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9話

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 私とクラレンス第四王子殿下は、レベル4相当の舞踏会会場から出て、そのままレベル5相当の舞踏会会場に戻った。なんだか一瞬、視線のようなものを感じたけれど、気のせいだったのかしら……?


「あらあら、お二人とも……怪しいですわね。どちらにしけこんでいらっしゃったのですか?」

「ソアラ姉さま……?」

「ソアラ嬢……あなたにそう言われると、恥ずかしくなってしまうな……」

「これは申し訳ありませんでしたわ、クラレンス様」

「いや、別に構わないのだが……」


 ソアラ姉さまはクラレンス第四王子殿下と仲良さそうに話していた。まあ、ソアラ姉さまは、フォックス・マゼラン大公殿下の婚約者であるから、クラレンス様と親しくしていても不思議ではないんだけれど。でも、不思議なことがあった。姉様が席を外した後にクラレンス様が私のところに来たわけなので……。


「もしかしてソアラ姉さま……嵌めましたか?」

「嵌めた? どういう意味かしら?」

「どういう意味かは、ソアラ姉さまが一番良く分かっていると思いますが……」


 ソアラ姉さまは私の質問に対して、全く動揺している素振りを見せていない。私が疑っているのは、クラレンス様を私に会わせたのは、彼女の差し金なのではないか? ということだけれど……。


「うふふふふ、レミュラ。クラレンス様と仲良くなったみたいで良かったわ」

「姉さま……」

「私は嬉しいわよ? さてさて、今後はどういう展開に転んでいくのかしらね?」

「……」


 ソアラ姉さまは、もう完全に確信犯だった。私が勘付いていることにも、確実に気付いているだろう。ソアラ姉さまは私にクラレンス第四王子殿下を差し向けた。そして、ある程度の仲を築いたと確信した。ここまでが、彼女の思い描いたシナリオかしら?

 う~ん、流石はソアラ姉さまだけれど、姉さまの考え通りに行動してしまったのは、悔しいわね。

「レミュラ、少しだけ気分は紛れたかしら? さっきまでのあなたは、婚約破棄をかなり引きずっているように見えたから」

「あ、それは……姉さま」


 ソアラ姉さまから飛んでくる気遣いの言葉と言えばいいのか。もしかしたら、ボイド様のことを一刻も早く忘れさせる為に、クラレンス第四王子殿下と引き合わせてくれたのかな? いえ、優し過ぎる姉さまの性格からすれば、そっちの可能性の方がずっと高いわね。

「ありがとうございます、姉さま。少しではありますが、気分が晴れたように思います」

「そう、なら良かったわ」

「私はレミュラの役に立てた……ということでいいのかな? ソアラ嬢」

「はい、もちろんでございますわ。感謝いたします」

 ソアラ姉さまは、クラレンス様に深々と挨拶をしていた。このやり取りで、ソアラ姉さまの頼みを聞いて、クラレンス様が私に話しかけて来たのだと分かるわね。でも、気分転換にもなったし、貴重な王族の方との接点を持てて良かったと思う。クラレンス様はとても気さくな方、という印象が強く出ていたし、同年代だし。


「それから、婚約破棄の件なのだが……よければ、詳しく聞かせてもらえないか?」

「クラレンス様……?」


 クラレンス様のその切り返しには、ソアラ姉さまも意外そうな表情になっていた。私とボイド様の婚約破棄に彼が興味を持ったということになるわね。そういえば、さっきの会場で感じた視線だけれど、ボイド様のものだったような気がする。
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