4 / 6
4話
しおりを挟むマルーク様とヴィネ様の二人がパーティー会場に入って来た。それを私とギルト様は見守っていた。私は不安になってしまったけれど。
「マルーク様とヴィネ様の二人が入って来ましたね、ギルト様」
「不安かな、マリナ?」
「はい、不安です……」
「では、私の傍から離れないようにしておいてくれ」
「ギルト様……?」
ギルト様は不思議と安心させてくれていた。これは彼が公爵であること関係あるはずだけれど。私を励ましてくれているのだろうか? そして、入って来たマルーク様とヴィネ様のところに向かったのだった。何をするつもりなのかと思ったけれど、どうやら話しかけるつもりのようだった。ええっ、私も近くにいるんだけれど……大丈夫なのかしら?
「マルーク、ヴィネ。少し話がある。ご足労願えないだろうか」
「ん? あ、これは……ギルト・スタンレー公爵ではないですか!」
「これは失礼致しました!」
マルーク様とヴィネ様の二人は慌てたように、ギルト様に挨拶をした。流石はギルト様だ、貴族の中で最高の地位に就いているだけのことはある。また、若くして公爵様になっているから余計に凄い。私も見習わないといけないわ。
「まさかギルト様が来ているとは思いませんでしたが……どうしましたか?」
「ええと、なんでしょうか?」
「ああ、詳しい話は向こうでやろうか。君たちにとって、あまり良い話ではないだろうからな」
「良い話ではない……?」
不安を煽るような言葉のギルト様だった。マルーク様も不思議そうにしている。ギルト様が指示した方向はパーティー会場の裏口だったからだ。つまりは会場外へ出ようと言っているのだ。流石のマルーク様も何かあると思うだろう。
-------------------------------
「それで、ギルト様……話と言うのはなんでしょうか?」
「うむ。わざわざ、外に出てもらって申し訳ないな」
「いえ、それは大丈夫ですが」
「この娘のことは知っているな?」
そしてギルト様は私の紹介を始めたのだった。当然、裏口の向こうには私も付いて来ていた。だから既に、マルーク様やヴィネ様とは目を合わせている。マルーク様はとっくに私の存在に気付いていたが……。敢えてなのか何も話し掛けて来ない。まあ、ギルト様が近くにいたからしょうがないのかもしれないけどね。
「知っています……マリナ嬢ですね」
「その通りだ」
ギルト様は敢えてマルーク様に説明させた。私に関連することだと彼に分からせる為だろう。そして、これからどういう叱責がくるのか、分からせる為でもある。マルーク様は察したのか私を睨みつけていた。ギルト様に話したことが分かったのかもしれない。
ここまで来るとギルト・スタンレー公爵を信じる以外にないわね。覚悟を決めたわ。
20
あなたにおすすめの小説
婚約破棄で見限られたもの
志位斗 茂家波
恋愛
‥‥‥ミアス・フォン・レーラ侯爵令嬢は、パスタリアン王国の王子から婚約破棄を言い渡され、ありもしない冤罪を言われ、彼女は国外へ追放されてしまう。
すでにその国を見限っていた彼女は、これ幸いとばかりに別の国でやりたかったことを始めるのだが‥‥‥
よくある婚約破棄ざまぁもの?思い付きと勢いだけでなぜか出来上がってしまった。
愚か者が自滅するのを、近くで見ていただけですから
越智屋ノマ
恋愛
宮中舞踏会の最中、侯爵令嬢ルクレツィアは王太子グレゴリオから一方的に婚約破棄を宣告される。新たな婚約者は、平民出身で才女と名高い女官ピア・スミス。
新たな時代の象徴を気取る王太子夫妻の華やかな振る舞いは、やがて国中の不満を集め、王家は静かに綻び始めていく。
一方、表舞台から退いたはずのルクレツィアは、親友である王女アリアンヌと再会する。――崩れゆく王家を前に、それぞれの役割を選び取った『親友』たちの結末は?
