31 / 41
31話 カイン様と巡る その1
しおりを挟む
「辺境地、西の国境線……とても緑豊かな場所ですね」
「そうだな、確かに。私も何度も見ているが、やはり緑豊かな景色は本当に飽きないよ」
「それは私も同感です」
カイン様と知り合ってから、そしてカイン様と正式に婚約を果たしてから、私達は何度も西の国境線付近の景色を眺めている。デートを楽しみながらではあるけれど。何をするでもなく、二人で緑豊かな森付近を歩いているだけでも心が晴れ渡るようだった。
いままで起きた大きな事件が、些細なことのように感じてしまう。
「そういえば、私のところに貴族教育の新マニュアルが届いていました。やはり、私の家系は新プログラムの対象に選定されてしまったようです」
「ははは、そうだったか。まあ、テレーズ自身に罪はないさ。そんなに気に病むことはないと思うぞ?」
「はい、それは分かっているのですが……」
同じ家族としてはどうしても、ね。はあ……と溜息が思わず出てしまう。家系全てが対象にはなっているから、私もそのプログラムを受ける必要があるのだし。マリア姉さまはとんでもない土産物を置いて行ってくれたわね。
「君の姉、マリア嬢は大丈夫そうだったか? 修道院に入っていると思うが」
「そうですね、別れ際には私に謝罪していたので。真摯に受け止めてくれているのだと思います」
「そうか、それなら良かった」
「はい」
マリア姉さまは無期限の謹慎処分の場所は屋敷ではなく、修道院生活ということになった。議会からの命令なので、もちろん従う以外にはない。
本格的な犯罪者という扱いまではいかなくとも、マリア姉さまの罪は決して軽く扱われることはなかったということだ。
「修道院での謹慎生活は無期限となっていますが……どのくらいで出られるのでしょうか?」
「本人の態度次第というのもあるが、1年も経てば出てこられるらしいぞ。ドルトムント議長からの受け売りだが」
「本当ですか?」
「ああ、そのようだ」
流石はカイン様……辺境伯の地位は伊達ではないということね。1年の修道院生活か……決して楽な生活ということはないだろうけど、まあ、マリア姉さまならなんとか耐えられるだろうと思う。私はただ、それを信じて待つだけだ。
「それから、ラゴウ様なんですが……あれから、どうなったのでしょうか?」
「聞いていないのか?」
「そうですね、マリア姉さまの件で忙しかったので……」
「彼は爵位を剥奪されているからな。一般作業員という形で、鉱山開発事業を行っているはずだ」
「こ、鉱山開発……!?」
思っていた以上の罰? に私はついつい大きな声を出してしまった。カイン様との自然を巡る歩みはまだまだ続いていく……。
「そうだな、確かに。私も何度も見ているが、やはり緑豊かな景色は本当に飽きないよ」
「それは私も同感です」
カイン様と知り合ってから、そしてカイン様と正式に婚約を果たしてから、私達は何度も西の国境線付近の景色を眺めている。デートを楽しみながらではあるけれど。何をするでもなく、二人で緑豊かな森付近を歩いているだけでも心が晴れ渡るようだった。
いままで起きた大きな事件が、些細なことのように感じてしまう。
「そういえば、私のところに貴族教育の新マニュアルが届いていました。やはり、私の家系は新プログラムの対象に選定されてしまったようです」
「ははは、そうだったか。まあ、テレーズ自身に罪はないさ。そんなに気に病むことはないと思うぞ?」
「はい、それは分かっているのですが……」
同じ家族としてはどうしても、ね。はあ……と溜息が思わず出てしまう。家系全てが対象にはなっているから、私もそのプログラムを受ける必要があるのだし。マリア姉さまはとんでもない土産物を置いて行ってくれたわね。
「君の姉、マリア嬢は大丈夫そうだったか? 修道院に入っていると思うが」
「そうですね、別れ際には私に謝罪していたので。真摯に受け止めてくれているのだと思います」
「そうか、それなら良かった」
「はい」
マリア姉さまは無期限の謹慎処分の場所は屋敷ではなく、修道院生活ということになった。議会からの命令なので、もちろん従う以外にはない。
本格的な犯罪者という扱いまではいかなくとも、マリア姉さまの罪は決して軽く扱われることはなかったということだ。
「修道院での謹慎生活は無期限となっていますが……どのくらいで出られるのでしょうか?」
「本人の態度次第というのもあるが、1年も経てば出てこられるらしいぞ。ドルトムント議長からの受け売りだが」
「本当ですか?」
「ああ、そのようだ」
流石はカイン様……辺境伯の地位は伊達ではないということね。1年の修道院生活か……決して楽な生活ということはないだろうけど、まあ、マリア姉さまならなんとか耐えられるだろうと思う。私はただ、それを信じて待つだけだ。
「それから、ラゴウ様なんですが……あれから、どうなったのでしょうか?」
「聞いていないのか?」
「そうですね、マリア姉さまの件で忙しかったので……」
「彼は爵位を剥奪されているからな。一般作業員という形で、鉱山開発事業を行っているはずだ」
「こ、鉱山開発……!?」
思っていた以上の罰? に私はついつい大きな声を出してしまった。カイン様との自然を巡る歩みはまだまだ続いていく……。
52
あなたにおすすめの小説
【本編完結】ただの平凡令嬢なので、姉に婚約者を取られました。
138ネコ@書籍化&コミカライズしました
ファンタジー
「誰にも出来ないような事は求めないから、せめて人並みになってくれ」
お父様にそう言われ、平凡になるためにたゆまぬ努力をしたつもりです。
賢者様が使ったとされる神級魔法を会得し、復活した魔王をかつての勇者様のように倒し、領民に慕われた名領主のように領地を治めました。
誰にも出来ないような事は、私には出来ません。私に出来るのは、誰かがやれる事を平凡に努めてきただけ。
そんな平凡な私だから、非凡な姉に婚約者を奪われてしまうのは、仕方がない事なのです。
諦めきれない私は、せめて平凡なりに仕返しをしてみようと思います。
婚約破棄されたトリノは、継母や姉たちや使用人からもいじめられているので、前世の記憶を思い出し、家から脱走して旅にでる!
