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26話 国王陛下の独壇場 その2
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国王陛下の独壇場はまだまだ続いていく……。
カイン様への偏見、それを自覚していた者達は皆、ザルバック国王陛下の前で手を挙げていた。マリア姉さまやラゴウ様も同じく挙手している。私はその光景が嬉しかった。この段階では自分達の罪をまだ認めていないかもしれないけれど、その第一歩が生まれたと思えたから……。
「ふむ、予想通りの人数……いや、それ以上の人数が挙手をしたか」
ザルバック国王陛下は周囲を見渡しながらそう言った。予想以上の人数ということは、国王陛下の配下達が見逃していた人々も居たのかもしれない。
人数は想像以上だったみたいだけれど、ザルバック国王陛下は嬉しかったのか笑顔になっていた。リリアーヌ王妃様も笑っていらっしゃった。
「陛下、よろしかったのですね。これで……」
「そうだな、リリアーヌ。この国もさらに発展していけると信じられる」
二人はなんだか物思いに更けているようだった。貴族たちが挙手したことがそんなに嬉しかったのかしら? まあ、確かに再教育マニュアルの交付はしやすくなっただろうけど。あんなに物思いにふけるほどかな?
「あなた……私達はもしかしたら、ものすごい危険な橋を渡っていたのかもしれませんね」
「そうだな……今回の件は危険な橋の修復、改良の第一歩にしていこう」
「ええ、そうですわね」
「……」
こうして、国王陛下と王妃様の独壇場のお話も終焉となった。裁判は時間がおしていたこともあって、その後はすぐに閉廷となった。ラゴウ様とマリア姉さまへの判決はとりあえず完了したから良しとするようだ。
-------------------------
閉廷した議会……そこに残されたのは、私とカイン様。それから国王陛下と王妃様だけとなっていた。もちろん、護衛の方々はいるけれど。
「上手く進みましたでしょうか? 国王陛下」
「そうだな、想像以上に上手くいった。これも、カインやテレーズ嬢のおかげだ。礼を言おう」
「いえ、そんなことは……」
私は正直、ほとんど何も出来ていないような気がする。ただじっと見ていただけのような……。まあいいわ、それよりも気になることがあった。
「陛下、1つお伺いさせていただきたいのですが……」
「どうしたのだ?」
「陛下は貴族への挙手を求めた際、予想以上の人数に対してお喜びになられていらっしゃいましたか?」
「うむ、そうだな。辺境伯への地位を正しく儲ける再教育マニュアルの交付がやりやすくなったのだ。嬉しくもなるさ」
その割には少し喜びすぎな気がしてしまった。王妃様と見つめ合う程に喜ぶのかな?
「あなた、おそらく彼女は喜びすぎ、という点に対して疑問を持っているのよ」
「ああ、なるほど……そういうことだったか」
「は、はい。そうなります……」
二人は私の疑問、というよりも関心部分を上手く汲み取ってくれた。話す手間が省けたのは嬉しいわ。
「カイン・サンタローズ辺境伯の地位を知らない貴族の台頭は、国家そのものが揺らぎかねないからな。それは……他国からの侵略にも繋がってしまう。私はリリアーヌが誘拐された時のことを思い出していたのだ」
「ああいった事件を二度と起こさない為にも、今回の再教育は非常に重要になるでしょうね」
「そういうお話でございましたか……」
だから二人は見つめ合っていたのね。当時のことを思い出しながら。そうか、リリアーヌ王妃誘拐事件か。そんなことが起きたのよね……私が生まれる直前くらいに。
カイン様への偏見、それを自覚していた者達は皆、ザルバック国王陛下の前で手を挙げていた。マリア姉さまやラゴウ様も同じく挙手している。私はその光景が嬉しかった。この段階では自分達の罪をまだ認めていないかもしれないけれど、その第一歩が生まれたと思えたから……。
「ふむ、予想通りの人数……いや、それ以上の人数が挙手をしたか」
ザルバック国王陛下は周囲を見渡しながらそう言った。予想以上の人数ということは、国王陛下の配下達が見逃していた人々も居たのかもしれない。
人数は想像以上だったみたいだけれど、ザルバック国王陛下は嬉しかったのか笑顔になっていた。リリアーヌ王妃様も笑っていらっしゃった。
「陛下、よろしかったのですね。これで……」
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「あなた……私達はもしかしたら、ものすごい危険な橋を渡っていたのかもしれませんね」
「そうだな……今回の件は危険な橋の修復、改良の第一歩にしていこう」
「ええ、そうですわね」
「……」
こうして、国王陛下と王妃様の独壇場のお話も終焉となった。裁判は時間がおしていたこともあって、その後はすぐに閉廷となった。ラゴウ様とマリア姉さまへの判決はとりあえず完了したから良しとするようだ。
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閉廷した議会……そこに残されたのは、私とカイン様。それから国王陛下と王妃様だけとなっていた。もちろん、護衛の方々はいるけれど。
「上手く進みましたでしょうか? 国王陛下」
「そうだな、想像以上に上手くいった。これも、カインやテレーズ嬢のおかげだ。礼を言おう」
「いえ、そんなことは……」
私は正直、ほとんど何も出来ていないような気がする。ただじっと見ていただけのような……。まあいいわ、それよりも気になることがあった。
「陛下、1つお伺いさせていただきたいのですが……」
「どうしたのだ?」
「陛下は貴族への挙手を求めた際、予想以上の人数に対してお喜びになられていらっしゃいましたか?」
「うむ、そうだな。辺境伯への地位を正しく儲ける再教育マニュアルの交付がやりやすくなったのだ。嬉しくもなるさ」
その割には少し喜びすぎな気がしてしまった。王妃様と見つめ合う程に喜ぶのかな?
「あなた、おそらく彼女は喜びすぎ、という点に対して疑問を持っているのよ」
「ああ、なるほど……そういうことだったか」
「は、はい。そうなります……」
二人は私の疑問、というよりも関心部分を上手く汲み取ってくれた。話す手間が省けたのは嬉しいわ。
「カイン・サンタローズ辺境伯の地位を知らない貴族の台頭は、国家そのものが揺らぎかねないからな。それは……他国からの侵略にも繋がってしまう。私はリリアーヌが誘拐された時のことを思い出していたのだ」
「ああいった事件を二度と起こさない為にも、今回の再教育は非常に重要になるでしょうね」
「そういうお話でございましたか……」
だから二人は見つめ合っていたのね。当時のことを思い出しながら。そうか、リリアーヌ王妃誘拐事件か。そんなことが起きたのよね……私が生まれる直前くらいに。
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