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40話 理想的な家庭
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「アルゼイ様、色々ありましたが……なんとか、方向性が見えてきたでしょうか?」
「そうだな、エリザ。これも君のおかげだよ」
「いえ、私なんて肝心な時には何も出来ませんでしたし……」
多少は動けていたのかもしれないけれど、シリカやシャーリー嬢、ジェイド王子殿下など、肝心な部分で働いてくれたのは別の人々である。私は結局……何もしていなかったのではないだろうか。
サポート能力が高いことをフリック様と婚約していた時に知って、それを彼に否定されて落ち込んで、またシリカやアルゼイ様にフォローされて立ち直って。なんだか、周りの方々に支えられるようにして、今に至る気がする。
「アルゼイ様」
「どうしたんだ、エリザ?」
「私はこれから、アルゼイ様の将来の妻として、謙虚さを第一のスローガンにしたいと存じます」
「どうしたんだ、急に?」
「いえ、人間は調子に乗るのが一番危険だと悟りましたので……」
「エリザが調子に乗っていたとはとても思えないが……」
アルゼイ様はこのように言ってくれるけれど、心の中では調子に乗っていた時があったように思える。自分の能力を過信しているところだったりとかね。謙虚になり過ぎるのは問題かもしれないけれど、自分は優秀だとかそういう考えはなるべく持たず、ありのままに生きて行こうと思う。
「まあ、エリザの覚悟はよく分かったよ。それでは、私からも構わないか?」
「はい……なんでしょうか、アルゼイ様。……きゃあっ!」
先ほどまでジェイド王子殿下と話していたパーティー会場で、アルゼイ様は大胆にも私を抱き寄せて来たのだ。私は思わず、変な声を出してしまう。
「あらあら、お盛んですね~~~」
シリカのそんな言葉が聞こえて来たと同時に、周囲の貴族達も私達を見てニヤニヤと笑い始めていた。いやまあ、私達は婚約関係にあるのだから、こういうことをしても問題はないけれど……もう少し、時と場合を弁えてもらいたい、かも。これは……後で確実にシリカにからかわれるパターンに入っているわね。
「エリザ……」
「はい、アルゼイ様」
「私は必ず、君のことを大切にしていく。二人でこれから共に、末永く暮らしていこう」
「畏まりました、アルゼイ様。私も同じ気持ちでございます」
アルゼイ様の覚悟が伝わってくるような気がした……ジェイド王子殿下も、少し離れたところから笑っているようだわ。
「エリザ、今の君にこういうことを言うのもあれだが……」
「は、はい。なんでしょうか?」
「私が国王になった暁には君は王妃になるわけだ。つまり……次代の国王候補を生んでもらうことになるわけでだな」
「そうなりますね……つまり、アルゼイ様のようなお方を産めば良いということですね?」
「いや、まあ……一応はそうなるか。責任重大かもしれないが、しっかりとサポートしていくので、そこは安心してくれ」
アルゼイ様は優しくおっしゃってくれている。でも、その部分については心配していなかった。なぜなら、シリカだって、他国で同じようなポジションに就くかもしれないのだから。少し違うけれど。
「大丈夫ですよ、アルゼイ様。私はアルゼイ様のことを信じておりますので……一生、付いて行きます。だから、これからもよろしくお願いいたしますね?」
「ああ、エリザ。全ての貴族達が羨むような家庭を築き上げていこうじゃないか」
「はい!!」
誰もが羨むおしどり夫婦か……それはそれで理想的かもしれない。国の最高権力者がそんな家庭を築き上げれば、それは配下の者達の全てに波及するからね。
アルゼイ様との理想的な家庭……それは簡単そうに見えて、難しい道のりなのかもしれない。でも、アルゼイ様とならきっと目指せると思う。私はそんな確信を確かに持っていた──。
おしまい
「そうだな、エリザ。これも君のおかげだよ」
「いえ、私なんて肝心な時には何も出来ませんでしたし……」
多少は動けていたのかもしれないけれど、シリカやシャーリー嬢、ジェイド王子殿下など、肝心な部分で働いてくれたのは別の人々である。私は結局……何もしていなかったのではないだろうか。
サポート能力が高いことをフリック様と婚約していた時に知って、それを彼に否定されて落ち込んで、またシリカやアルゼイ様にフォローされて立ち直って。なんだか、周りの方々に支えられるようにして、今に至る気がする。
「アルゼイ様」
「どうしたんだ、エリザ?」
「私はこれから、アルゼイ様の将来の妻として、謙虚さを第一のスローガンにしたいと存じます」
「どうしたんだ、急に?」
「いえ、人間は調子に乗るのが一番危険だと悟りましたので……」
「エリザが調子に乗っていたとはとても思えないが……」
アルゼイ様はこのように言ってくれるけれど、心の中では調子に乗っていた時があったように思える。自分の能力を過信しているところだったりとかね。謙虚になり過ぎるのは問題かもしれないけれど、自分は優秀だとかそういう考えはなるべく持たず、ありのままに生きて行こうと思う。
「まあ、エリザの覚悟はよく分かったよ。それでは、私からも構わないか?」
「はい……なんでしょうか、アルゼイ様。……きゃあっ!」
先ほどまでジェイド王子殿下と話していたパーティー会場で、アルゼイ様は大胆にも私を抱き寄せて来たのだ。私は思わず、変な声を出してしまう。
「あらあら、お盛んですね~~~」
シリカのそんな言葉が聞こえて来たと同時に、周囲の貴族達も私達を見てニヤニヤと笑い始めていた。いやまあ、私達は婚約関係にあるのだから、こういうことをしても問題はないけれど……もう少し、時と場合を弁えてもらいたい、かも。これは……後で確実にシリカにからかわれるパターンに入っているわね。
「エリザ……」
「はい、アルゼイ様」
「私は必ず、君のことを大切にしていく。二人でこれから共に、末永く暮らしていこう」
「畏まりました、アルゼイ様。私も同じ気持ちでございます」
アルゼイ様の覚悟が伝わってくるような気がした……ジェイド王子殿下も、少し離れたところから笑っているようだわ。
「エリザ、今の君にこういうことを言うのもあれだが……」
「は、はい。なんでしょうか?」
「私が国王になった暁には君は王妃になるわけだ。つまり……次代の国王候補を生んでもらうことになるわけでだな」
「そうなりますね……つまり、アルゼイ様のようなお方を産めば良いということですね?」
「いや、まあ……一応はそうなるか。責任重大かもしれないが、しっかりとサポートしていくので、そこは安心してくれ」
アルゼイ様は優しくおっしゃってくれている。でも、その部分については心配していなかった。なぜなら、シリカだって、他国で同じようなポジションに就くかもしれないのだから。少し違うけれど。
「大丈夫ですよ、アルゼイ様。私はアルゼイ様のことを信じておりますので……一生、付いて行きます。だから、これからもよろしくお願いいたしますね?」
「ああ、エリザ。全ての貴族達が羨むような家庭を築き上げていこうじゃないか」
「はい!!」
誰もが羨むおしどり夫婦か……それはそれで理想的かもしれない。国の最高権力者がそんな家庭を築き上げれば、それは配下の者達の全てに波及するからね。
アルゼイ様との理想的な家庭……それは簡単そうに見えて、難しい道のりなのかもしれない。でも、アルゼイ様とならきっと目指せると思う。私はそんな確信を確かに持っていた──。
おしまい
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