山田 バルス
恋愛
この屋敷は、わたしの居場所じゃない。
薄明かりの差し込む天窓の下、トリノは古びた石床に敷かれた毛布の中で、静かに目を覚ました。肌寒さに身をすくめながら、昨日と変わらぬ粗末な日常が始まる。
かつては伯爵家の令嬢として、それなりに贅沢に暮らしていたはずだった。だけど、実の母が亡くなり、父が再婚してから、すべてが変わった。
「おい、灰かぶり。いつまで寝てんのよ、あんたは召使いのつもり?」
「ごめんなさい、すぐに……」
「ふーん、また寝癖ついてる。魔獣みたいな髪。鏡って知ってる?」
「……すみません」
トリノはペコリと頭を下げる。反論なんて、とうにあきらめた。
この世界は、魔法と剣が支配する王国《エルデラン》の北方領。名門リドグレイ伯爵家の屋敷には、魔道具や召使い、そして“偽りの家族”がそろっている。
彼女――トリノ・リドグレイは、この家の“戸籍上は三女”。けれど実態は、召使い以下の扱いだった。
「キッチン、昨日の灰がそのままだったわよ? ご主人様の食事を用意する手も、まるで泥人形ね」
「今朝の朝食、あなたの分はなし。ねえ、ミレイア? “灰かぶり令嬢”には、灰でも食べさせればいいのよ」
「賛成♪ ちょうど暖炉の掃除があるし、役立ててあげる」
三人がくすくすと笑うなか、トリノはただ小さくうなずいた。
夜。屋敷が静まり、誰もいない納戸で、トリノはひとり、こっそり木箱を開いた。中には小さな布包み。亡き母の形見――古びた銀のペンダントが眠っていた。
それだけが、彼女の“世界でただ一つの宝物”。
「……お母さま。わたし、がんばってるよ。ちゃんと、ひとりでも……」
声が震える。けれど、涙は流さなかった。
屋敷の誰にも必要とされない“灰かぶり令嬢”。
だけど、彼女の心だけは、まだ折れていない。
いつか、この冷たい塔を抜け出して、空の広い場所へ行くんだ。
そう、小さく、けれど確かに誓った。
真面目くさった女はいらないと婚約破棄された伯爵令嬢ですが、王太子様に求婚されました。実はかわいい彼の溺愛っぷりに困っています
綾森れん
恋愛
「リラ・プリマヴェーラ、お前と交わした婚約を破棄させてもらう!」
公爵家主催の夜会にて、リラ・プリマヴェーラ伯爵令嬢はグイード・ブライデン公爵令息から言い渡された。
「お前のような真面目くさった女はいらない!」
ギャンブルに財産を賭ける婚約者の姿に公爵家の将来を憂いたリラは、彼をいさめたのだが逆恨みされて婚約破棄されてしまったのだ。
リラとグイードの婚約は政略結婚であり、そこに愛はなかった。リラは今でも7歳のころ茶会で出会ったアルベルト王子の優しさと可愛らしさを覚えていた。しかしアルベルト王子はそのすぐあとに、毒殺されてしまった。
夜会で恥をさらし、居場所を失った彼女を救ったのは、美しい青年歌手アルカンジェロだった。
心優しいアルカンジェロに惹かれていくリラだが、彼は高い声を保つため、少年時代に残酷な手術を受けた「カストラート(去勢歌手)」と呼ばれる存在。教会は、子孫を残せない彼らに結婚を禁じていた。
禁断の恋に悩むリラのもとへ、父親が新たな婚約話をもってくる。相手の男性は親子ほども歳の離れた下級貴族で子だくさん。数年前に妻を亡くし、後妻に入ってくれる女性を探しているという、悪い条件の相手だった。
望まぬ婚姻を強いられ未来に希望を持てなくなったリラは、アルカンジェロと二人、教会の勢力が及ばない国外へ逃げ出す計画を立てる。
仮面舞踏会の夜、二人の愛は通じ合い、結ばれる。だがアルカンジェロが自身の秘密を打ち明けた。彼の正体は歌手などではなく、十年前に毒殺されたはずのアルベルト王子その人だった。
しかし再び、王権転覆を狙う暗殺者が迫りくる。
これは、愛し合うリラとアルベルト王子が二人で幸せをつかむまでの物語である。
婚約破棄をされ、父に追放まで言われた私は、むしろ喜んで出て行きます! ~家を出る時に一緒に来てくれた執事の溺愛が始まりました~
