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2話
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私はミュール子爵家に戻って来た。お父様に事の顛末を伝える。
「なんと……モトレー・クリオス伯爵が婚約破棄を!?」
「はい、お父様。私も抵抗はしたのですが、脅されて危険だったので……申し訳ありません」
「いや、気にすることはない。モトレー様に逆らうと本当に危なかったかもしれないからな。無事で良かったよ、エリス」
お父様はあまりの事態に肩を落としていた。それもそのはず、せっかく伯爵家との婚約が決まったのだから。お父様としても嬉しかったはずだ。それがこんな無茶な婚約破棄で終わりを告げてしまうなんて……あまりにも酷過ぎる。
「モトレー様はナープ令嬢と浮気をしていたのですが、それをバラすなと言っていました。バラした場合はミュール子爵家が終わるとも……」
「なんということだ。そんな脅しが通用するとでも思っているのか」
「ですが、お父様。モトレー様は伯爵でありその権力は相当なものと聞きます。下手な抵抗は逆効果になると思われるのですが……」
お父様に無茶をして欲しくはなかった。本当にミュール子爵家が崩壊してしまうかもしれないから。婚約破棄をされたのは悲しいことだけれど、それで家がなくなってしまうなんて耐えられなかった。私だけの問題で終わるならそれが一番マシなはずだし。
「確かに伯爵に逆らう力は私にはないが……しかし、可愛い娘が酷い目に遭ったのに放っておく親がいると思うのか?」
「で、ですが……下手をしたら本当にマズいことになってしまいます!」
「私の怒りが収まらないんだ、エリス。ここは国王陛下に直談判をしてみようと思っている」
「国王陛下にですか? そんなことが……」
国王陛下は国の最高権力者だ。貴族の中でも会えるのは上位貴族だけとなっている。子爵家ではそもそも会う事すら難しい。私達の味方になってくれる保証はないはず……。
「大丈夫なんでしょうか、お父様。失礼ながら、国王陛下が味方をしてくれるとは思えないんですが」
「お前は今の国王陛下のことを深く知らないからそうなってしまうだろう。しかし、現在の陛下は以前の陛下とは違っている。私はそう実感したよ」
「何かあったのですか?」
随分、国王陛下のことを知っている口振りだった。少し不思議に感じる。
「まあ、色々とあったのだよ。まさか、その時の出会いがこうして役に立つ時がくるとは思わなかった。現在の陛下ならば話を聞いてくれるだろう」
「そ、そうなんですか……」
やや心配だったけれど、お父様は信じているようだった。以前の陛下は私達のことを見下しているような感じだったけれど。今の陛下は大丈夫ということなのだろうか? やっぱり不安の方が大きいわね。
「なんと……モトレー・クリオス伯爵が婚約破棄を!?」
「はい、お父様。私も抵抗はしたのですが、脅されて危険だったので……申し訳ありません」
「いや、気にすることはない。モトレー様に逆らうと本当に危なかったかもしれないからな。無事で良かったよ、エリス」
お父様はあまりの事態に肩を落としていた。それもそのはず、せっかく伯爵家との婚約が決まったのだから。お父様としても嬉しかったはずだ。それがこんな無茶な婚約破棄で終わりを告げてしまうなんて……あまりにも酷過ぎる。
「モトレー様はナープ令嬢と浮気をしていたのですが、それをバラすなと言っていました。バラした場合はミュール子爵家が終わるとも……」
「なんということだ。そんな脅しが通用するとでも思っているのか」
「ですが、お父様。モトレー様は伯爵でありその権力は相当なものと聞きます。下手な抵抗は逆効果になると思われるのですが……」
お父様に無茶をして欲しくはなかった。本当にミュール子爵家が崩壊してしまうかもしれないから。婚約破棄をされたのは悲しいことだけれど、それで家がなくなってしまうなんて耐えられなかった。私だけの問題で終わるならそれが一番マシなはずだし。
「確かに伯爵に逆らう力は私にはないが……しかし、可愛い娘が酷い目に遭ったのに放っておく親がいると思うのか?」
「で、ですが……下手をしたら本当にマズいことになってしまいます!」
「私の怒りが収まらないんだ、エリス。ここは国王陛下に直談判をしてみようと思っている」
「国王陛下にですか? そんなことが……」
国王陛下は国の最高権力者だ。貴族の中でも会えるのは上位貴族だけとなっている。子爵家ではそもそも会う事すら難しい。私達の味方になってくれる保証はないはず……。
「大丈夫なんでしょうか、お父様。失礼ながら、国王陛下が味方をしてくれるとは思えないんですが」
「お前は今の国王陛下のことを深く知らないからそうなってしまうだろう。しかし、現在の陛下は以前の陛下とは違っている。私はそう実感したよ」
「何かあったのですか?」
随分、国王陛下のことを知っている口振りだった。少し不思議に感じる。
「まあ、色々とあったのだよ。まさか、その時の出会いがこうして役に立つ時がくるとは思わなかった。現在の陛下ならば話を聞いてくれるだろう」
「そ、そうなんですか……」
やや心配だったけれど、お父様は信じているようだった。以前の陛下は私達のことを見下しているような感じだったけれど。今の陛下は大丈夫ということなのだろうか? やっぱり不安の方が大きいわね。
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