お姉さまに婚約者を奪われたけど、私は辺境伯と結ばれた~無知なお姉さまは辺境伯の地位の高さを知らない~

マルローネ

文字の大きさ
26 / 41

26話 国王陛下の独壇場 その2

しおりを挟む
 国王陛下の独壇場はまだまだ続いていく……。

 カイン様への偏見、それを自覚していた者達は皆、ザルバック国王陛下の前で手を挙げていた。マリア姉さまやラゴウ様も同じく挙手している。私はその光景が嬉しかった。この段階では自分達の罪をまだ認めていないかもしれないけれど、その第一歩が生まれたと思えたから……。


「ふむ、予想通りの人数……いや、それ以上の人数が挙手をしたか」


 ザルバック国王陛下は周囲を見渡しながらそう言った。予想以上の人数ということは、国王陛下の配下達が見逃していた人々も居たのかもしれない。

 人数は想像以上だったみたいだけれど、ザルバック国王陛下は嬉しかったのか笑顔になっていた。リリアーヌ王妃様も笑っていらっしゃった。


「陛下、よろしかったのですね。これで……」

「そうだな、リリアーヌ。この国もさらに発展していけると信じられる」


 二人はなんだか物思いに更けているようだった。貴族たちが挙手したことがそんなに嬉しかったのかしら? まあ、確かに再教育マニュアルの交付はしやすくなっただろうけど。あんなに物思いにふけるほどかな?


「あなた……私達はもしかしたら、ものすごい危険な橋を渡っていたのかもしれませんね」

「そうだな……今回の件は危険な橋の修復、改良の第一歩にしていこう」

「ええ、そうですわね」

「……」


 こうして、国王陛下と王妃様の独壇場のお話も終焉となった。裁判は時間がおしていたこともあって、その後はすぐに閉廷となった。ラゴウ様とマリア姉さまへの判決はとりあえず完了したから良しとするようだ。



-------------------------



 閉廷した議会……そこに残されたのは、私とカイン様。それから国王陛下と王妃様だけとなっていた。もちろん、護衛の方々はいるけれど。


「上手く進みましたでしょうか? 国王陛下」

「そうだな、想像以上に上手くいった。これも、カインやテレーズ嬢のおかげだ。礼を言おう」

「いえ、そんなことは……」


 私は正直、ほとんど何も出来ていないような気がする。ただじっと見ていただけのような……。まあいいわ、それよりも気になることがあった。


「陛下、1つお伺いさせていただきたいのですが……」

「どうしたのだ?」

「陛下は貴族への挙手を求めた際、予想以上の人数に対してお喜びになられていらっしゃいましたか?」

「うむ、そうだな。辺境伯への地位を正しく儲ける再教育マニュアルの交付がやりやすくなったのだ。嬉しくもなるさ」

 その割には少し喜びすぎな気がしてしまった。王妃様と見つめ合う程に喜ぶのかな?


「あなた、おそらく彼女は喜びすぎ、という点に対して疑問を持っているのよ」

「ああ、なるほど……そういうことだったか」

「は、はい。そうなります……」


 二人は私の疑問、というよりも関心部分を上手く汲み取ってくれた。話す手間が省けたのは嬉しいわ。


「カイン・サンタローズ辺境伯の地位を知らない貴族の台頭は、国家そのものが揺らぎかねないからな。それは……他国からの侵略にも繋がってしまう。私はリリアーヌが誘拐された時のことを思い出していたのだ」

「ああいった事件を二度と起こさない為にも、今回の再教育は非常に重要になるでしょうね」


「そういうお話でございましたか……」


 だから二人は見つめ合っていたのね。当時のことを思い出しながら。そうか、リリアーヌ王妃誘拐事件か。そんなことが起きたのよね……私が生まれる直前くらいに。
しおりを挟む
感想 113

あなたにおすすめの小説

『二流』と言われて婚約破棄されたので、ざまぁしてやります!

志熊みゅう
恋愛
「どうして君は何をやらせても『二流』なんだ!」  皇太子レイモン殿下に、公衆の面前で婚約破棄された侯爵令嬢ソフィ。皇妃の命で地味な装いに徹し、妃教育にすべてを捧げた五年間は、あっさり否定された。それでも、ソフィはくじけない。婚約破棄をきっかけに、学生生活を楽しむと決めた彼女は、一気にイメチェン、大好きだったヴァイオリンを再開し、成績も急上昇!気づけばファンクラブまでできて、学生たちの注目の的に。  そして、音楽を通して親しくなった隣国の留学生・ジョルジュの正体は、なんと……?  『二流』と蔑まれた令嬢が、“恋”と“努力”で見返す爽快逆転ストーリー!

善人ぶった姉に奪われ続けてきましたが、逃げた先で溺愛されて私のスキルで領地は豊作です

しろこねこ
ファンタジー
「あなたのためを思って」という一見優しい伯爵家の姉ジュリナに虐げられている妹セリナ。醜いセリナの言うことを家族は誰も聞いてくれない。そんな中、唯一差別しない家庭教師に貴族子女にははしたないとされる魔法を教わるが、親切ぶってセリナを孤立させる姉。植物魔法に目覚めたセリナはペット?のヴィリオをともに家を出て南の辺境を目指す。

可愛い姉より、地味なわたしを選んでくれた王子様。と思っていたら、単に姉と間違えただけのようです。

ふまさ
恋愛
 小さくて、可愛くて、庇護欲をそそられる姉。対し、身長も高くて、地味顔の妹のリネット。  ある日。愛らしい顔立ちで有名な第二王子に婚約を申し込まれ、舞い上がるリネットだったが──。 「あれ? きみ、誰?」  第二王子であるヒューゴーは、リネットを見ながら不思議そうに首を傾げるのだった。

