス・ドラゴン。彼はアイシスの魔法に興味を持ち、政略結婚を提案するが、実は一目惚れで彼女を溺愛し始める。
アイシスは氷魔法で領地を繁栄させ、騎士ルークスと魔導師セナの忠誠を得ながら、逆ハーレム的な甘い日常を過ごす。一方、王都ではエマの偽聖女の力が暴かれ、レグナムは後悔の涙を流す。最終決戦で、アイシスとエクウスの「氷炎魔法」が王国軍を撃破。偽りの聖女は転落し、王国は変わる。
**氷の令嬢は、炎の公爵に溺愛され、運命を逆転させる**。
婚約破棄の屈辱から始まる、爽快ザマアと胸キュン溺愛の物語。
「役立たず」と婚約破棄されたけれど、私の価値に気づいたのは国中であなた一人だけでしたね?
ゆっこ
恋愛
「――リリアーヌ、お前との婚約は今日限りで破棄する」
王城の謁見の間。高い天井に声が響いた。
そう告げたのは、私の婚約者である第二王子アレクシス殿下だった。
周囲の貴族たちがくすくすと笑うのが聞こえる。彼らは、殿下の隣に寄り添う美しい茶髪の令嬢――伯爵令嬢ミリアが勝ち誇ったように微笑んでいるのを見て、もうすべてを察していた。
「理由は……何でしょうか?」
私は静かに問う。
「価値がない」と言われた私、隣国では国宝扱いです
ゆっこ
恋愛
「――リディア・フェンリル。お前との婚約は、今日をもって破棄する」
高らかに響いた声は、私の心を一瞬で凍らせた。
王城の大広間。煌びやかなシャンデリアの下で、私は静かに頭を垂れていた。
婚約者である王太子エドモンド殿下が、冷たい眼差しで私を見下ろしている。
「……理由を、お聞かせいただけますか」
「理由など、簡単なことだ。お前には“何の価値もない”からだ」
悪役令嬢の私、計画通り追放されました ~無能な婚約者と傾国の未来を捨てて、隣国で大商人になります~
希羽
恋愛
「ええ、喜んで国を去りましょう。――全て、私の計算通りですわ」
才色兼備と謳われた公爵令嬢セラフィーナは、卒業パーティーの場で、婚約者である王子から婚約破棄を突きつけられる。聖女を虐げた「悪役令嬢」として、満座の中で断罪される彼女。
しかし、その顔に悲壮感はない。むしろ、彼女は内心でほくそ笑んでいた――『計画通り』と。
無能な婚約者と、沈みゆく国の未来をとうに見限っていた彼女にとって、自ら悪役の汚名を着て国を追われることこそが、完璧なシナリオだったのだ。
莫大な手切れ金を手に、自由都市で商人『セーラ』として第二の人生を歩み始めた彼女。その類まれなる才覚は、やがて大陸の経済を揺るがすほどの渦を巻き起こしていく。
一方、有能な彼女を失った祖国は坂道を転がるように没落。愚かな元婚約者たちが、彼女の真価に気づき後悔した時、物語は最高のカタルシスを迎える――。
婚約者様への逆襲です。
有栖川灯里
恋愛
王太子との婚約を、一方的な断罪と共に破棄された令嬢・アンネリーゼ=フォン=アイゼナッハ。
理由は“聖女を妬んだ悪役”という、ありふれた台本。
だが彼女は涙ひとつ見せずに微笑み、ただ静かに言い残した。
――「さようなら、婚約者様。二度と戻りませんわ」
すべてを捨て、王宮を去った“悪役令嬢”が辿り着いたのは、沈黙と再生の修道院。
そこで出会ったのは、聖女の奇跡に疑問を抱く神官、情報を操る傭兵、そしてかつて見逃された“真実”。
これは、少女が嘘を暴き、誇りを取り戻し、自らの手で未来を選び取る物語。
断罪は終わりではなく、始まりだった。
“信仰”に支配された王国を、静かに揺るがす――悪役令嬢の逆襲。
お前との婚約は、ここで破棄する!
ねむたん
恋愛
「公爵令嬢レティシア・フォン・エーデルシュタイン! お前との婚約は、ここで破棄する!」
華やかな舞踏会の中心で、第三王子アレクシス・ローゼンベルクがそう高らかに宣言した。
一瞬の静寂の後、会場がどよめく。
私は心の中でため息をついた。
私との婚約を破棄して問題ばかり起こす妹と婚約するみたいなので、私は家から出ていきます
天宮有
恋愛
私ルーシー・ルラックの妹ルーミスは、問題ばかり起こす妹だ。
ルラック伯爵家の評判を落とさないよう、私は常に妹の傍で被害を抑えようとしていた。
そんなことを知らない婚約者のランドンが、私に婚約破棄を言い渡してくる。
理由が妹ルーミスを新しい婚約者にするようなので、私は家から出ていきます。
辺境は独自路線で進みます! ~見下され搾取され続けるのは御免なので~
紫月 由良
恋愛
辺境に領地を持つマリエ・オリオール伯爵令嬢は、貴族学院の食堂で婚約者であるジョルジュ・ミラボーから婚約破棄をつきつけられた。二人の仲は険悪で修復不可能だったこともあり、マリエは快諾すると学院を早退して婚約者の家に向かい、その日のうちに婚約が破棄された。辺境=田舎者という風潮によって居心地が悪くなっていたため、これを機に学院を退学して領地に引き籠ることにした。
魔法契約によりオリオール伯爵家やフォートレル辺境伯家は国から離反できないが、関わり合いを最低限にして独自路線を歩むことに――。
※小説家になろう、カクヨムにも投稿しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる