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12話 身勝手な頼み事 その2
しおりを挟む「とにかく、婚約破棄の件はもう済んだことなのでエメリ。お前の能力を貸して欲しい」
「いや、ルドルフ様……私の能力はもう必要ないと言いましたよね?」
「何事にも手違いというものはあるさ。重労働を課している金鉱山や鉄道現場の者達からは文句が出ているのだ」
それは完全に自業自得だと思うけど……意味もなく従業員の労働環境を悪くしたりすれば、反発されるのは当たり前の話だし。ルドルフ様もそうだけど、ラグディ様も予想していなかったのかしら?
もしそうなのだとしたら、公爵家とは思えない失態ね。
「リシアもそう思うだろう?」
「うふふ、そうですわね……従業員の皆さんは可哀想だと思っておりますわ」
「ん……?」
リシア様の言葉は予想していたものよりも柔らかだった。ルドルフ様が選んだ相手だから、平民軽視をしているのかと思ったけれど、そうでもないのかしら?
「リシア、どういう意味だ?」
「言葉の通りですわ、ルドルフ様。私の本音としては、従業員の方々は気の毒だと思っております。そちらのエメリ嬢と考え方は近いかもしれませんわね」
「おいおい、いきなり何を言いだすんだ? この前は私の考えに賛同していただろう?」
「うふふふ……それよりも、エメリ嬢が話を進めたそうに、こちらを見ておりますわ」
上手い感じに話を濁したリシア様だったけど、その真意はよく分からなかった。どういうことだろう……?
「む、むう……まあいい。それよりもエメリ。私のところに戻り、聖女としての能力を発揮して欲しいのだ。よろしく頼んだぞ」
「……」
「……」
私もお父様も思わず無言になってしまっていた。ルドルフ様はまだ、私達に命令する権限があると思い込んでいるようだ。そんな権限はとっくに消失しているのに……。
「仮に私達……いえ、違いますな。娘のエメリが聖女の能力を行使するのだとして、どのくらいの給料を想定されているのですかな?」
「えっ……給料だと?」
「給料……?」
ルドルフ様もラグディ様も予想外の言葉が返って来たような顔になっていた。給料の話が出ることを想定していなかったと言うの? この二人は本当に……あ、リシア様が頭を抱えているようだわ。
まさか、私を雇うのは良いけれど、タダ働きをさせるつもりじゃないでしょうね……。
「まさか、タダ働きを想定していたのですか?」
「い、いや……決してそういうわけではないが……」
「では、いくらで雇うつもりなんですか?」
私は問い詰めるように二人に質問してみた。どのみち、宮殿内での仕事があるから引き受けることはないのだけれど、二人の出す待遇には興味があったからだ。ちなみに、フラック様は月に10万ルベールを出してくれる。
「そ、そうだな……月の給料は1万ルベールでどうだろうか?」
「1万……」
予想はしていたけれど、現在の給料の10分の1だ。1万ルベールというのは、民間人の間ではそこまで低い給料というわけではないけれど……婚約破棄をした相手を連れ戻す待遇としては、低すぎると言えるだろうか。
そもそも、フラック様のお出しくださる給料の10分の1の段階で、私をどういう風に見ているか分かるからね。ルドルフ様はまったく反省していないのだろう。
リシア様はその給料額を聞いて、溜息を漏らしているようだった。
彼女は一体、何を思っているのだろうか……?
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