真面目くさった女はいらないと婚約破棄された伯爵令嬢ですが、王太子様に求婚されました。実はかわいい彼の溺愛っぷりに困っています

綾森れん
恋愛
「リラ・プリマヴェーラ、お前と交わした婚約を破棄させてもらう!」 公爵家主催の夜会にて、リラ・プリマヴェーラ伯爵令嬢はグイード・ブライデン公爵令息から言い渡された。 「お前のような真面目くさった女はいらない!」 ギャンブルに財産を賭ける婚約者の姿に公爵家の将来を憂いたリラは、彼をいさめたのだが逆恨みされて婚約破棄されてしまったのだ。 リラとグイードの婚約は政略結婚であり、そこに愛はなかった。リラは今でも7歳のころ茶会で出会ったアルベルト王子の優しさと可愛らしさを覚えていた。しかしアルベルト王子はそのすぐあとに、毒殺されてしまった。 夜会で恥をさらし、居場所を失った彼女を救ったのは、美しい青年歌手アルカンジェロだった。 心優しいアルカンジェロに惹かれていくリラだが、彼は高い声を保つため、少年時代に残酷な手術を受けた「カストラート(去勢歌手)」と呼ばれる存在。教会は、子孫を残せない彼らに結婚を禁じていた。 禁断の恋に悩むリラのもとへ、父親が新たな婚約話をもってくる。相手の男性は親子ほども歳の離れた下級貴族で子だくさん。数年前に妻を亡くし、後妻に入ってくれる女性を探しているという、悪い条件の相手だった。 望まぬ婚姻を強いられ未来に希望を持てなくなったリラは、アルカンジェロと二人、教会の勢力が及ばない国外へ逃げ出す計画を立てる。 仮面舞踏会の夜、二人の愛は通じ合い、結ばれる。だがアルカンジェロが自身の秘密を打ち明けた。彼の正体は歌手などではなく、十年前に毒殺されたはずのアルベルト王子その人だった。 しかし再び、王権転覆を狙う暗殺者が迫りくる。 これは、愛し合うリラとアルベルト王子が二人で幸せをつかむまでの物語である。

婚約破棄をされ、父に追放まで言われた私は、むしろ喜んで出て行きます! ~家を出る時に一緒に来てくれた執事の溺愛が始まりました~

ゆうき
恋愛
男爵家の次女として生まれたシエルは、姉と妹に比べて平凡だからという理由で、父親や姉妹からバカにされ、虐げられる生活を送っていた。 そんな生活に嫌気がさしたシエルは、とある計画を考えつく。それは、婚約者に社交界で婚約を破棄してもらい、その責任を取って家を出て、自由を手に入れるというものだった。 シエルの専属の執事であるラルフや、幼い頃から実の兄のように親しくしてくれていた婚約者の協力の元、シエルは無事に婚約を破棄され、父親に見捨てられて家を出ることになった。 ラルフも一緒に来てくれることとなり、これで念願の自由を手に入れたシエル。しかし、シエルにはどこにも行くあてはなかった。 それをラルフに伝えると、隣の国にあるラルフの故郷に行こうと提案される。 それを承諾したシエルは、これからの自由で幸せな日々を手に入れられると胸を躍らせていたが、その幸せは家族によって邪魔をされてしまう。 なんと、家族はシエルとラルフを広大な湖に捨て、自らの手を汚さずに二人を亡き者にしようとしていた―― ☆誤字脱字が多いですが、見つけ次第直しますのでご了承ください☆ ☆全文字はだいたい14万文字になっています☆ ☆完結まで予約済みなので、エタることはありません!☆

えっ「可愛いだけの無能な妹」って私のことですか?~自業自得で追放されたお姉様が戻ってきました。この人ぜんぜん反省してないんですけど~

村咲
恋愛
ずっと、国のために尽くしてきた。聖女として、王太子の婚約者として、ただ一人でこの国にはびこる瘴気を浄化してきた。 だけど国の人々も婚約者も、私ではなく妹を選んだ。瘴気を浄化する力もない、可愛いだけの無能な妹を。 私がいなくなればこの国は瘴気に覆いつくされ、荒れ果てた不毛の地となるとも知らず。 ……と思い込む、国外追放されたお姉様が戻ってきた。 しかも、なにを血迷ったか隣国の皇子なんてものまで引き連れて。 えっ、私が王太子殿下や国の人たちを誘惑した? 嘘でお姉様の悪評を立てた? いやいや、悪評が立ったのも追放されたのも、全部あなたの自業自得ですからね?

「地味で無能」と捨てられた令嬢は、冷酷な【年上イケオジ公爵】に嫁ぎました〜今更私の価値に気づいた元王太子が後悔で顔面蒼白になっても今更遅い

腐ったバナナ
恋愛
伯爵令嬢クラウディアは、婚約者のアルバート王太子と妹リリアンに「地味で無能」と断罪され、公衆の面前で婚約破棄される。 お飾りの厄介払いとして押し付けられた嫁ぎ先は、「氷壁公爵」と恐れられる年上の冷酷な辺境伯アレクシス・グレイヴナー公爵だった。 当初は冷徹だった公爵は、クラウディアの才能と、過去の傷を癒やす温もりに触れ、その愛を「二度と失わない」と固く誓う。 彼の愛は、包容力と同時に、狂気的な独占欲を伴った「大人の愛」へと昇華していく。

初耳なのですが…、本当ですか?

あおくん
恋愛
侯爵令嬢の次女として、父親の仕事を手伝ったり、邸の管理をしたりと忙しくしているアニーに公爵家から婚約の申し込みが来た! でも実際に公爵家に訪れると、異世界から来たという少女が婚約者の隣に立っていて…。

処理中です...