お姉さまに婚約者を奪われたけど、私は辺境伯と結ばれた~無知なお姉さまは辺境伯の地位の高さを知らない~

マルローネ

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35話 家族の帰りを待っています

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「ふうむ……これが貴族の再教育プログラムの内容か」

「お父様、これは……なかなかに分量が多いですわ」

「そうだな、テレーズ。お前ならおそらく問題なくこなせるだろうが、マリアはとなると……」


 私はお父様であるドワイト・クルシス子爵と再教育プログラムの全体を確認していた。まだ、修正案の展開などはあるということなので、もっと分量が増えたり、内容が変わる可能性は十分にあった。

 ただ……私はそれを見るだけで、頭が痛くなってしまっている。なんというのか……元々は、辺境伯という地位がどれほどのものなのかを知らしめる意味合いが強いと思っていたのに。

 それとはまったく関係のない王国の成り立ちから、貴族の歴史の、ほぼ全てが網羅されていたのだから。国王陛下の家系図まで載っている。

「広義の意味では王国内部の貴族の統制や裏切りを避ける意味合いも含まれているでしょうから……このくらいの分量になるのは、むしろ自然なのかもしれませんね」

「う~む、私も受けないといかんのか……こう見えても、結構忙しいのだが……」

「お父様……心中お察しいたします……」

 子爵令嬢でしかない私ならともかく、子爵であるお父様は普段から屋敷に居ないことも多く、かなり忙しかったりする。

 そこに再教育プログラムが含まれるのだから……お父様の心中は穏やかではないだろう。はあ、本当にマリア姉さまには恨み言を言いたい気分だわ。最後に反省の色を出していたから良かったようなものの。親子の縁を切られてもおかしくない状況ではあったしね。


「でもお父様、私は安心いたしました」

「どういうことだ、テレーズ?」

「お父様がマリア姉さまを見放さないでいてくれて……本当に嬉しかったです」

「なんだ、そんなことか……」


 お父様は溜息と苦笑いに似た笑顔を見せていた。なんとも微妙な表情だ。


「テレーズ、お前の気持ちを汲んだまでのことだよ。お前という娘が居なければ……私はマリアを見捨てていたかもしれんな」

「お父様、それは……」

「姉妹の関係性……それを絶つのはお前にとって良いことではないと思ったんだ。お前の今後の生活にも響いてくるだろうしな」

「お父様……ありがとうございます。嬉しいです……本当に」

「私は今回の件に関しては、あまり何もしてやれなかった。せめてもの罪滅ぼしだな」

「そんなこと……」


 私は自然と涙が出てきてしまっていた。とても温かい感情が私の中で渦巻いている気がする。お父様、そしてカイン様もいらっしゃる。私は彼らと一緒なら、マリア姉さまのことをしっかりと待てると確信することが出来た。

 あ、ラゴウ様のことは割とどうでも良いけどね。
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