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1話
しおりを挟む「私はそのお方の妻になればよいのですか……?」
「そういうことだ、マリス。お前も15歳になったのだしそろそろ一人立ちしてくれねば困る」
「その通りですよ、マリス。貴方に婚約者候補が出て来ただけでも感謝しなさいよね」
「……はい、わかりました」
私の婚約者はお父様とお母様が二人で決めた相手だった。私に婚約者が出て来るなんて……誰が想像しただろう?
私は昔から……話によると生まれた時から魔法が使えていたらしい。その力を行使して、ならず者を撃退したこともある。でも、周りは私の能力を怖れて離れて行った。
家族も例外ではなかった。お父様もお母様も私のことを厄介者として愛情を持って育ててくれることはなかった。それどころか苛められる始末で。その愛情は兄さまや姉さまの方へと行ったみたい。でもそれは、仕方のないことだったのかもしれない。
私が普通の人とは違う能力を持っていたから……そして、周りにはそんな能力の人が誰もいなかったから。だからこそ嫌われてしまったのだ。今にして思えば辛い15年間だったけれど、ここまで育ててくれたことには感謝しないといけないかもしれない。
そして、相手がどんな婚約者だったとしても……私は我慢するしかないのだ。
「相手方の名前はケルヴィン・ロックリー伯爵令息。がり勉でかなり偏屈な相手と言われているが、まあ仕方ないだろう。お前に伯爵令息の婚約者が見つかるだけでも感謝しなくてはな」
「わかっているわね、マリス?」
「はい……もちろんです」
私に拒否権なんてなかった。あるのはただただ肯定することだけ。お父様とお母様の言葉に忠実に従うことだけだ。兄さまと姉さまが部屋の外から私の様子を窺っていた。なんと言われているのだろうか……。
「ようやくあの子を厄介払いできるのね」
「本当だね。まったく……同じ家族と思いたくなかったよ。恐怖でしかない」
「昔は大怪我をした人もいたんでしょう? 本当に怖いわよね」
耳をすまさなくても声が聞こえて来た。かなり大きな声で話しているから。案の定、私は恐れられているようだ。
「よいな、マリス? これからロックリー様の屋敷に行くわけだが……素直にしているのだぞ?」
「はい、わかりました。お父様」
お父様とお母様は付いて来てくれない。私一人でケルヴィンという人物に会いに行くことになったのだ。本来の挨拶回りとは全く違う異質なもの。それが私の現状を表しているのかもしれない。
私は呪われし子供……マリス。私の未来に栄光なんてものはないのかもしれない……。
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