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2話
しおりを挟む私は妹のニエル、オルテガ様に裏切られたことをお父様に話した。しかし、お父様はオルテガ様の家系との摩擦を恐れたのか、期待できることは言ってくれなかった。
「済まない、セラ。お前が悲しんでいることは分かっているが、私にも立場というものがあるのでな……」
「お父様……」
お父様は弱々しく言った。確かにコーラル伯爵家の今後を考えれば、オルテガ様のモンス侯爵家と争うのは避けた方が良いけれど。それに、妹がオルテガ様に嫁ぐのであれば、お父様からすれば願ったりといったところかしら?
私は何も言うことが出来なかった。妹に裏切られ、お父様にも見限られた印象が強まってしまった。
それから2週間以上が経過した。私は婚約破棄を認めたわけではないのに、なぜかお父様とオルテガ様の間で婚約破棄の手続きが進められたようだ。一応、慰謝料はモンス侯爵家から支払われたようだけれど、そんなことはどうでも良かった。
「私はフリーになったのよね……しかも、強制的に……」
「セラ様、心中お察しいたします」
「ありがとう、マルナ」
メイドであり私の幼馴染でもあるマルナが元気付けてくれた。彼女は私の味方をしてくれているけれど、立場上、お父様たちを悪く言うことが出来ない。自分の仕事がかかっているのだから、当然と言えばそれまでだけれどね。
「悲しみをお持ちかと思われますが、なにか気分転換をなされた方がよろしいと思います」
「気分転換、か。難しいわね……パーティーに出席する気分でもないし」
いくらフリーになったとは言っても、私は婚約破棄をされた身だ。すぐにそんな気分にはなれなかった。
「私も同行いたしますので、行ってみませんか? セラ様」
「マルナ……」
マルナは私を元気付けようとしてくれている。そんな彼女の想いを無下にするのも嫌だ。私は仕方なしに頷いた。
「そうね、確かに気分転換はしたいと思っていたし。出てみようかしら」
「畏まりました。それではパーティーの予定日を決めておきますね」
「ありがとう、マルナ。お願いするわ」
ひょんなことからパーティー出席が決まってしまった。しかし、これは運命的な出会いの第一歩だったのだ。この時の私はまだ分かっていなかったけれど。
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