婚約破棄？ 公爵様が味方になってくれましたよ？ いいんですか？

5話

「マルーク、ヴィネ。お前達に聞きたいのはもう分かっているだろう？　なんだと思う？」

「そ、それは……ええと」

「マルーク、お前の口から言ってくれないか？」


　ギルト様からは本気の圧力が伝わって来た。表情はそうでもないけれど、相当に怒っている証拠かもしれない。

「うっ……マリナ嬢との婚約破棄の件ですか？」

「うむ、間違いない。噂によれば、お前達二人は彼女に酷いことを言われそれで婚約破棄したとなっているが、それは本当なのか？」


　完全にギルト様は二人を信じていない様子だ。私の言葉を信じてくれている……素直に嬉しかった。

「……」

　マルーク様は何も答えなかった。しびれを切らしたのか、ヴィネ様が話しだす。

「ちょっと、マルーク。何か言ってよね」

「わ、分かっている。その……」

「その、なんだ？　本当であるなら本当だと言ってくれればいいだけだ」

「……」


　マルーク様は答えられなかった。当たり前の話だ、完全に嘘なのだから。真実は二人の浮気による婚約破棄。それ以外にはない。そして、マルーク様は浮気による婚約破棄のことは漏れていると確信しているようだった。本来であれば私の屋敷が燃やされる事態だけれど……流石にギルト様の前でそんなことは言えないはずだわ。


「私の浮気によるものです。ヴィネとは浮気をしていました……そして、マリナ嬢を捨てたのです」

「ほう、そういうことだったか。正直に答えたのは評価しよう」

「ありがとうございます、ギルト様……」

「だが、お前はマリナ嬢になんと言ったのか？　確か浮気の件を他の者に話したら、彼女の屋敷を燃やすと言っていたそうだな？」

「そ、そのことも聞いているのですか……？」


　戸惑った様子でマルーク様は言った。私がそこまで話しているのが意外だったのだろうか？　話すに決まっているのに……。

「事実なんだな？」

「は、はい……事実です」


　観念したのか、ギルト様には真実を話すマルーク様だった。

「分かっているとは思うが、マリナ嬢に復讐などは考えないようにな」

「か、畏まりました……」


　マルーク様から言質を取った。これで復讐を受ける心配はないだろう。まあ、こんな状況にまで陥って、復讐を考えるとは思えないけれど。

「まあ、お前の場合は自分にこれから起こることを心配した方が良いがな」

「えっ？　どういうことでしょうか？」

「分からないのか？　伯爵の立場が危うくなることや、迷惑料の支払い、貴族としての立場そのものが危うくなる可能性だってあるだろう。お前のやったことはそのくらい厳しいものだからな」

「そ、そんな……！」


　マルーク様はビックリしていた。あれだけのことをしておいて、謝罪だけで済むと思っていたのかしら？　相応の罰が下ることは確実なのに。