婚約破棄された地味伯爵令嬢は、隠れ錬金術師でした~追放された辺境でスローライフを始めたら、隣国の冷徹魔導公爵に溺愛されて最強です~
ふわふわ
恋愛
地味で目立たない伯爵令嬢・エルカミーノは、王太子カイロンとの政略婚約を強いられていた。
しかし、転生聖女ソルスティスに心を奪われたカイロンは、公開の舞踏会で婚約破棄を宣言。「地味でお前は不要!」と嘲笑う。
周囲から「悪役令嬢」の烙印を押され、辺境追放を言い渡されたエルカミーノ。
だが内心では「やったー! これで自由!」と大喜び。
実は彼女は前世の記憶を持つ天才錬金術師で、希少素材ゼロで最強ポーションを作れるチート級の才能を隠していたのだ。
追放先の辺境で、忠実なメイド・セシルと共に薬草園を開き、のんびりスローライフを始めるエルカミーノ。
作ったポーションが村人を救い、次第に評判が広がっていく。
そんな中、隣国から視察に来た冷徹で美麗な魔導公爵・ラクティスが、エルカミーノの才能に一目惚れ(?)。
「君の錬金術は国宝級だ。僕の国へ来ないか?」とスカウトし、腹黒ながらエルカミーノにだけ甘々溺愛モード全開に!
一方、王都ではソルスティスの聖魔法が効かず魔瘴病が流行。
エルカミーノのポーションなしでは国が危機に陥り、カイロンとソルスティスは後悔の渦へ……。
公開土下座、聖女の暴走と転生者バレ、国際的な陰謀……
さまざまな試練をラクティスの守護と溺愛で乗り越え、エルカミーノは大陸の救済者となり、幸せな結婚へ!
**婚約破棄ざまぁ×隠れチート錬金術×辺境スローライフ×冷徹公爵の甘々溺愛**
胸キュン&スカッと満載の異世界ファンタジー、全32話完結!
お飾りの婚約者で結構です! 殿下のことは興味ありませんので、お構いなく!
にのまえ
恋愛
すでに寵愛する人がいる、殿下の婚約候補決めの舞踏会を開くと、王家の勅命がドーリング公爵家に届くも、姉のミミリアは嫌がった。
公爵家から一人娘という言葉に、舞踏会に参加することになった、ドーリング公爵家の次女・ミーシャ。
家族の中で“役立たず”と蔑まれ、姉の身代わりとして差し出された彼女の唯一の望みは――「舞踏会で、美味しい料理を食べること」。
だが、そんな慎ましい願いとは裏腹に、
舞踏会の夜、思いもよらぬ出来事が起こりミーシャは前世、読んでいた小説の世界だと気付く。
自分のせいで婚約破棄。あたしはそう思い込まされていました。
柚木ゆず
恋愛
使用人を侮辱したことで王太子フェリクスに婚約を破棄された、令嬢ミーナ・ラナラ。
しかしそれはミーナの意思ではなく、催眠術によってそうさせられていたのです。
ひょんなことから催眠が解けた、ミーナ。密かに犯人を捜し始めた彼女はやがて、驚くべき真実を知るのでした――。
お馬鹿な聖女に「だから?」と言ってみた
リオール
恋愛
だから?
それは最強の言葉
~~~~~~~~~
※全6話。短いです
※ダークです!ダークな終わりしてます!
筆者がたまに書きたくなるダークなお話なんです。
スカッと爽快ハッピーエンドをお求めの方はごめんなさい。
※勢いで書いたので支離滅裂です。生ぬるい目でスルーして下さい(^-^;
婚約破棄ですか……。……あの、契約書類は読みましたか?
冬吹せいら
恋愛
伯爵家の令息――ローイ・ランドルフは、侯爵家の令嬢――アリア・テスタロトと婚約を結んだ。
しかし、この婚約の本当の目的は、伯爵家による侯爵家の乗っ取りである。
侯爵家の領地に、ズカズカと進行し、我がもの顔で建物の建設を始める伯爵家。
ある程度領地を蝕んだところで、ローイはアリアとの婚約を破棄しようとした。
「おかしいと思いませんか? 自らの領地を荒されているのに、何も言わないなんて――」
アリアが、ローイに対して、不気味に語り掛ける。
侯爵家は、最初から気が付いていたのだ。
「契約書類は、ちゃんと読みましたか?」
伯爵家の没落が、今、始まろうとしている――。
馬鹿王子は落ちぶれました。 〜婚約破棄した公爵令嬢は有能すぎた〜
mimiaizu
恋愛
マグーマ・ティレックス――かつて第一王子にして王太子マグーマ・ツインローズと呼ばれた男は、己の人生に絶望した。王族に生まれ、いずれは国王になるはずだったのに、男爵にまで成り下がったのだ。彼は思う。
「俺はどこで間違えた?」
これは悪役令嬢やヒロインがメインの物語ではない。ざまぁされる男がメインの物語である。
※『【短編】婚約破棄してきた王太子が行方不明!? ~いいえ。王太子が婚約破棄されました~』『王太子殿下は豹変しました!? 〜第二王子殿下の心は過労で病んでいます〜』の敵側の王子の物語です。これらを見てくだされば分かりやすいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる