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6話
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「私はどんな罪に問われるのですか!?」
マルーク様は言葉を荒げていた。自分の身に下る罪を怖がっているわけで。だから、この時点で罪は確定なのに。
「マリナにも謝ります! 復讐も絶対にしないと誓いますので……!」
「何を言っているんだ、お前は……」
ギルト様も呆れ気味だったけれど、気持ちは同じだった。なぜなら、罰を与えるのは私やギルト様ではないのだから。
「マリナ嬢……どうやらマルークは大きな勘違いをしているね?」
「そうですね、ギルト様。マルーク様の勘違いは相当に酷いと思いますが」
「うむ……」
憐れむような目線をされ、マルーク様は戸惑っていた。おそらく、彼はまだまだ気付いていないのだろうけれど。これはこちらが説明しないと気付かなさそうね。
「ど、どういう意味ですか? 勘違いというのは……」
「仕方がない。説明してやるか。お前を裁くのは私達ではないということだよ。裁判所で判決を受け、罰が下る形になるだろう」
「えっ、さ、裁判所……!?」
「私達は裁判所に連れられてしまうのですか!?」
マルーク様だけでなく、ヴィネ様もとても驚いていた。当たり前の話だ……自分達が無実だと思っていたなんて滑稽過ぎる話だけれど。
「お前達二人は裁判所に送られ、裁判を受けることになるだろう。私に対して罪を認めたのが仇になったな」
「そ、そんな……!」
「まあ、どのみち私に嘘を吐いたらついたで罪になるのだがな。結局のところは同じということだ」
「マルーク様。ご自分の罪はご自分で償ってください。お願いします」
「ま、マリナ……!」
彼はすがるような表情になっていたけれど無視することにした。どのみち許すつもりはないのだから。脅しが怖かっただけだ。
----------------------------------
「マルーク様とヴィネ様……二人の判決が決まりましたね」
「ああ、そうだな。まあ、妥当な線といったところか」
マルーク様とヴィネ様の裁判を最後まで見た私とギルト様。最後まで見届けるのは私の義務だと思えた。だから見届けたのだけれど。
「ヴィネ様の方は大した罪にはなりませんでしたね」
「まあ、彼女がしたのは浮気だけだからな。それも仕方ないだろう。ただし、貴族としては今後、大変になっていくだろうな」
「確かに……そうですね」
浮気は厳密には罪に問われることはない。ただし、今回の事件の大きさを鑑みて自宅謹慎処分になった。でも、ヴィネ様の場合は今後のパーティーなどで大変になるだろうけれどね。再婚約なんて可能なのだろうか。ちなみに、強制的にマルーク様とは破談になった。
「マルークは家を追放されるようだしな。貴族という肩書きそのものを失う結果になったか」
「追放……」
マルーク様は結局、私と同じ末路を辿ったことになるわね。自ら追放した相手に追放されて、どんな気持ちなのかしら? まあこれで、完全に復讐の線はなくなったから安心だけれど。
「本当にありがとうございました、ギルト様。私のためにここまでのことをしていただいて……感謝の言葉もありません」
「いや、気にしなくて結構だ。私がやりたいからしたのだからな」
本当にギルト様は貴族の鑑のような人だと思う。
「ギルト様は貴族の鑑のようなお方ですね。無償の愛というか」
「まさか……私だって人間だよ。見返りを求めずに働くのは限度があるさ」
「そうなんですか?」
「ああ」
つまり、今回のことで私やお父様に金銭を要求するということかしら? もちろん、謝礼は払うつもりだけれど。
「謝礼はもちろんお支払いするつもりです」
「いや、謝礼は必要ないさ。それよりも……」
「はい?」
「私と付き合ってくれないか、マリナ」
「えっ……ギルト様?」
ギルト様は真剣な表情だった。とても冗談を言っているようには見えないし。それになんだか笑えてしまった。
「ふふ、なるほど。ギルト様も案外世俗的なんですね」
「分かって貰えたかな? はははは、貴族なんていうのはこんなものさ」
「うふふふふふふ」
ギルト様も立派な人間だったという話だ。もしかしたらお父様と話されていたのは、私のことを聞いていたかもしれないわね。付き合うのかどうか……すぐに答えは出せないけれど、彼の人となりがわかり、上手く行きそうな気がしていた。
