上 下
6 / 17

6話

しおりを挟む
「まさか教会に閉じ込められることになるとはね……予想外だった」

「ごめんなさい、フィリップ。私のために……」

「気にしないでよ、セリア。俺が勝手にやったことなんだから」

「ありがとう……」


 私達は見張りつきの教会内部に閉じ込められることになった。見張りの生徒は特殊警棒を携帯している……私達が脱走しそうになったら、あれで叩かれるのかしら? 普通に骨折とかしそうだけど。


「一体、何が始まるのかしらね。見張りの人達といい、ただごとではない感じ」

「レントは目立つことが好きだからね。派手に事を起こそうとしているのかもしれないね」


 連れて来られたのが教会というのが気になる。私達の生徒全員を祝福してくれる神様が祀られているんだけど……神の奇跡とかで助けてくれないかな? ていうか、神聖な教会に警棒を持っている人間がいる時点で、神様は冒涜されている気がするけどね。


「無駄な会話はやめておけ。お前達に会話は許可されていないぞ?」

「退屈なんだよ。それにどうしてこんなところに連れてこられているのか、理由を聞くのも駄目なのかい?」

「無駄口は叩くなと確かに言ったぞ? 抵抗する場合は暴力も許可されているんだが……」

「……」


 明らかに脅しの言葉だった。見張りの二人は私達を侯爵令息と令嬢だとは認識していないのだろうか。いえ、知っているはずだけれど、命令しているのが王子殿下のレントだから、無視しているわけか。

 これ以上、フィリップと会話をしたら本当にタダでは済まない可能性が高い。私は彼とアイコンタクトを取ってしゃべらないように合図を出し合った。お互いに頷いて合図が届いたことをチェックする。


「……」

「……」


 私とフィリップは伊達に幼馴染ではなかった。同じ侯爵家という立場だったこともあり、子供の時から仲良く過ごしていた。お互いに新婚ごっこをやったりと一通りの遊びは通過している。

 その中で独自のアイコンタクトと手話で言葉を出さなくても意思疎通が取れるようになっている。手話は嗜みの1つとして学んだに過ぎないけれど、アイコンタクトはけっこう手が込んでいるのだ。

「……」

「……」


 お互い顔を見合わせるだけで、それなりの会話が成立したりする。

(強制的に逃げられる?)

(流石に無理だ。警棒が怖いし。俺は武闘派でもないしね)


 ほら、大体のことはわかった。フィリップは武闘派ではないのは正しい。何時の時も話し合いで解決するタイプだったからね。


「おい、お前達」

「誰……?」

「アグラだね。伯爵令息の」


 ああ、隣のクラスの生徒か。アグラ……私達を見て勝ち誇っているようだ。いえ、別にあなたが勝ち誇るところではないと思うんだけれど。どうせ、レントが後ろ盾にいるんだろうし。

「お前達の罰が決定したぞ。喜べよ」

「は? 罰……?」


 アグラは何を言っているのかしら……? それに勝手に罰が決定するってどういうこと?
しおりを挟む

処理中です...