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1話

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「セリア……非常に残念だ。まさかお前がこんなことをしていたなんてな」

「こんなこと? 一体なんのこと?」


 貴族が通う学院でいきなり話しかけて来たのは、婚約者であり我が国の王子殿下でもあるレントだった。学院内でイケメンという声も多いとかなんとか……まあ、私としてはどうでもいいことなんだけどね。

 そんな彼が教室に勢いよく入って来たかと思うと、いきなり叫び出したわけで……正直、意味がわからなかった。


「とぼけるのもいい加減にしてもらおうか」

「とぼける? いきなりどうしたのよ。レント……?」

「こいつを見ろ!」


 と言って彼は隣に立っている少女を私に見せて来た。あれ……あの子って多分、同じ学院に通っている子よね。酷く脅えているけれど……どうしたのかしら?

「この子は私の大切な女性。幼馴染のウィンベルだ! お前は彼女にいじめを働いていたな!」

「なっ? いじめ……!? どういうこと……?」

「とぼけるな! 彼女はいじめを受けたと言っているんだ! セリアに受けたので間違いないな、ウィンベル?」

「は、はい……レント様」


 ウィンベルは私を見ながら頷いていた。ええ……ほぼ会ったこともないような人物にいきなりいじめをされた、とか言われても困るんだけれど。どうなっているのかしら……?


「お前は昔から気に入らなかったが、今回の件で決心がついた。お前とは婚約破棄だ! しっかりと慰謝料も請求するから覚悟しておけ!」

「なっ……婚約破棄……!?」


 レントの言った言葉に私は思わず立ってしまった。意味の分からないいじめの加害者にされて、さらにレントに婚約破棄を言われているのだから。

「婚約破棄ってどういうこと!? そんなの出来るわけないじゃない! 私達の婚約はかなり前から決まっていたのよ?」

「許嫁の関係……もともと私は嫌だったのだ。だが、今回はウィンベルの件で許しがたい理由もできた。これで晴れて婚約破棄ができるというものだな」

「いやだから……」


 私は侯爵令嬢に該当しており、私とレントも子供の頃からの婚約者ということになる。お互い恋愛感情がないのはそうなんだけれど……婚約破棄が簡単にできるわけはない。しかも、こんな濡れ衣でなんて猶更納得できない。しかも、婚約破棄をする側のレントが慰謝料を請求するって言ってるし……。

 でも、レントは婚約破棄を譲らなかった。こういう頑固なところは昔から変わらないわね、ホントに。それにこのウィンベルという子……一体、どういうつもりなのかしら?
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