おしまい
マルーク様は言葉を荒げていた。自分の身に下る罪を怖がっているわけで。だから、この時点で罪は確定なのに。
「マリナにも謝ります! 復讐も絶対にしないと誓いますので……!」
「何を言っているんだ、お前は……」
ギルト様も呆れ気味だったけれど、気持ちは同じだった。なぜなら、罰を与えるのは私やギルト様ではないのだから。
「マリナ嬢……どうやらマルークは大きな勘違いをしているね?」
「そうですね、ギルト様。マルーク様の勘違いは相当に酷いと思いますが」
「うむ……」
憐れむような目線をされ、マルーク様は戸惑っていた。おそらく、彼はまだまだ気付いていないのだろうけれど。これはこちらが説明しないと気付かなさそうね。
「ど、どういう意味ですか? 勘違いというのは……」
「仕方がない。説明してやるか。お前を裁くのは私達ではないということだよ。裁判所で判決を受け、罰が下る形になるだろう」
「えっ、さ、裁判所……!?」
「私達は裁判所に連れられてしまうのですか!?」
マルーク様だけでなく、ヴィネ様もとても驚いていた。当たり前の話だ……自分達が無実だと思っていたなんて滑稽過ぎる話だけれど。
「お前達二人は裁判所に送られ、裁判を受けることになるだろう。私に対して罪を認めたのが仇になったな」
「そ、そんな……!」
「まあ、どのみち私に嘘を吐いたらついたで罪になるのだがな。結局のところは同じということだ」
「マルーク様。ご自分の罪はご自分で償ってください。お願いします」
「ま、マリナ……!」
彼はすがるような表情になっていたけれど無視することにした。どのみち許すつもりはないのだから。脅しが怖かっただけだ。
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「マルーク様とヴィネ様……二人の判決が決まりましたね」
「ああ、そうだな。まあ、妥当な線といったところか」
マルーク様とヴィネ様の裁判を最後まで見た私とギルト様。最後まで見届けるのは私の義務だと思えた。だから見届けたのだけれど。
「ヴィネ様の方は大した罪にはなりませんでしたね」
「まあ、彼女がしたのは浮気だけだからな。それも仕方ないだろう。ただし、貴族としては今後、大変になっていくだろうな」
「確かに……そうですね」
浮気は厳密には罪に問われることはない。ただし、今回の事件の大きさを鑑みて自宅謹慎処分になった。でも、ヴィネ様の場合は今後のパーティーなどで大変になるだろうけれどね。再婚約なんて可能なのだろうか。ちなみに、強制的にマルーク様とは破談になった。
「マルークは家を追放されるようだしな。貴族という肩書きそのものを失う結果になったか」
「追放……」
マルーク様は結局、私と同じ末路を辿ったことになるわね。自ら追放した相手に追放されて、どんな気持ちなのかしら? まあこれで、完全に復讐の線はなくなったから安心だけれど。
「本当にありがとうございました、ギルト様。私のためにここまでのことをしていただいて……感謝の言葉もありません」
「いや、気にしなくて結構だ。私がやりたいからしたのだからな」
本当にギルト様は貴族の鑑のような人だと思う。
「ギルト様は貴族の鑑のようなお方ですね。無償の愛というか」
「まさか……私だって人間だよ。見返りを求めずに働くのは限度があるさ」
「そうなんですか?」
「ああ」
つまり、今回のことで私やお父様に金銭を要求するということかしら? もちろん、謝礼は払うつもりだけれど。
「謝礼はもちろんお支払いするつもりです」
「いや、謝礼は必要ないさ。それよりも……」
「はい?」
「私と付き合ってくれないか、マリナ」
「えっ……ギルト様?」
ギルト様は真剣な表情だった。とても冗談を言っているようには見えないし。それになんだか笑えてしまった。
「ふふ、なるほど。ギルト様も案外世俗的なんですね」
「分かって貰えたかな? はははは、貴族なんていうのはこんなものさ」
「うふふふふふふ」
ギルト様も立派な人間だったという話だ。もしかしたらお父様と話されていたのは、私のことを聞いていたかもしれないわね。付き合うのかどうか……すぐに答えは出せないけれど、彼の人となりがわかり、上手く行きそうな気がしていた。
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