ゆうき
恋愛
男爵家の次女として生まれたシエルは、姉と妹に比べて平凡だからという理由で、父親や姉妹からバカにされ、虐げられる生活を送っていた。
そんな生活に嫌気がさしたシエルは、とある計画を考えつく。それは、婚約者に社交界で婚約を破棄してもらい、その責任を取って家を出て、自由を手に入れるというものだった。
シエルの専属の執事であるラルフや、幼い頃から実の兄のように親しくしてくれていた婚約者の協力の元、シエルは無事に婚約を破棄され、父親に見捨てられて家を出ることになった。
ラルフも一緒に来てくれることとなり、これで念願の自由を手に入れたシエル。しかし、シエルにはどこにも行くあてはなかった。
それをラルフに伝えると、隣の国にあるラルフの故郷に行こうと提案される。
それを承諾したシエルは、これからの自由で幸せな日々を手に入れられると胸を躍らせていたが、その幸せは家族によって邪魔をされてしまう。
なんと、家族はシエルとラルフを広大な湖に捨て、自らの手を汚さずに二人を亡き者にしようとしていた――
☆誤字脱字が多いですが、見つけ次第直しますのでご了承ください☆
☆全文字はだいたい14万文字になっています☆
☆完結まで予約済みなので、エタることはありません!☆
たいした苦悩じゃないのよね?
ぽんぽこ狸
恋愛
シェリルは、朝の日課である魔力の奉納をおこなった。
潤沢に満ちていた魔力はあっという間に吸い出され、すっからかんになって体が酷く重たくなり、足元はふらつき気分も悪い。
それでもこれはとても重要な役目であり、体にどれだけ負担がかかろうとも唯一無二の人々を守ることができる仕事だった。
けれども婚約者であるアルバートは、体が自由に動かない苦痛もシェリルの気持ちも理解せずに、幼いころからやっているという事実を盾にして「たいしたことない癖に、大袈裟だ」と罵る。
彼の友人は、シェリルの仕事に理解を示してアルバートを窘めようとするが怒鳴り散らして聞く耳を持たない。その様子を見てやっとシェリルは彼の真意に気がついたのだった。
婚約破棄に乗り換え、上等です。私は名前を変えて隣国へ行きますね
ルーシャオ
恋愛
アンカーソン伯爵家令嬢メリッサはテイト公爵家後継のヒューバートから婚約破棄を言い渡される。幼い頃妹ライラをかばってできたあざを指して「失せろ、その顔が治ってから出直してこい」と言い放たれ、挙句にはヒューバートはライラと婚約することに。
失意のメリッサは王立寄宿学校の教師マギニスの言葉に支えられ、一人で生きていくことを決断。エミーと名前を変え、隣国アスタニア帝国に渡って書籍商になる。するとあるとき、ジーベルン子爵アレクシスと出会う。ひょんなことでアレクシスに顔のあざを見られ——。
冤罪で家が滅んだ公爵令嬢リースは婚約破棄された上に、学院の下働きにされた後、追放されて野垂れ死からの前世の記憶を取り戻して復讐する!
山田 バルス
恋愛
婚約破棄された上に、学院の下働きにされた後、追放されて野垂れ死からの前世の記憶を取り戻して復讐する!
学園首席の私は魔力を奪われて婚約破棄されたけど、借り物の魔力でいつまで調子に乗っているつもり?
今川幸乃
ファンタジー
下級貴族の生まれながら魔法の練習に励み、貴族の子女が集まるデルフィーラ学園に首席入学を果たしたレミリア。
しかし進級試験の際に彼女の実力を嫉妬したシルヴィアの呪いで魔力を奪われ、婚約者であったオルクには婚約破棄されてしまう。
が、そんな彼女を助けてくれたのはアルフというミステリアスなクラスメイトであった。
レミリアはアルフとともに呪いを解き、シルヴィアへの復讐を行うことを決意する。
レミリアの魔力を奪ったシルヴィアは調子に乗っていたが、全校生徒の前で魔法を披露する際に魔力を奪い返され、醜態を晒すことになってしまう。
※3/6~ プチ改稿中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる