婚約者が幼馴染のことが好きだとか言い出しました

マルローネ

文字の大きさ
1 / 7

1話

しおりを挟む

「テレーズ、私と別れて貰おうか」


 これが貴族学園の教室内で言われた言葉だった。言った相手は私の婚約者であり、アドマンド王国の第6王子殿下であるビスタ様だ。ちなみにテレーズは私のことで、私は伯爵令嬢という立場になっている。


「どうしてですか? いきなり……婚約破棄?」

「そういうことだ。まあ、付いて行けない事態だろうが仕方ないことなんだ」


 まさか教室内でビスタに振られることになるとは思っていなかった。でも、悲しい気持ちにはならない。別に彼のことが好きというわけではないから。彼との婚約が決まったのは数年前のことだ。まだ私もビスタも幼かった時に許嫁という形で婚約したのだ。

 それから一緒の学園に通うようになり、登校も一緒だったけれどビスタのことを好きになることは出来なかった。なぜだろうって? それは彼の性格が好きではなかったからだ。


「テレーズの立場としては、王子である私との婚約破棄は悲しいことだろうが……分かってくれるな?」

「困りますね。マイウ家にとってもマイナスイメージが付いてしまいますし……」

「それは仕方のないことだろう。私という至高の存在と婚約関係にあったことを誇りに思って生きて行ってほしい」


 ビスタは自分の地位にこだわり過ぎているのだ。だから、この数年間、何度も何度も高圧的な態度を取られた。私のことを下に見る発言も多かったわね。自分との婚約を神に感謝しろだとか本当に色々言われたわ。

 正直に言ってしまえば、第6王子なんて王家からすれば大した存在ではない。一応は王子という肩書きの為に、周りは敬語を使うけれど。だからこそ、ビスタを調子づかせる結果になったのだと思う。


「どうして婚約破棄なんですか?」

「私は幼馴染のマリア・フォーミルと結婚したいからだ」


 彼の話は幼馴染と結婚するから別れるというものだった。マリアという人物は確か高位貴族の人のはずだけれど、この学園内の生徒でもあったはず。ビスタとは幼馴染だったのね。幼馴染という点では私もギリギリそれになるはずでは? それにしても……。


「マリア様のことが好きなんですか?」

「その通りだ。彼女とは生まれた時からの間柄でな。本当の愛情に気付いてしまったのさ」


 その後、とても長い二人の馴れ初めを聞かされてしまった。別に興味なんかなかったけれど。まあ、その馴れ初め話を聞く限り、マリアのことを愛しているのは本当みたいだから仕方ないのかもしれない。しっかりと手続きを踏んでくれて慰謝料を渡してくれるなら……あれ、でもそんな理由で婚約破棄なんてできるのかしら? 


「しかし、私は王家の人間だ。1度決まった婚約を破棄にすることは容易ではない」

「ですよね。じゃあ、どうするんです?」

「心苦しいことだが、お前には敵になってもらう」

「えっ?」


 なんかビスタから聞こえてはいけない言葉が聞こえたような……あれ? 敵になるって言った?


「テレーズ、どうしてお前はマリアを虐めていたんだ? ん?」

「は? なんですかいきなり……」


 なにこの問い詰めは……それにビスタの表情が明らかに変化している。私がマリアを虐めていた? 何のこと?


「テレーズ、これは決して許されることではないぞ。しばらく投獄させてもらおうか」


 ビスタが意味のわからないことを話している。それと同時に教室に何人かの兵士が入って来た。この人たちってビスタの護衛の人では……どうして急に?
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

私の物をなんでも欲しがる義妹が、奪った下着に顔を埋めていた

ばぅ
恋愛
公爵令嬢フィオナは、義母と義妹シャルロッテがやってきて以来、屋敷での居場所を失っていた。 義母は冷たく、妹は何かとフィオナの物を欲しがる。ドレスに髪飾り、果ては流行りのコルセットまで――。 学園でも孤立し、ただ一人で過ごす日々。 しかも、妹から 「婚約者と別れて!」 と突然言い渡される。 ……いったい、どうして? そんな疑問を抱く中、 フィオナは偶然、妹が自分のコルセットに顔を埋めている衝撃の光景を目撃してしまい――!? すべての誤解が解けたとき、孤独だった令嬢の人生は思わぬ方向へ動き出す! 誤解と愛が入り乱れる、波乱の姉妹ストーリー! (※百合要素はありますが、完全な百合ではありません)

私の婚約者様には恋人がいるようです?

鳴哉
恋愛
自称潔い性格の子爵令嬢 と 勧められて彼女と婚約した伯爵    の話 短いのでサクッと読んでいただけると思います。 読みやすいように、5話に分けました。 毎日一話、予約投稿します。

とっても短い婚約破棄

桧山 紗綺
恋愛
久しぶりに学園の門を潜ったらいきなり婚約破棄を切り出された。 「そもそも婚約ってなんのこと?」 ***タイトル通りとても短いです。 ※「小説を読もう」に載せていたものをこちらでも投稿始めました。

婚約破棄とはどういうことでしょうか。

みさき
恋愛
「お前との婚約を破棄する!」 それは、出来ません。だって私はあなたの婚約者ではありませんから。 そもそも、婚約破棄とはどういう事でしょうか。 ※全三話 ※小説家になろうでも公開しています

婚約破棄からの復讐~私を捨てたことを後悔してください

satomi
恋愛
私、公爵令嬢のフィオナ=バークレイはアールディクス王国の第2王子、ルード様と婚約をしていましたが、かなりの大規模な夜会で婚約破棄を宣言されました。ルード様の母君(ご実家?)が切望しての婚約だったはずですが?その夜会で、私はキョウディッシュ王国の王太子殿下から婚約を打診されました。 私としては、婚約を破棄された時点でキズモノとなったわけで、隣国王太子殿下からの婚約話は魅力的です。さらに、王太子殿下は私がルード殿下に復讐する手助けをしてくれるようで…

好きな人ができたので婚約を解消して欲しいと言われました

鳴哉
恋愛
婚約を解消して欲しいと言われた令嬢 の話 短いので、サクッと読んでいただけると思います。

婚約者を奪っていった彼女は私が羨ましいそうです。こちらはあなたのことなど記憶の片隅にもございませんが。

松ノ木るな
恋愛
 ハルネス侯爵家令嬢シルヴィアは、将来を嘱望された魔道の研究員。  不運なことに、親に決められた婚約者は無類の女好きであった。  研究で忙しい彼女は、女遊びもほどほどであれば目をつむるつもりであったが……  挙式一月前というのに、婚約者が口の軽い彼女を作ってしまった。 「これは三人で、あくまで平和的に、話し合いですね。修羅場は私が制してみせます」   ※7千字の短いお話です。

僕のお姫様~愛情のない両親と婚約者に愛想を尽かして婚約破棄したら平民落ち、そしたら目隠しをした本当の末姫に愛された~

うめまつ
恋愛
もう我が儘な婚約者にうんざりだ。大人しかった僕はとうとうブチキレてしまった。人前で、陛下の御前で、王家の姫君に対して大それたことを宣言する。 ※お気に入り、栞ありがとうございました。 ※婚約破棄の男視点→男に非がないパターン

処理中です...